プロジェクト活動

1.事業概要

本事業は2つのコンポーネントにより実施する。保健体育CCC作成支援をコンポーネントA(以下、「A」)とし、モスタル市スポーツ協会の能力強化支援をコンポーネントB(以下、「B」)とする。

(1)事業目的

BiH国内のターゲット小学校において、保健体育CCCの作成・導入支援を通じてその定着を図るとともに(A)、モスタル市スポーツ協会を対象に、社会的包摂性・多様性・公正性に配慮したスポーツ事業実施能力の強化を図り(B)、もって社会的包摂性・多様性・公正性に配慮したスポーツ教育の意義がBiH国内で認知されることに寄与するものである。

(2)プロジェクトサイト/対象地域名

拠点をモスタル市に置く。
A:全国
B:モスタル市

(3)本事業の受益者

A:
直接受益者 APOSO
最終受益者 小学校の生徒(全国民)

B:
直接受益者 モスタル市、モスタル市スポーツ協会
最終受益者 モスタル市民

(4)事業スケジュール(協力期間)

A、B:2016年11月1日から2019年10月31日

(5)総事業費(日本側)

2.4億円(共通:1.27億、A:0.71億、B:0.42億)

(6)相手国側実施機関

A:APOSO(保健分野CCCの策定)
B:モスタル市スポーツ協会(スポーツ事業の運営)

(7)投入(インプット)

1)日本側

長期専門家1名 スポーツ教育/業務調整専門家
現地専門家1名 教育
短期専門家 保健体育カリキュラム・教科書・教員マニュアル作成 他
本邦研修 保健体育教育、スポーツ事業運営
機材供与 体育・スポーツ機材

2)ボスニア・ヘルツェゴビナ国側

・カウンターパート
A:保健体育分野CCC策定チームリーダー1名
B:モスタル市スポーツ協会シニアスポーツマネージャー1名
・専門家の執務環境の提供(A、B各々が提供する)

(8)環境社会配慮・貧困削減・社会開発

1)環境に対する影響/用地取得・住民移転

  1. カテゴリ分類C
  2. カテゴリ分類の根拠
    自然あるいは社会環境に影響を及ぼす活動は伴わない。多民族の融和を目的とした活動であり、社会面ではプラスの貢献が期待される。
  3. 環境許認可 対象外
  4. 汚染対策 対象外
  5. 自然環境面 対象外
  6. 社会環境面 敵対した民族間の融和は社会環境を改善する
  7. その他・モニタリング 統計、アンケート調査

2)ジェンダー・平等推進・平和構築・貧困削減

CCC作成TWGメンバーの選定及び、活動として想定されるスポーツイベントにおいてはジェンダー平等を推進する。

(9)関連する援助活動

1)我が国の援助活動

日本政府は、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた国際公約の一つとして「Sports for Tomorrow (SFT)」を掲げ、国際スポーツ人材の育成を支援している。これを受け、JICAでは2014年6月に「開発とスポーツ推進連絡会」を設置し、開発とスポーツに係る事業展開を推進するための体制を整備した。
在ボスニア日本大使館は、2014年度の草の根文化無償資金協力により、モスタル市が所有するサッカーピッチの整備を支援した。

2)他ドナー等の援助活動

CCC作成に関するドナー連携としては、CCC完成後の普及方法に関する情報交換が想定される。

2.協力の枠組み

(1)協力概要

1)上位目標:

保健体育CCCやモスタル市における取り組みを踏まえた社会的包摂性・多様性・公正性に配慮したスポーツ教育の意義がBiH国内で認知されるようになる。
指標:BiH国内における保健体育教育関係者の社会的包摂性・多様性・公正性に配慮したスポーツ教育に関する認知度

2)プロジェクト目標:

A:保健体育CCCが、BiH国内のターゲット小学校において定着する。
指標:ターゲット小学校における保健体育CCCの採用率。
B:モスタル市スポーツ協会が実施するスポーツイベントに社会的包摂性・多様性・公正性への配慮がなされるようになる。
指標:スポーツ協会の実施または計画するスポーツイベントにおける、社会的包摂性・多様性・公正性へ配慮された事業の割合。

3)成果:

1.社会的包摂性・多様性・公正性に配慮した保健体育CCCがBiH国内で関係する全ての教育省参加のもとに作成される。(A)
指標:保健体育CCCの官報への掲載。
2.BiHのターゲット小学校において保健体育CCCが試行的に導入される。(A)
指標:ターゲット小学校において保健体育CCCに沿った授業が試行的に実施・評価された回数。
3.BiH国内において保健体育教育関係者のネットワークが構築される。(A)
指標:ネットワークを構成するコアメンバーの選定とネットワーク会合の開催回数。
4.モスタル市スポーツ協会が、社会的包摂性・多様性・公正性に配慮したパイロットイベントを実施する。(B)
指標:モスタル市スポーツ協会が実施した社会的包摂性・多様性・公正性に配慮したパイロットイベント数
※指標における具体的な数は事業開始時のベースライン調査を鑑み、事業開始1年後を目途に決定する。

3.前提条件・外部条件

(1)前提条件

・CCC策定にかかるAPOSOの役割が維持される
・モスタル市スポーツ協会の予算が維持される

(2)外部条件(リスクコントロール)

・BiH教育改革に関し、大きな政策転換が無い
・モスタル市のスポーツ振興に関し、大きな政策転換がない

4.評価結果

本事業は、ボスニア・ヘルツェゴビナ国の開発ニーズ、日本の援助政策と十分に合致しており、また計画の適切性が認められることから、実施の意義は高い。

5.過去の類似案件の教訓と本事業への活用

(1)類似案件の評価結果

BiHにおける「スレブレニツァ地域における信頼醸成のための農業・農村開発プロジェクト(2008年〜2011年)」の教訓では、こどもが自分と異なる民族の人間に石を投げる姿が見られた。そこで幼児期から民族の垣根を越えた交流の場を提供する必要性を認め、幼稚園を開設した。その結果、こども同士の交流に加え、幼稚園にこどもを連れてくる親同士の民族を超えた交流が始まり、民族間の融和に貢献した。

(2)本事業への教訓

本事業においては、スポーツ事業実施時に、こどもを対象としつつも親が事業に参加する機会を設けるなどの工夫をする。

6.今後の評価計画

(1)今後の評価に用いる主な指標

協力の枠組みのとおり。

(2)今後の評価計画

事業開始6ヶ月以内 ベースライン調査
A:スポーツ協会主催の年間イベントにおける社会的包摂性・多様性・公正性へ配慮状況
B:体育事業の現状(サンプリング調査)
事業終了3年度 事後評価

以上