保健体育コモン・コアカリキュラム完成披露会-日本の体育教育がボスニア・ヘルツェゴビナに-

2018年3月13日

プロジェクトとカウンターパートである就学前・初等・中等教育省(以下、APOSO)は、これまで取り組んできた『保健体育コモン・コアカリキュラム』(以下、CCC)が2018年3月9日に中央政府により正式に認められ、官報に掲載されたことを受け、3月13日モスタル市にて完成披露会を開催しました。
披露会には、ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦(注1)及び、ブルチコ行政区(注2)より約60名の体育教員、教育関係者、教育研究所代表者等が集まりました。

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完成披露会の様子

CCCの発表に先立ち、プロジェクトを代表し、シニア・ローカルコンサルタントのデヤン・バリッチ氏が、これまでのCCC策定過程においてプロジェクトがどのような協力をしてきたか、また、今後は新たなCCCに基づいて、より細かな指導計画などが記載される日本の学習指導要領にあたるものを作成する予定であることを発表しました。
続いて、APOSOのコモン・コアカリキュラム策定部長であるマリヤ・ナレティリッチ氏より、これまで約25名のテクニカル・ワーキンググループ(TWG)によりどのようにCCCが策定されたのかについて説明がありました。
その後、プロジェクトの外部専門家としてCCC策定を牽引してきたリヤド・ノヴァコヴィッチ氏が、CCCに新たに取り込まれたいくつかの重要な点について説明しました。
新たなカリキュラムは、これまで運動技能の習得重視であった指導法から、体育の授業を通して、より社会性や協調性を身に着けさせるための指導法、いわゆる生徒同士が互いに協力して学び合い、自ら考え課題を解決できる能力の習得が重視されていることが大きな変更点です。

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リヤド・ノヴァコヴィッチ氏によるプレゼンテーション

ノヴァコヴィッチ氏は、なぜこのような観点が新たに盛り込まれることになったのか、日本での研修で実際に体育授業を見学した様子について話しました。日本の学校体育の特徴は、教師が生徒に指示を与えるだけの授業ではなく、生徒同士がグループワークを通して学び合い、運動が得意な子どもだけではなく、みんなが楽しく授業に参加できるよう工夫されています。これまでBiHの体育で重要視されてきた、『体力や運動能力の向上』だけではなく、『体と心両方の成長』を重視する考え方が反映されました。具体的には、運動そのものを楽しみ、健康な生活習慣を身につけることや、集団の中で自分とは違う考えを認め合うこと、友だちとの共同作業を通して寛容性を身につけること、様々な場面において、自分自身をコントロールし自己評価できる能力を身につけることなどがCCCに取り入れられたことを強調しました。
最後にヘルツェゴビナ・ネレトバ県(注3)教育省次官補のスード・マリッチ氏が、今後、同県における新たなCCCに基づく学習指導要領作成に関し、プロジェクトとの連携協定の覚え書が締結されたことを発表しました。
2018年9月の新年度のスタートに合わせたパイロット校でのCCC導入に向け、プロジェクトの新たなフェーズが始まります。

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スード・マリッチ氏によるスピーチ