ヘルツェゴビナ・ネレトバ県体育教員セミナー

2019年8月29日

2019年8月29日、プロジェクトはモスタル市スポーツ協会(以下、SSGM)とヘルツェゴビナ・ネレトバ県教育省との協力の下、保健体育科教員のためのセミナーを開催し、県内の小学校・高校体育教員約50名が参加しました。
開催に先立ち、JICAプロジェクトコーディネーターからCPR(心肺蘇生)訓練用人形50体がハジョビッチ教育大臣に供与されました。これらは県内のすべての小学校に配布され、今後保健体育の授業における応急処置法の指導に役立てられます。

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JICAプロジェクトコーディネーター(左)からハジョビッチ・ヘルツェゴビナ・ネレトバ県教育省大臣(右)にCPR訓練用人形が寄贈された

セミナーでは、始めに、コニーツ市の高校体育教員であるアドナン・ジュムフル先生による『日本とボスニア・ヘルツェゴビナの体育教育について』の講義を行いました。ジュムフル先生は、2018年7月に日本での課題別研修『学校体育』に参加した経験があります。先生は日本の教育の大切な点として『ライフスキル』を育むことを目標に各科目の指導内容が構成されていることが印象的であり、また授業の中だけではなく、学校生活全体が子どもにとって学ぶ場であると話しました。加えて、日本の教員が授業の実施だけではなく、生活・給食指導、職員会議などで、朝早くから夕方遅くまで教育に携わる姿勢にも感銘を受けたとのことでした。
体育の授業については、日本では学習指導要領が10年ごとに改定され、それに沿った指導が行われているものの、実際の授業は先生たちの創意工夫によって生徒が楽しめるよう創られているという話がありました。ジュムフル先生は帰国後に自身の授業でも身近にあるものを利用していろいろなアイデアを凝らした授業を試してみるようになったと語りました。また、授業では見学者の生徒にも何らかの役割を与え、全員が参加することを心掛け、生徒による自己評価の手法も取り入れています。

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ジュムフル先生の講義

ジュムフル先生の講義の中で、参加者たちはグループごとに分かれ、それぞれのアイデアを活かしたゲームを考えました。あるグループが考えたゲームは、『ボールを持った人が動いてはいけない』というルールで行うハンドボールのゲームです。このルールの目的は、ボールを持たない選手がいかにスペースを見つけ動き、パスをつなぎゴールにつなげるかということを子どもに考えさせることです。正規のルール以外に生徒の実態に合わせたルールを作ることで、生徒は自然に様々な課題を克服することができます。参加者たちは、日本とBiHで様々な状況は異なるものの、生徒が主体的に参加できる授業づくりという観点においては、ヒントを得ることができたのではないかと思います。

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グループディスカッションの様子

その後、モスタル市保健センターによる応急処置法のワークショップが実施され、教員たちは応急処置法の正しい知識を学び、実際にCPR訓練用人形を使用しながら人工呼吸や心臓マッサージの方法を学びました。参加者の中には、実際にCPR人形を使用しての訓練は初めてという先生もおり、貴重な機会となりました。
SSGMは学校現場において、生徒の健康と安全が第一であり、教員が有事の際の対応を身に着けておくことは非常に重要であるとの考えから、兼ねてから応急処置法セミナーを実施したいと考えていました。今回は、体育教員に対して実施しましたが、今後は市内すべてのスポーツ指導者を対象に同様のセミナーが計画されています。ちなみに、保健センターの人によると、サラエボ県ではすでに、公務員に対してこのようなセミナーを定期的に実施しており、そのことが人々の救急処置の知識や技術を高め、実際に救命率を上げているとのことでした。モスタルでも、市内の公務員や学校の生徒への救急法教育の普及が計画されており、今回のCPRドールの供与は大変タイミングがよく、非常にありがたいとの話がありました。多くの参加者からポジティブな評価があり、有意義なセミナーとなりました。

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心臓マッサージの訓練

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呼吸の確認

【画像】集合写真