第3回モスタル・ネヴェシニェ・シロキブリイェグ青少年スポーツ交流イベント

2019年4月17日

地域の青少年に交流を

プロジェクトとモスタル市スポーツ協会(以下、SSGM)は、2019年4月17日、今年で3回目となるヘルツェゴビナ地域の青少年スポーツ交流イベントを開催しました。本イベントは、モスタル市とスルプスカ共和国(以下、RS)に位置するネヴェシニェと西ヘルツェゴビナ県に位置するシロキ・ブリイェグの3市合同スポーツイベントです。(それぞれの市の位置関係は第1回の記事を参照)(注)

本イベントは、異なる民族の青少年がスポーツやワークショップを通して、新たな友情を築き、交流を深めることを目的としています。それぞれの市からフットサル男子チーム、バレーボール女子チームが参加し、合計6チーム約65名の選手たちが参加しました。今年はネヴェシニェの強い希望により同市での開催となり、モスタルとシロキ・ブリイェグの選手たちは一台のバスに乗り、一路ネヴェシニェを目指しました。ネヴェシニェはモスタルから東に40kmほどの場所に位置する人口約1万人の小さな町です。モスタル市とネヴェシニェの間には、公共交通機関はなく、普段限られた人々の往来しかありません。今回参加した選手たちも初めてネヴェシニェを訪れたという選手もいました。

【画像】オープニングセレモニーにて集合写真

親善試合の様子

選手たちは、まずフットサルとバレーボールの親善試合を行いました。どのチームもゲーム中は真剣です。互いの良いプレーに声を掛け合い、ミスをすればコーチたちからは激が飛びます。今年はバレーボールでは、ネヴェシニェチームが素晴らしいチームワークを見せ、優勝しました。フットサルでは、モスタル代表チームの実力は揺るぎなく、他の2チームを寄せ付けず優勝を手にしました。勝利を目指して、最後まで真剣にプレーをするという姿勢は、とても重要なスポーツの一面です。

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フットサルの試合

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バレーボールの試合

イゴルコーチの言葉

午後からは『スポーツが人生に与えた影響』をテーマに3人のコーチたちが自身の経験について話をしました。その中の一人、イゴルコーチは、元ボスニア・ヘルツェゴビナ代表サッカーチームでゴールキーパーとして活躍し、現在はサッカークラブのコーチでもあり、モスタル市スポーツ協会でスポーツマネージャーとしても働いています。
イゴルコーチは次のように語りました。
「競技生活の中では、選手として成功と挫折を両方経験しました。成功は長い努力の後に突然やってきて、富や名声を与えます。しかし、それはあなたの間違った考えや判断により、あっという間に消えてしまうものでもあります。どんな成功者も信頼できる人の声に耳を傾け、正しい判断をすることがとても大切です。挫折した時には本をたくさん読みました。本から得た知識や教訓は自分の考えや生活を変えるきっかけとなりました。みなさんもぜひたくさんの本を読んで下さい。みなさんは、自分が将来どんな大人になりたいか、まだわからない人がほとんどでしょう。それはみなさんの年齢では当然です。でも、どんな大人になりたくないかということはきちんと理解してください。薬物やアルコールに依存するような人生は絶対にいけません。
ご両親の言うことに耳を傾けてください。そして目標を見つけ、それを達成するために自分自身で努力してください。スポーツを通して、決してあきらめずに頑張る力を身につけて下さい。」

話を聞いた子どもたちからは以下のような感想がありました。
・今日のワークショップでは、コーチたちの様々な経験から貴重な教訓を学んだ。
・『これまでのスポーツキャリアの中には成功も挫折も両方あったけど、どちらの経験も今の人生に役立っている』という話がとても興味深かった。
・スポーツの良い面は、新しい経験をしたり、たくさんの仲間を得ることで、今のこの時期を楽しめることだと思う。今日のワークショップはとても面白くて勉強になった。
・今日のイベントに参加できたことは幸せだった。このようなイベントにまた参加できることを期待している。
・『人生の道を見つけるのは自分自身だけど、いろいろな経験をしてきた大人の声に耳を傾けるべきある』というコーチからのアドバイスに最も感銘を受けた。

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3名のフットサルコーチたちによる体験談

交流イベントの成果

ネヴェシニェ市の担当者であるブラティッチ氏は、本イベントについて以下のような感想を述べました。
『これまでそれぞれの市からの参加者が、スポーツを通して共に時間を過ごすことにより、子どもたちに新たな信頼と友情が芽生えた。過去2回はモスタルで開催され、モスタル市スポーツ協会とJICAプロジェクトのおかげで、ネヴェシニェの子どもたちはとても良い時間を過ごしたので、今回はぜひ当地にみなさんを招待し、これまでのお返しがしたいと考えた。本イベントは異なるバックグラウンドの子どもたちが混ざって交流してきたが、一度も民族の違いによる緊張は生まれていない。我々の信頼関係はこの2年間で深まり、コーチ同士の絆も強くなっているので、JICAプロジェクトが終了したあとも、3市の代表者たちが協力してこのイベントを続けていくことになるだろう。』

我々プロジェクトは、これまで様々なスポーツイベントの機会を現地の人々に提供してきました。紛争が終わり20年以上経つ今も、異なる民族同士の見えない壁は簡単には取り除くことはできません。しかし、我々のような外部の人間だからこそできることは、人々が共に時間を過ごすきっかけを作り、それを継続していくことです。ほんの小さなきっかけに過ぎないかもしれませんが、現地の人々の気持ちが少しずつでも変化し、それが将来を担う子どもたちに伝えられていくことが私たちプロジェクトの願いです。