課題別研修「学校体育」に参加

2017年8月17日

2017年7月9日から29日の約3週間の日程で、JICAつくば及び筑波大学にて「学校体育」研修が開催され、ボスニア・ヘルツェゴビナ(以下、BiH)からGoran Prodanović氏(ゴラン・プロダノビッチ/高校体育教諭)、Ivana Džidić氏(イヴァナ・ジディッチ/小学校体育教諭)、Alena Ćemalović氏(アレナ・チェマロビッチ/Džemal Bijedić(ジェマル・ビイェディッチ)大学助教授)の3名の研修員が参加しました。

今回で3年目を迎える本研修は、BiHを含めたブータン、ミャンマー、フィジー、マラウイ、ブルキナファソ、ウガンダ、モルディブの8カ国からの参加者を対象に、『自国の体育科教育の現状を再認識し、それぞれの課題解決に向けた改善提案を策定すること』を目的に実施されました。

研修プログラムには、日本の学校体育の仕組みや取り組みを知るための講義、小中学校視察、柔道や水泳、ダンスの授業研究視察、スポーツ庁表敬訪問などが組み込まれ、参加者たちは多くのことを学びました。

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スポーツ庁訪問

BiHでは民族ごとに施行されている3つのカリキュラムをひとつに統合させるための教育改革が進んでいますが、2017年9月から体育科カリキュラムの統合が本格的に始まり、JICAプロジェクトがそれを支援します。3名の参加者たちは、日本では単なる運動技能の習得だけを目的とした授業ではなく、生徒が学びを通して、主体的に物事を考える力、友達と協力する姿勢、そして何より運動を楽しむ態度を身につけることができるよう工夫されていることに感銘を受けたようです。

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筑波大学にて柔道授業見学(山口香先生と)

今回、3名にインタビューで日本での滞在を振り返ってもらいました。

Q1.日本の最初の印象は?

Goran:初めての日本は、自分にとって完全に新しい世界で、最初は戸惑いました。すべてが初めてで、これまでと違った経験でした。

Ivana:日本に到着する前から、東京という大都市にワクワクしていました。人々はとても親切でした。道を尋ねた時には、親切に案内してくれました。浅草は私にとって、初めての日本カルチャー体験となりました。お店が立ち並ぶ通りや、浅草寺の装飾などに感動しました。着物を着て仕事をしている人も見かけました。また、日本人は自然を大切にするということも印象的なことのひとつです。

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浅草観光

Alena:初めての印象は大きな建物や町の広さなどです。そして、なんと言っても、最も印象的だったのは、人々の優しさとその振る舞いです。一生懸命仕事をする人々がたくさんいました。

Q2.今回の研修中に学んだことの中で、一番重要だと思うことは何ですか?

Goran:日本では、仕事で問題を解決する際、系統立てて作業が行われていることを学びました。

Ivana:私にとっては、すべての経験が忘れられないものになりました。講義はとても有意義で、たくさんの新しい知識や指導方法などを学び、自国の体育科カリキュラムに取り入れたいと思うことを数多く得ることができました。

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筑波大学にて授業実践の様子

Alena:全員の意見を聞き、平和的な雰囲気の中で問題解決がされることを学びました。私は、日本人がどのように互いを励まし合い、尊重し合うかを目の当たりにし、一人一人の行いが、物事の成功を導くのだということを学びました。

Q3.日本の体育授業で、どんなところが魅力的でしたか?

Goran:体育授業全体の構成や、小グループや(互いに協力し合う)兄弟グループによる導入、授業の中で個々の活動だけではなく、チーム全体で協力したり、結束し合う様子が魅力的でした。

Ivana:水泳の授業がとても印象的でした。先生同士の連携、授業の構成、バラエティに富んだエクササイズ、生徒が段階的に学ぶ姿、ペアや小グループで協力し、ひとつひとつの良いパフォーマンスが授業全体を盛り上げているところが良かったです。水泳の授業が子どもの身体的な発達に非常に有効であることを再認識しました。

Alena:日本の学校体育がいかにディスカッションや認知学習を取り入れて構成されているかを学びました。学校体育における水泳授業もとても興味深かったです。

Q4.日本の学校体育を見る前と後では、何か考えに変化はありましたか?

Goran:もちろんです!!ここで学んだことを、自分の学校に帰って、学校や生徒の実態に合わせて、可能な限り自身の授業に活かしたいです。

Ivana:日本の先生たちの生徒への接し方や指導方法が非常に現代的で、自分の授業でも、生徒がやる気を持って授業に取り組めるよう、この研修で学んだ手法を取り入れたいと思いました。

Alena:日本の体育を見てから、体育というものに対する見方が変わりました。最も大きな気づきは、授業の中で『学びの課程を大切にする』“認知学習”が占める割合が高いということです。

Q5.他の2人との日本での生活はどうでしたか?

Goran:私たちはチームとして相応しい仲間でした。常に一緒に行動し、考え、いろいろなことを3人で決めました。その結果、最後には素晴らしいプレゼンテーションを発表することができました。

Ivana:私たちには、自分たちの国や学校のより良い未来のために、共にゴールを目指すことのできる若さとやる気があります。私たちがここでチームとして学べたことは、本当に信じられないくらいの幸運でした。私は国の代表として、このような貴重な機会に彼らとチームになれたことを光栄に思います。

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上野恩賜公園にて休日を楽しむ様子

Alena:GoranやIvanaと共に日本研修に参加できたことをとても幸せに思います。私たちはとてもすてきな時間を一緒に過ごし、そして、共に良いアクションプランを作成することができました。

Q6.体育/スポーツは、あなたにとって何ですか?

Goran:私にとってスポーツは人生そのものですし、スポーツのない人生など考えられません。

Ivana:体育/スポーツというのは、私にとって健康な生活そのものです。

Alena:体育というものは、私の人生において最も大切な教科です。全ての人の生活の中で、体育はフェアプレイや協力や忍耐などのライフスキルを育てるからです。

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代表でプレゼンするAlena氏

今回の研修を通して、3人は日本の学校体育のカリキュラムやそのしくみ等を学んだだけではなく、“体育の授業を通してどんな生徒を育てたいのか”という最も重要なポイントを、実際の授業視察や講義などを通して実感したようです。教師→生徒への一方向だけの授業ではなく、生徒自身が考え、グループで話し合い、互いに協力しながら『どうしたら上達するか?』『成功するためにはどんな工夫をすればよいか?』など、学ぶ過程を重視した授業を、彼らがBiHの体育にも取り入れたいと感じてくれたことが、プロジェクトとしても非常にうれしく思います。BiHの未来の体育科教育に彼らの日本での学びが活かされることを願います。

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修了証書を手にする研修員たち
(左からGoran氏、Ivana氏、Alena氏)

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修了式での集合写真