カンボジアにおける厚労省技能評価システム移転促進事業が進展

2019年12月24日

2019年9月~12月

職業訓練校等における訓練とともに、培った職業能力をいかに適切に評価するかは、人材育成の「車の両輪」と言えます。当プロジェクトでは前者の質の向上に取り組んでいますが、後者について、カンボジアでは2014年以降、日本の厚生労働省による「技能評価システム移転促進事業(SESPP:Skill Evaluation System Promotion Program(注1))」が進められています。

2019年度のSESPP活動は、昨年度に引き続き、当プロジェクトが対象としている電気分野に関して集中的に実施していただきました。2019年4月に当地にて開催されたキックオフ会合で確認されたスケジュールに基づき、パイロット職業訓練校3校において、以下の活動が行われました。

-9月2日~6日:「シーケンス制御3級」(級は日本の技能検定(注2)の級。以下同じ)の技能評価技法研修、技能評価トライアル(PPI校にて)。シーケンス制御は工場等の製造現場で広く用いられている機器の制御手法です。自動化生産設備では、PLCという制御機器を使用してモータやシリンダー等をコントロールしています。本検定ではPLCプログラミング技術についての評価技法および模擬試験が実施されました。なお、11月には「シーケンス制御2級」の本邦技術研修が実施され、技能五輪全国大会の視察も行われました。

-12月2日~6日:「電気系保全3級」の技能評価技法研修、技能評価トライアル(NTTI校にて)。電気系保全(保守・点検等)は、施設・設備が持続的に機能を果たすために欠かせない分野です。本検定では、リレーおよびシーケンス回路の故障発見・診断にかかる評価技法および模擬試験が実施されました。

-12月16日~20日:「電気工事」の競技トライアル、デモンストレーション(NPIC校にて)。本年11月に開催された国内技能大会(2019年11月8日付け「第7回カンボジア国内技能大会に協力」を参照)の当該職種で上位に入り、2020年7月のASEAN技能競技大会(ASEAN Skills Competition)に出場するPPIの2名が指導を受けました(他の職業訓練校の指導員もオブザーバー参加)。指導者は世界技能競技大会での入賞者であり、世界基準による施工法・評価法にかかる技術指導が実施されました。

当プロジェクトでは、職業訓練校から参加する指導員が適切に選定されるように関与したほか、JBAC(カンボジア日本人商工会)会合等の機会を活用して当地における民間企業の参加を募ったり、技能評価トライアルの事前講習を行ったりして、活動の成果が一層上がるように取り組みました。

これらの活動実績を踏まえて、2019年12月24日、本年度を締めくくり、今後の課題を議論・整理する政策対話会合(官民合同委員会)が開催されました。カンボジア政府により職業能力評価制度の構築状況の説明があったほか、当地の日系企業から「信頼できる技能評価のモノサシは、雇う側・雇われる側双方のためになる」旨の意見が出されました。また、当地における活動の定着段階やニーズに応じて、2020年度は、1)「シーケンス制御」及び「電気系保全」に「配電盤」(2018年度実施)を加えた3職種について、技能検定の仕組みを参考として、技能評価制度の構築を進めていく、2)新たに「電子機器組立て」の評価者訓練を実施する、との考えが示され、議論されました。

当プロジェクトではこれからも、プロジェクトが終了する2020年9月の後を見据えて、カンボジアにおいて良い技能評価のモデルが構築され根付いていくよう、SESPP活動との連携を深めていきたいと思います。

(注1)SESPPについて
日本がこれまで国及び民間の双方において培ってきたものづくりの現場を支える熟練技能者育成のノウハウをアジアの開発途上国に広く周知・啓発し、人材育成に資することを目的とする事業です。

カンボジアにおける当プロジェクトとの連携については、下記のプロジェクト・ニュースもご覧ください。

(注2)技能検定制度について
労働者の有する技能の程度を検定し、これを公証する国家検定制度です。日本で法律に基づき1959年から実施されており、2019年7月現在、ものづくりの建設・製造業関係を中心に130職種で実施されています。最近では、対人サービス分野の職種についての整備も進められています。

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PLC制御の講義(シーケンス制御)

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シーケンス制御の模擬試験

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電気保全の講義(電気系保全)

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電気系保全の模擬試験

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施工法の説明(電気工事)

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技術指導(電気工事)