プロジェクトニュース_28

2017年10月20日

SICA加盟国における参加型生物多様性保全活動の経験共有のための地域セミナー

プロジェクトでは、2017年9月4日から8日にかけて、プロジェクトで取りまとめてきたコスタリカの参加型生物多様性保全の経験を中米統合機構(SICA)加盟諸国(ベリーズ、グァテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、ドミニカ共和国)と共有すると共に、SICA各国に存在する優良事例も紹介してもらうための地域セミナーを開催しました。
セミナーには、日本の事例も紹介していただくために、環境省近畿地方環境事務所浦富自然保護官事務所から自然保護官の宮森由美子さんにもご参加いただき、鳥取砂丘を有する山陰海岸国立公園での参加型活動事例もご発表いただきました。
今回のプロジェクトニュースでは、その宮森さんからの感想をご紹介いたします。

今回、本セミナーに参加させていただいた環境省浦富自然保護官事務所の宮森由美子です。日本の国立公園管理に携わって7年目、初めて海外の国立公園管理の現場を見せていただきました。

セミナーの概要

このセミナーは、MAPCOBIOが、これまでコスタリカ国内で行われてきた参加型生物多様性保全の経験、知識を体系化して書籍にまとめたものを、中米諸国に共有し、生物多様性保全活動の促進につなげることを目的に開催されました。(プロジェクトニュース24に詳しい説明があります。)参加者は、コスタリカはもちろん、SICA加盟国(ニカラグアは残念ながら今回不参加)から数名ずつ、計20名程度でした。5日間のセミナーでは、国立公園や野生生物保護区、生物回廊など、様々な枠組みの自然保護区域の現場に赴き、その地域で自然保護やエコツーリズムに関わる地域住民の方や行政関係者等から、住民が自然保護に参加することとなった経緯や、取り組み内容、課題や将来展望などを伺いました。

参加した感想

日本の国立公園の現場と向き合ってきた私には、コスタリカの自然自体はもちろんのこと、文化的な背景や、自然公園行政も新鮮そのものでした。
日本の国立公園は、公園区域内に多くの人が住み、そこには豊かな自然の恵みを利用して昔から行われている農業、漁業など、生活があるのが当たり前の風景です。自然風景と生活文化、両方を観光資源として利用に供し、同時に持続的に利用されるよう保全する、という考え方です。コスタリカでは、一概に保護区といっても様々な枠組みがありますが、国立公園という枠に限って捉えたとき、その仕組みの違いに戸惑いを感じました。コスタリカの場合、国立公園には基本的に人が住まないようです。人工物がなく、大自然そのものの営みを感じることができてとても素敵じゃないか、と単純に思っていましたが、一方では、土地を手放さざるを得なくなった住民との軋轢が生じたり、人と自然の距離が離れてしまうなどの課題もあるそうです。
反省点のひとつに、法規制の徹底に重きを置いてきた行政の体制がある、とコスタリカの保全地域庁の職員の方々は言っていました。これは、日本でも同じことが言えます。今、それを変えて行かなければならないとの認識、そしてそのキーワードが「参加型」であることは、地球の裏側の国同士で共通しているんだな、と思うととても不思議です。
「参加型」という言葉はなんだか堅苦しく、行政的ですが、コスタリカの大自然や、それに関わる人々が、その地域の自然に誇りを持ち、生き生きと活動されている様子を目の当たりにして、目指すところは、単純に、より多くの人が「自然を楽しむ」ことなのかな、と感じました。
コスタリカで出会ったみなさんの輝く笑顔に負けないくらい、日本でも自然に関わる人の笑顔を増やしていくぞ!!!
貴重な機会をいただき、本当にどうもありがとうございました。

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セミナー中の様子

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タピリア野生生物保護区Jalapa湖のエコツアー

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タピリア野生生物保護区Jalapa湖のエコツアー

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マリア・ルイサ農場で、生カカオの実を食べて感動

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マリア・ルイサ農場で、生カカオの実を食べて感動

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わがままをいって探していただいた念願の野生ナマケモノ