共通コア・カリキュラム策定セミナー&体操ワークショップ開催!!(その1)

2017年9月12日

本プロジェクトには二つの柱があります。コンポーネントAの「保健体育の共通コア・カリキュラム(以下、CCC)策定支援」とコンポーネントBの「モスタル市スポーツ協会(以下、スポーツ協会)の実施するスポーツイベントを通したモスタル市への支援』です。コンポーネントAのCCC策定支援が9月から本格的に始まりましたので、今回はその様子についてお伝えします。

ボスニア・ヘルツェゴビナ(以下、BiH)政府は2003年からCCCの導入を決定し、これまでに各教科において順次進めてきました。JICAは2005年にこの同じモスタル市から民族共修のIT(情報科)科目のCCCを策定して全国に広げる協力を実施しました。その経験と知見を活かして、現在は保健体育のカリキュラム策定を支援しています。

CCC策定とは、これまでBiH国内の3民族(注)がそれぞれ独自のカリキュラムによって教育を実施していましたが、教育カリキュラムを一つにすることで、国内の教育レベルを統一し、国民の一体性や民族間の相互理解を促進することを目標にBiH政府が取り組む教育改革です。

プロジェクトはCCC策定を担当する、中央政府下にある「就学前・初等・中等教育庁(以下、APOSO)」をカウンターパートとし、APOSOが実施するCCC策定プロセスを支援しています。CCC策定においては、保健体育の専門家たち約20名(教育研究所の専門家、幼稚園から高校までの体育教員たち)で構成されたテクニカルワーキンググループ(以下、TWG)による3回にわたるセミナーを実施し、その後BiH国内の主な3都市でのパネルディスカッションが実施され、CCCは完成します。その3回のセミナーの第1回が9月12日、13日にモスタルにて行われました。

プロジェクトでは、カリキュラムの大きな枠組みが決定されるこの第1回セミナーに合わせて、日本体育大学から2名の教授にお越しいただき、岡出美則教授には「日本の学校体育システムとその特徴」に関する講義、荒木達雄教授にはどこでも誰でも実践できる「Gymnastics for All」の紹介をしていただきました。

岡出教授の講義は主に、日本の教育システム全般について、学校体育の現状と課題、新学習指導要領について、保健領域についてなどを丁寧にご説明いただき、非常に熱心に講義に聞き入るTWGメンバーたちの姿が見られました。

一方、荒木教授からは、体操がヨーロッパで生まれてから日本に伝わった歴史や、日常生活の中で体操を実施することの有効性などについてお話いただいた後に、座ったまま音楽と共に体を動かす体操を、実際にTWGメンバーたちも参加して実施しました。施設や用具が不十分な学校現場において、特に用具等が必要ない「体操」領域を紹介することも目的のひとつです。特に幼稚園や小学校低学年児童、またスポーツの苦手な子どもでも気軽に取り組むことができ、体を動かすことの気持ちよさを味わうことができる体操の効果をTWGメンバーたちも感じ、体操の後には会場の雰囲気も和み、自然と笑顔が見えたのがとても印象的でした。

両教授の講義後、University of Dzemal Bijedic(ジェマル ビイェディッチ大学)体育学部教授によるボスニア・ヘルツェゴビナの体育教育とオーストラリア、カナダ、日本を含む他国の体育の比較内容が紹介されました。午後はAPOSO担当者より、CCCの開発方法が説明され、その後、TWGメンバーたちは3グループに分かれ、CCCの構成要素についての論議が活発に進められました。

プロジェクトでは、CCC完成後に指導者や教材作成のための支援も計画しています。岡出教授の講義の一環で、今回、実際の日本の小・中・高校の体育教科書と指導書を紹介しましたが、TWGメンバーたちからは「写真や挿絵が多くとてもわかりやすい」「BiHにもこのような教材が導入されれば良いのに」といった感想が聞かれました。

第1回セミナーでは、カリキュラムの大枠が決まり、今後はその大枠に沿ってその学習成果や指標について話し合われる予定です。BiHでは、ほとんどの学校において体育施設や用具が不十分であり、他教科に比べて体育の優先度が低いといった、体育の授業を実施する環境は決して良いとはいえないのが現状ですが、TWGメンバーたちはBiHの保健体育をより良いものにしようと真剣に積極的な議論が展開されていました。

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岡出教授講義の様子

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荒木教授講義の様子

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荒木教授による体操実技の様子

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日本の教科書を手に取るTWGメンバーたち