プロジェクト初の日本研修!!

2017年3月4日

2017年2月7日から17日、プロジェクト初の日本研修にボスニア・ヘルツエゴビナ(以下、BiH)から5人のメンバーが参加しました。保健体育カリキュラム策定に関わる就学前・初等・中等教育庁から1名、モスタル市スポーツ協会から3名、そしてプロジェクトの現地コンサルタント1名です。

5人中4人が初めての来日でしたが、最初の日本の印象はとにかく「きれい!」。これは日本を訪れる外国の方が一様に持つ感想のようです。空港、道路、バス、電車…ゴミが落ちていなく、清潔に保たれていることを、私たち日本人は当たり前に感じていますが、これはすごいことのようです。

研修は10日間にわたり、東京を中心に行われました。最初の2日間はJICAつくばセンターでBiHの学校体育・スポーツの現状と課題についてディスカッションをし、日本の体育授業の特徴などの講義を受けました。その後、筑波大学付属小学校の研究授業発表の見学や、スポーツ庁、日本体育大学、国立スポーツ科学センター(JISS)、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)、JICA本部などを訪問し、講義や施設見学などをしました。

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講義に耳を傾ける研修員たち/JICAつくばセンター

小学校での授業見学では、“子どもが体を動かすことを楽しむ”ということを大切にした授業づくりがされていることや、“全ての生徒が活動に参加する”ための工夫がなされていることに研修員たちは感心していました。

スポーツ庁での講義では、日本の体育教育システムに関して、わかりやすく簡潔にご説明いただき、これからBiHで民族統合のカリキュラム策定を進めていく上でとても貴重な情報を学ぶことができました。

今回の研修は、日本の学校体育のシステムについて知ることが主な目的でしたが、プロジェクトの大切な要素である『民族融和』や、『スポーツを通じたひとづくり』を目指す上で、ヒントになるようなプログラムを多く組み入れました。

柔道を通して異文化理解の促進や青少年育成に取り組んでいる『NPO柔道教育ソリダリティー』事務局長の光本氏に、これまで主に取り組んでこられた、イスラエルとパレスチナにおける柔道を通じた青少年交流などについてお話していただきました。研修員からは、「イスラエルとパレスチナの民族紛争はBiHの状況と似ている部分があり、モスタル市でも二つの民族を結ぶためにスポーツにできることが必ずあると再確認した」との意見や、「モスタル市では人々が様々なスポーツを楽しんでいるが、柔道もまた非常に盛んであるため、今後もぜひJICAを通じて交流をお願いしたい」という積極的な声が聞かれました。

日本体育大学では、同学の国際交流センター長でもあり、国際体操連盟Gymnastics For All委員会副委員長を勤める荒木教授に体操ワークショップを実施していただきました。ワークショップでは、いつでも・どこでも・誰でも実践でき、楽しく体をほぐすことができる運動として、座ったままできる体操、立って全身を動かす体操、少しスピードを速く負荷をかけた体操など、実際に全員で体を動かしながら、その有効性を実感しました。講義続きの研修で、少々疲れ気味の研修員たちでしたが、体を動かすことで自然と笑いが生まれ、とてもよいリフレッシュになりました。「簡単で楽しく、誰でもできるこういった体操は小学校などにおいても有用であるし、あらゆる世代に適している」という感想が聞かれました。

JISSでは、最先端のスポーツ科学を駆使した施設を見学させていただき、2020年東京オリンピックに向けた日本のスポーツ界の息吹を感じました。また、JADAではアスリートのみならず、それ以外の青少年やコミュニティをも対象とした「スポーツの価値」を伝える啓発活動についてお話をいただきました。人々がスポーツの価値に気づき、表現し、行動すること、そして「スポーツを通じて学んだことを人生に活かしていくこと」を目標に実践されているその活動は、プロジェクトが今後、モスタル市の人々にスポーツを通じて伝えていきたいと考えていることと通ずる部分が多く、とても勉強になりました。

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JADAの講義

研修中、唯一の週末は大阪・京都に行きました。大阪では、Mali Most(注) の活動に取り組む宮本恒靖氏がU-23の監督を務めるガンバ大阪の吹田スタジアムを見学しました。地域とともに発展してきたクラブのこれまでの取り組みや今後の展望についてお話いただきました。当日、練習試合を終えた宮本さんとも1ヶ月半ぶりの再会を果たし、ハードスケジュールで研修に取り組む研修員たちにエールをいただきました。

京都では金閣寺と二条城を訪れ、日本の文化や歴史的建造物を見学し、おみくじや絵馬、生八つ橋やわらび餅などの物珍しいものに興味津々で、つかの間の日本観光を満喫した研修員たちでした。

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宮本さんとの懇談後の様子

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京都二条城での記念撮影

あっという間に過ぎた10日間でしたが、プロジェクトにとっても様々な気づきが多い研修でした。これから始まるカリキュラム策定のプロセスやモスタル市スポーツ協会との連携の中で、更に多くの人々を巻き込んで、プロジェクトは進んでいきます。研修は、誰に、どのタイミングで、何を見て学んでもらいたいのかを明確にすることで、より有意義なものとなることも今回の経験から学びました。今後、より一層現地の関係者との連携を密にし、次に繋げていきたいと思います。

最後になりましたが、プロジェクトの短期専門家として計画当初から関わっていただき、今回の研修全体を見守っていただいた筑波大学の岡出美則教授、また、ここではプログラムのすべてをお伝えすることができませんでしたが、今回の研修でご講義いただいた諸先生方、一行を温かく歓迎してくださった皆様、心より御礼申し上げます。

【画像】修了式にて/JICA東京