中国の環境問題へ対応するための総合的な取り組み−環境にやさしい社会構築プロジェクト進捗報告−(1)

2016年11月30日

2016年11月

2016年4月より実施している「環境にやさしい社会構築プロジェクト」は、中国における環境問題への対応能力を総合的に強化するため、政策・法制度の整備促進、環境汚染防止技術の普及、市民らの環境意識の向上などを進めていくものです。現在はプロジェクト本格開始に向けた準備段階として、先行して一部の活動を行いつつ、今後5年間の優先課題など活動計画を策定しています。今回はその活動内容の一部を紹介します。

1.大気環境モニタリング・分析能力の強化(7月短期専門家派遣、11〜12月訪日研修)

大気中の微粒子状物質(PM2.5)は、粒子が非常に小さい(髪の毛の太さの30分の1)ため、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系疾患のほか、循環器系への影響も懸念されています。また、有害な微少粒子も含め多様な成分が含まれており、発生原因や生成メカニズム、健康リスクの把握などのために精密な成分分析が求められています。

環保センターの一部門である分析測定センターは、このような環境分析を専門とし、これまでもJICAによる協力の下、ダイオキシン類の分析などで実績を上げています。

本プロジェクトではPM2.5をテーマに、日本及び分析測定センターの研究者らの参画の下、分析能力の向上や発生原因の解明、対策の検討を目的とした活動が展開されています。7月には金沢大学環日本海域環境研究センターから派遣された専門家らと、研究成果の紹介や今後の活動に関する意見交換が行われました。11月からは、分析測定センターの3名の研究者が約3週間に亘って日本で有害物質の分析手法の習得などを行います。さらに今後、大気汚染分野ではPM2.5の環境リスク評価、発生源解析、日本の経験を踏まえた汚染対策の構築などの活動が検討されています。

2.日本の公害経験の取りまとめ(9月研究会開催、10月日本への招へい)

1950〜60年代の高度経済成長期における日本の公害対策の経験については、これまでも多くの開発途上国に共有されるよう様々な試みが行われてきました。今回、環保センターでは日本の高度経済成長期における産業政策、エネルギー政策、国土開発政策などと環境政策の関係、環境対策が企業に与えた経済や技術開発面での影響、企業や市民参加による環境への取組などに重点を置き、改めて今の中国に参考となる日本の過去の経験を整理、取りまとめることとしました。

9月には環保センターにて日中の専門家による研究会を開催、さらに10月にはJICAが招聘した2名の若手研究者が約3週間で東京から九州までの大都市、中小都市や農村を回り、国、地方政府や研究機関、企業、各種団体、NGO、現場施設(発電所、化学工場、廃棄物処理施設等)など30箇所以上を訪問し、実際に高度経済成長期に公害対策に取り組まれた方々を含め多数の有識者から話を伺いました。水質保全のため人と自然が共生する地区や自然に囲まれながらも高齢化が進む農村集落、かつて激甚な公害を引き起こした工業地域など書籍では得られない現場を踏査し、生の声を収集した成果をどのように中国の環境政策に生かすか、現在、取りまとめを進めています。

3.廃電器電子製品等のリサイクル推進(11月短期専門家派遣、研究会開催)

中国では人口増加、経済成長、生活水準の向上などにより発生する廃棄物の量も種類も年々増えています。2012年には、廃電器電子製品(テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機・パソコン)のリサイクル制度(廃旧電器電子産品回収処理管理条例)が施行され、本年には小型家電製品など対象品目の拡大が行われました。

11月、日本から環境省及び慶応大学から派遣された日本の専門家や中国環境保護部固体廃棄物センター、家電研究院や電子機器技術開発協会などの研究者ら総勢30名以上が集まる研究会が開催されました。研究会では、日中双方より日本及び中国における廃電器電子製品の回収制度の現状と課題等についての発表があり、活発な意見交換が行われました。今後、小型の廃電器電子製品の回収システムの構築、さらに現在、制度改正が検討されている廃自動車のリサイクルをテーマに日本の経験の共有に向けて、訪日研修や研究会の開催等を進めて行く予定です。

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日中電子廃棄物管理/技術セミナー

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日中電子廃棄物管理/技術セミナー

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日本の公害経験の取りまとめ現場踏査

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日本の公害経験の取りまとめ現場踏査