プロジェクトニュース_19

2016年6月29日

日本に行ってきました

5月30日から6月17日までの間、コスタリカ人カウンターパート13名が、日本で行われた「参加型生物多様性保全」研修に参加し、日本でどのように保護区の管理、生物多様性の保全が、国、地方自治体、NGOの調整の元行われているかを学びました。
最初の三日間は座学で日本の保護区行政、生物多様性保全行政についての講義を受けました。その後、現場の生の声を聞くため、環境省生物多様性センター、富士山、伊豆沼、蕪栗沼のラムサール条約指定湿地とその周辺、三陸復興公園、宮崎県綾町、屋久島、神奈川県丹沢・大山国定公園自然保護センター、千葉県谷津干潟(ラムサール条約指定湿地)、そしてコウノトリをシンボルとした自然環境再生活動を行っている千葉県野田市と、多くの国立公園、保護指定地、地方自治体を訪問しました。
後半2週間は、コスタリカ国環境エネルギー省環境副大臣と、保全地域システム庁の長官、また、プロジェクト専門家として私も同行させていただきました。副大臣と長官の第一日目のプログラムとして、平口環境省副大臣、入柿JICA理事への表敬も行い、環境分野における国際協力を通したコスタリカと日本の関係強化について意見交換をするとともに、日本の協力に対するコスタリカ側からの感謝の意が示されました。
現場訪問では、それぞれの地域で、環境省、県、市役所等の行政機関の役割分担が行われていること、自然環境保全に関するボランティア制度に市民が活発に活動していることなどに関心が示され、コスタリカでも今後、強化していく必要性を学ぶことができたという意見を聞くことができました。また、ボランティア制度については、日本側からは若い世代の参加が今後の課題であることが示されましたが、コスタリカ人からは「日本人は定年退職後も社会参加、社会貢献に意欲があり、素晴らしいことである」との話がでていました。
研修最後の日には、JICA市ヶ谷の国際会議場で100名以上の人を集めた国際セミナー「日本・コスタリカ 人々とともに守る自然」が開催されました。コスタリカ側からは、世界に先駆けて導入された「環境サービスに対する支払い」制度の紹介、JICAとの協力で強化されたバラ・デル・コロラド野生生物保護区における参加型保護区管理について、そして、アリバダと呼ばれる大量のウミガメが産卵に来るオスティオナル海岸で、地域の人たちと連携し、どのようにウミガメの卵の持続可能な利用をしているのかを紹介するプレゼンテーションがなされ、日本ではなかなか聞くことのできない、コスタリカの具体的事例をコスタリカ人から直接聞くことができました。
今回の研修を受け、参加者たちは自分たちの仕事の場で、参加型の自然保護区管理や生物多様性保全をより組織的、公的なものとすべく、「参加型生物多様性保全地域アクションプラン」を帰国後作成することを誓い、帰国の途につきました。
参加者は一人の例外もなく「生物多様性保全に関してのみならず、触れ合った日本人すべてから、多くのことを学んだ。それは例えば、他人のことを思いやる心であったり、時間を大切にすることであったり、自然に対する姿勢であったり、仕事に対する責任感であったりと言うものであった」と言っていました。
今回学ぶことのできた技術的なことに加え、この「日本人の心」とでもいうべきものを、コスタリカの現場でも発揮できるようなファシリテートを、専門家として心掛けていこうと感じました。
最後になりますが、本研修に関わった全ての方々に、この場を拝借し、あらためてお礼申し上げます。皆様のご協力を無駄にしないよう、現場での責任をあらためて感じておりますので、今後ともご指導とご協力を心よりお願いたします。

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富士山5合目にて、環境省のレンジャーの方々とコスタリカの研修参加者。富士山はコスタリカ人にも大人気。

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宮崎県綾町にて。町長に感謝の意を述べるコスタリカ環境エネルギー省マドリガル・コルデーロ環境副大臣(中央左上の女性)。

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神奈川県自然環境保全センターにて、施設の説明を受ける研修員。生物多様性保全における地方自治体の役割、ボランティア活動について学ぶ。

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千葉県野田市コウノトリの里にて。同市はコウノトリをシンボルとした関東一円の自然環境再生に関してリーダー的存在となっている。

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6月16日に行われてたセミナー。手前中央はエスキベルコスタリカ大使。