プロジェクトニュース_31

2017年11月17日

2017年のバラ・デル・コロラド野生生物保護区の参加型野鳥モニタリング調査(バードカウント)

2017年10月21日(土)に、バラ・デル・コロラド野生生物保護区内で、参加型野鳥モニタリング調査(バードカウント)が行われました。このイベントは、トルトゥゲーロ保全地域事務所(ACTo)の参加型モニタリング調査の担当職員が中心となって企画運営しており、2012年から始まり、2017年で6回目の実施を迎えることができました。毎年地元の人を多数巻き込んで行っている、地元でも評価の高い参加型の活動です。2014年にプロジェクトで実施した、保護区内の地元住民向けの参加型環境モニタリング活動の研修(鳥の識別に関する研修)で学んだ技術の成果を測る絶好の機会となっています。

2017年のバードカウントへの参加者数は、外部参加者と地元の参加者併せて54名でした。プロジェクトによる鳥の識別に関する研修と、通年で行っている参加型モニタリング(MAP)活動の成果により、参加する地元の人の、鳥を探す能力、色や鳴き声などから種を同定する能力が年を追うごとに向上しています。地元住民の参加者からは、自分達の身近なところに生息する鳥類の多様性を感じ、それを誇りに思っている様子をうかがうことが出来ました。

2017年は、2016年同様、バラ・デル・コロラド野生生物保護区内全域に観察ルートを7か所設け、1グループ5人から10人のメンバーで、ルートごとに観察を行いました。各グループにおいて、決められている最低5か所の観察地点においてそれぞれ10分間の観察を行います。最初の観察地点での観察が終わると200メートル離れた次の観察地点に移動し、そこで同様に10分間の観察を行い、それを繰り返します。最後の観察地点で観察後に、10分間の休憩をはさんで、もう一度最後の観察地点から最初の観察地点に同様の観察時間で戻るという手法で行われました。各観察地点では、その地点から30m以内と30m外の両方の範囲でカウント数を分ける手法を用いています。この観察方法は、eBirdの観察手法で、国家地域保全システム庁(SINAC)で推奨されており(現在保全地区内15か所でバードカウントが行われており、その内5か所で使用されている)今後1年以内にすべての国内のバードカウントで使われる予定です。ラテンアメリカではメキシコ、グァテマラ、ホンジュラス、コロンビア、ペルーで現在使用されており今後も各国へ広がっていくメソッドであるため、今後国内外の他地域との比較が可能になります。(eBirdとは、アメリカのコーネル大学の鳥類研究所が運営する世界最大の野鳥記録データベースです)

残念ながら、当日の天候は6か所のルートで曇りのち小雨または雨で、1か所だけ曇りというコンディションでした。しかし、結果として合計で241種類の鳥がカウントされ、2014年の242種(当時の天候は晴れで、過去最大のカウント数)とほぼ同数になりました。コスタリカには、2017年7月時点で918種類の鳥が確認されておりますので、四分の一強の種の数を1日で、バラ・デル・コロラド野生生物保護区だけでカウントしたことになります。日本には633種類(2012年発表日本鳥類目録)の鳥がいるとされており、日本野鳥の会では、バードカウント 1 回あたりで確認できる野鳥の平均種数は、28 種という報告があります。2009年のバードウィーク(5月10日〜16日)の日曜日に日本全国56か所で一斉に観察を行って、130種類が確認されたという報告があるのですが、それと比べてもかなりの種数が観察されたことがわかります。

年次 出現種数 天候 調査ルート数 共通メソッド
2012年 135 -(注) 非採用
2013年 175 晴〜曇 5 非採用
2014年 242 晴時々雨 8 非採用
2015年 225 快晴 8 非採用
2016年 210 大雨 7 採用
2017年 241 曇のち雨 7 採用

(注)データ無し

天候が終始雨であった2012年の135種、2016年の210種と比べると、今年は観察ルート全域で観察時間のほとんどが雨という状況にも関わらず、カウントされた種の数は非常に多い結果になりました。また過去4年は連続して200種超えをしており、これは観察ルートを細分化して増やしている(現在は7つのルート)ことと、参加している地元住民の野鳥観察のスキルが上がっていることが理由ではないかと感じています。

観察された鳥の種のデータは、データの管理担当者によって更新され、最終的にはトルトゥゲーロ保全地域事務所のホームページに上げられますが、このデータを今後、どのように活用していくのかが課題であると感じました。参加者の1人は、携帯端末のeBirdというアプリケーションを利用し、観察された鳥の情報を携帯端末に直接入力していました。鳥の名前をリストから選択したあと、数を入力する方法であるため、ノートに手書きで記録する従来のやり方に比べ、スペリングのミスや文字の汚さなどを心配する必要がなく、また電波がないオフライン環境でも利用できる利点もありました。携帯端末を用いたモニタリング調査は、多くの人がアクセスしやすく情報の活用も容易であることから、そのようなアプリケーションを利用する仕組み、WhatsAppのグループなどでのカウントされたリストデータの更新の仕組みなど、今後試験的に取り入れてみるべき方向性が見えたバードカウントでした。

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野鳥観察会の様子

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野鳥観察会の様子(雨間に観察する参加者)

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Bosque Secundarioルートで観察されたSlaty-tailed Trogon