プロジェクトニュース_11

2014年11月6日

バラ・デル・コロラドで地元住民も参加した野鳥調査を実施

今回のニュースは、プロジェクトの専門家ではなく、コスタリカ支所のバードウォッチャーとして有名な、張職員に書いていただきました。張職員は、日頃、JICAコスタリカ支所職員として、プロジェクト活動を支えています。

MAPCOBIOプロジェクトサイトのひとつであるバラ・デル・コロラド野生生物保護区において、野鳥調査(バードカウント)が10月17〜19日にかけて行われました。バードカウントとは、特定地域である時期における鳥の種数とその数をなるべく正確に把握し、環境モニタリング、保護活動、保全計画策定に必要な情報を得ることにあります。

バラ・デル・コロラド野生生物保護区におけるバードカウントは、プロジェクト実施機関であるSINAC-ACTo(国家保全地域庁トルトゥゲーロ保護地域)主導で実施しており今回が3回目となります。この活動は、JICAが2008年から20011年まで行ってきた「バラ・デル・コロラド野生生物保護区住民参加型管理プロジェクト」の中で促進してきた、地域住民参加型の環境モニタリング活動に端を発した活動です。地域住民のみの参加ではなく、コスタリカの野鳥愛好家の集まりであるコスタリカ鳥類研究者協会の協力を得て、より広い人たちの参加を促しています。

地元住民の参加は、鳥の観察を通して身近な自然に関心を持ってもらい、それによって生息環境の保護活動に参加してもらうことが、重要な目的として挙げられます。今回は将来の担い手となる地元の高校生をバードカウントに招待しました。

今回の野鳥調査には約40名の参加者が集まりました。鳥の達人、鳥マニア、野鳥観察者、自然愛好家等参加者のプロフィールも様々でした。

参加者をグループに分け幾つかのあらかじめ決められたルートを回って、鳥の種類と個体数のカウントを実施しました。18日(土)の夜明けとともに朝5時から開始し、午後まで継続してバードカウントを実施しました。

当日夕方に各グループで鳥の観察リストを作成、全体会合で各グループからのデータ集計作業を行いました。全てのグループの情報を纏めた結果、総計211種類の鳥がカウントされました。現在コスタリカで正式には909種類の鳥が確認されていますので、当国の鳥の約23%がバラ・デル・コロラド近辺に生息することが確認されたことになります。

また国内ではバラ・デル・コロラド周辺地域が、主な生息地である種の存在が今回のバードカウントで実際に確認出来たことは、この保護区の重要性を裏付けるとともに、生息環境の保全活動に向けて重要な情報になります。

バラ・デル・コロラドは一般にスポーツフィッシングの名所として国内外に知れ渡っていますが、鳥観察スポットとしてはほとんど知られていません。しかし今回の結果は、鳥観察の名所としてのポテンシャルを示唆しているとも言えます。また、鳥観察スポットとして宣伝するためには、この地域でしか見られない地域に特有の種の中から、バラ・デル・コロラドのシンボルとなる鳥を探すことも重要です。

鳥観察者がある珍しい鳥の観察を目指してバラ・デル・コロラドに足を運ぶようになるには、運が良ければ観察出来る可能性のあるレベルの珍しい鳥の中から地域の代表の鳥、いわゆる象徴種となる鳥を選定することが有効です。それによりバラ・デル・コロラドがバードウォッチャーの注目を集める地域になり、今後鳥愛好家が国内外から訪問する可能性が生まれます。鳥観察者や観光客の訪問が増えれば、食事や宿泊の提供で地元の経済が潤います。また訪問者を案内出来る現地の鳥ガイド育成、また地元民芸品の作製、販売をすれば、新たな雇用創出で地元住民の収入源の確保に繋がることが期待されます。

バラ・デル・コロラドのシンボルとなる鳥の第1候補は前回のバードカウントのTシャツのモチーフになった、Green and Rufous Kingfisher アカハラミドリヤマセミ(Chloroceryle inda)が挙げられます。この鳥は国内ではバラ・デル・コロラドと隣接するトルトゥゲーロ国立公園地域周辺で観察出来るとても珍しい鳥で、この鳥を見つけるのは至難の業です。
実は今回のバードカウントで同種かと思われる鳥を観察し、関係者の期待は大いに高まりました。しかしその後撮った写真(添付)を鳥類学者が検証したところ、同種ではなく近似のAmerican Pigmy Kingfisher コミドリヤマセミ(Chloroceryle aenea)ではないかとの見解が出されました。
その他バラ・デル・コロラドのシンボルとなる鳥候補としては、今回のバードカウントで観察出来たカリブ海側に生息する種のRufescent-Tiger Heron、トラフサギ(Tigrisoma lineatum)、Cinnamon Woodpecker ヒメテンニョゲラ(Celeus loricatus)あたりが挙げられます。

MAPCOBIOプロジェクトとして前回に引き続きバードカウントに参加し、住民参加型の環境モニタリング活動を支援しました。鳥は生態系の健康のバロメーターになるため、バードカウントを通じて鳥の各種の個体数の増減や新種の確認データ収集を継続して行うことにより、今後更にバラ・デル・コロラドの生物多様性保全活動が推進することが期待でき、今回の野鳥個体数調査実施の成果を確認出来ました。

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バードカウントの様子

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参加者全員での鳥カウントデータの取り纏め

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噂のヤマセミ

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カリブ海側地域に生息する美しいキツツキ