プロジェクトニュース_14

2015年5月8日

マレーシアにおける経験の共有

我々のプロジェクトの目的は、コスタリカにおける参加型の生物多様性保全の経験を国の内外で共有することにあります。今回2015年2月27日から3月2日かけて、菊地格夫専門家とカウンターパート2名が、JICAがマレーシアサバ州で行っている生物多様性・生態系保全のための持続的開発プロジェクトを訪問し、今後の活動に活かしていくために、お互いの経験を共有しました。今回はその報告を、カウンターパートのマリアナ・ヒメネス・アルセさんに書いてもらいました。

マレーシア サバ州のサバ州天然資源庁では、水資源を対象とした環境サービスの支払い制度を検討しているため、コスタリカにおける環境サービスに対する支払い制度についての経験を共有しました。

サバ州野生生物局では、野生生物と野生生物管理について紹介されました。ある種の動物がアブラヤシのプランテーションでは見られることから、プランテーションの広がりは生物多様性の劣化を示唆していることを教えてくれました。マレーシアではある種の生物の狩猟は許されている一方、絶滅の危機に瀕した野生生物に関しては、コスタリカよりも厳しい法律によってコントロールされていることを知りました。さらに、国立公園を管理する職員の活動には、地域のコミュニティの人々が同行するそうです。

サバ州保護区管理局では、現存の保護区カテゴリーについてコスタリカと同様に保護区の中に人々が住んでいます。保護区内の人々は、果実や穀物の生産等、一定の経済活動は認められていますが、アブラヤシの生産は禁止されていることについても説明を受けました。

サバ州農業局では、局長のイドルス・ビン・シャフィエさんからアブラヤシに関するかなり厳しい規制があり、新しいプランテーションを開くには環境アセスメントが必要であるとのことです。

コタ・キナバル国立公園では、公園管理のための動植物相の調査の説明がありました。ここでは、アブラヤシのプランテーションを訪問し、コスタリカとは逆に灌漑を必要としていることがわかりました。植えてから最初の7年間は、マメ科の植物を使って土壌に窒素を供給することも、私の興味を引きました。アブラヤシの加工工場の中では、廃棄物を最大限に活用しており、さらにヤシの生産の過程で出る水蒸気や廃熱、廃棄物を余すところなく利用するプロジェクトが、JICAとの間で行われるとのことでした。

コスタリカと類似した活動として、マレーシア政府は、保護区管理のためにローカルアクターの参加促進しています。それは、透明性を促進することになり、地域住民の保護区管理戦略のオーナーシップがより早く醸成されます。また、自然資源の賢明な利用に貢献する行為のみが許可されています。

このような他国への訪問を通した技術交流は、お互いに他の国の戦略や法体系、活動、プロジェクト等についても知ることができ、他の国で行われている保護区や環境についての管理を知り、またそれにより自国に対する提案を行うことも可能にする、とても価値あるものだと思っています。

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サバ州農業省にて。
左から、マリアナ・ヒメネス・アルセさん、マヌエル・アリアス・グスマンさん(以上コスタリカ側カウンターパート)、菊地専門家(コスタリカ側プロジェクト)、イドルス・ビン・シャフィエさん(サバ州農業局長)、鈴木専門家(マレーシア側プロジェクト専門家)

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コタ・キナバル国立公園にて。植物のモニタリングについての説明を受ける。

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アブラヤシのプランテーションについて説明を受ける。

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アブラヤシ加工場の事務所にて。

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アブラヤシの加工工場。中央は、白井義人教授(九州工業大学)。