モスタル市スポーツ協会能力強化研修

2018年2月24日

プロジェクトのカウンターパートであるモスタル市スポーツ協会(以下、SSGM)は会長を始めとする8名のスタッフで、市内のスポーツ振興事業に取り組んでいます。
紛争後のモスタル市は、クロアチア系とボシュニャクと呼ばれるムスリムの人々がネレトバ川を挟んで東西に分かれて生活しています。それぞれに水供給会社が存在するなど、行政も二つに分かれており、今なお紛争の爪痕は消えません。そんなモスタル市で、2002年、市はそれまで東西にそれぞれ存在していたスポーツ協会を統一し、現在のSSGMが誕生しました。それ以来、SSGMは誰もが参加できるあらゆるスポーツ活動を市民に提供しており、スポーツを通じた民族融和の重要な一端を担っています。
SSGMの事業は、各種スポーツイベントの企画運営、市内に100以上存在するスポーツクラブの管理運営、スポーツ指導者育成支援など多岐にわたりますが、人的、資金的両面において限られた環境の中で、より良い事業展開を目指し日々スタッフたちは頑張っています。
プロジェクトでは、SSGMの能力強化支援をプロジェクト活動の大きな柱のひとつと位置づけ、事業改善のための研修を支援しています。研修は、3つのパートで構成されており、パート1:基本的なビジネスマネジメント研修、パート2:近隣諸国への視察研修、パート3:プロジェクトプランニング及びファンドレイジングのための実務研修となっています。今回は去る2月18日から24日に実施されたスロベニア共和国ヴェレニェ市及びクロアチア共和国ザグレブ市への視察研修の様子をお伝えしたいと思います。
この視察研修は、近隣諸国で既に組織的な取り組みをしている、ザグレブ市スポーツ協会や、小規模ながらに工夫された事業展開をするヴェレニェ市スポーツ協会を訪問し、情報や意見交換を通して、基礎研修で学んだことを実際にSSGMの業務にどう活かしていくかを考え、今後のアクションプランの作成に繋げることを目的としています。
人口約3万人のヴェレニェ市はスロベニアに11箇所ある特別市の1つとなっている計画都市です。人口はモスタル市よりもかなり少ないですが、多くのスロベニア人がスポーツ界で成功しており、特にウィンタースポーツや登山などが有名です。記憶に新しいところでは、2018年2月に開催された平昌冬季オリンピックにも、スロベニアからアルペンスキー、バイアスロン、アイスホッケー等多くの種目に71名の選手が出場しました。
ヴェレニェ市スポーツ協会が実施する事業の中でも、特徴的な取り組みのひとつに『水泳プロジェクト』という、国を挙げて取り組んでいるものがあります。小学校低学年で決められた時間数の水泳教室を履修させ、泳ぎの基礎を身につけさせようというものです。市内の学校にプールはありませんが、市内唯一の市民プールで実施されています。

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ヴェレニェ市スポーツ協会にて

ボスニア・ヘルツェゴビナ(以下、BiH)も一般的には学校にプールはなく、モスタル市でも同じ状況で、子どもたちへの水泳指導には同様の課題を抱えていることから、SSGMはこの取り組み事例を参考に、モスタル市でも水泳指導の充実を図りたいと考えています。
その他にも国または市のスポーツ法に基づき、市との連携下における計画的且つ公平性のある事業の在り方や、市民に対するスポーツ促進のためのアプローチの仕方などについては、参考にすべきことが多くありました。

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子どもたちが楽しんでスポーツに参加できるよう工夫されたスポーツスタンプラリー

最終日には副市長との面談も実現し、今後のモスタル市とヴェレニェ市とのスポーツを通じた協力への第一歩となる実り多い研修となりました。
一方、人口約80万人のクロアチア共和国首都ザグレブ市は、国内で一番大規模なスポーツ協会として存在し、国内のスポーツ事業の70%を執り行っています。スタッフは23人、74の種目ごとの協会と、800以上のスポーツクラブを傘下に置き、市民約5万人があらゆるスポーツクラブに所属しています。

【画像】副市長(右から5番目)との面談

ザグレブスポーツ協会内にはいくつかの部署があり、コミュニケーション・スペシャルプログラム・広報部、経理部、法務部、事業分析部、情報管理部等があり、組織的な事業展開を紹介してもらいました。
規模が大きいだけあって、予算管理や種目毎のスポーツ協会、クラブなどの情報管理を一括してシステム上で行っています。それぞれのクラブは市からの予算配当を受ける代わりに、活動報告をする義務があります。
SSGMも多くのクラブを傘下に抱え、その情報や予算管理には大きな課題があり、今後、ザグレブ市の取り組みが参考となりそうです。

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ザグレブ市スポーツ協会にて

今回の視察研修を通して、これまでSSGMの課題として捉えられていたことについて、具体的な解決方法のアイデアを得たことは大きな成果といえます。SSGMにとっては、近隣国の事例は、身近に感じられ、改善すべき点について、具体的にイメージが持てたことが一番の収穫です。
今後はこれまでの研修で学んだことを更に具体的な形にするために、ファンドレイジングのためのプロポーザルライティングや、プロジェクトモニタリング等の研修を進め、研修終了後には、実際のファンドの取得を目指します!

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ザグレブ市アリーナ見学