プロジェクトニュース_36

2018年3月12日

参加型保全活動の経験取りまとめシリーズ 第4回 環境教育

環境教育と参加型生物多様性保全

環境教育(注)の重要性が増していく今日、生物多様性の豊かさで知られるコスタリカではどういった環境教育が行われているのか、興味を持たれている方も多いのではないかと思います。今回プロジェクトMAPCOBIOで取りまとめたコスタリカにおける参加型保全活動の経験の中には、環境教育に関する以下の事例がありました。

1.グアナカステ保全地域生物教育プログラム
2.アレナル・テンピスケ保全地域における参加型環境教育プログラム
3.テラバ・シエルペ湿地(ラムサール条約登録湿地)における水資源に関する環境教育

今回のプロジェクトニュースではこの環境教育に関する3事例についてご紹介させていただきます。

(注)近年では「持続可能な開発のための教育」(Education for Sustainable Development:ESD)というコンセプトも紹介されていますが、カウンターパート機関のSINACでは環境教育という言葉が使われているので、本原稿では環境教育で統一しています。

1.グアナカステ保全地域生物教育プログラム

1970年代初頭から1980年代の終わりにかけて、コスタリカでは野生生物保護区や国立公園などの設置が相次ぎました。それと同時に、そうした新設の保護区や国立公園を適切に保全・管理していくには地域の住民の協力や理解促進が欠かせないという認識が広がり、環境教育の重要性に注目が集まるようになっていきました。

そうした最中の1986年、コスタリカ北西部に位置するグアナカステ地方においても環境教育の動きが見られるようになりました。この年、コスタリカで長年にわたり生態学の研究を続けていた世界的に著名な生態学者ダニエル・ジャンセン博士とウイニー・ホルワック博士が、グアナカステ国立公園創設の提案書を提出しました。またそれにあわせて、今日グアナカステ保全地域で行われている生物教育プログラムの活動の根幹をなす、"Bio-alfabetización"の原型となる活動も、この頃から両博士のイニシアチブによって始められたのです。

両博士は、森は"自然の図書館"であるとして、そこに蓄えられた膨大な情報は失われることなく活用されるべきであるという認識を強く持たれていました。しかし本を読むにはまず文字を知る必要があるように、"自然の文字"を知らなくては"自然の図書館"の意味も価値も読み解くことはできません。森に存在する動植物や自然のプロセス一つ一つが自然の文字であり、それらについて学ぶことが"自然の図書館"の意味や価値を知る第一歩になるのです。そのため両博士は識字教育という意味を持つalfabetizaciónと、生き物を意味するBioを組み合わせ、"Bio-alfabetización"という造語を環境教育プログラムの名称にあてたのです。そうして"自然の図書館"の使い方、楽しみ方、その価値を出来るだけ多くの人々に知ってもらおうと考えたのです。

このBio-alfabetizaciónを行うにあたり、両博士は米国のジェシー・スミス・ノジェス財団に新規の環境教育プログラム実施支援の要望書を送りました。その結果4年間の活動助成金を得ることが出来ました。そして翌1987年、Bio-alfabetizaciónは開始されました。このBio-alfabetizaciónの主な参加者は、教育省、環境エネルギー省のグアナカステ保全地域事務所職員、地域の子供たちとその保護者たちです。

Bio-alfabetizaciónは主に以下の活動や目的を達成するために行われました。

・地域の環境問題の軽減、特に熱帯乾燥林での森林火災防止活動
・学校における生物学、生態学、自然史教育指導の向上
・地域の環境保全プロジェクトへの参加人数増加
・ACGの地域住民に対する環境保全活動などの周知・啓発
・生物学・生態学的調査への住民参加促進と、得られた成果や結果の共有

当初ジェシー・スミス・ノジェス財団からの助成金で、環境教育担当者2名の人件費、プロジェクト車両購入費、実験室の建設費、機材設備費、教材費、野外調査機材購入費、環境教育プログラム運営費などが賄われました。

とはいえ助成金や機材・物資を得たことでBio-alfabetizaciónの成功が約束されたわけではありません。当時は環境教育を実施できる人材も十分に育っていませんでした。関係者・省庁間の調整や協働体制も十分に確立できていませんでした。また助成金で購入された車両や機材設備ですべての活動をカバーできるわけではありません。自然環境保全に関する知識や認識のレベルは、参加するコミュニティーによっても様々です。野外実習中に事故があった場合どうするかなどの議論もありました。このように活動前の調整から実施まで、様々な問題点があったのです。

しかし関係者の工夫や努力によって、少しずつ実施体制が整い、活動は進んでいきました。例えば1988年に環境エネルギー省と教育省の省庁間で、環境教育に関する協力協定が結ばれました。また野外実習中に事故があっても社会保険庁が対応できるように調整を進めました。1990年には詳細な活動計画も完成し、教員向けの環境教育指導のためのワークショップなども開始されました。また同年、生徒・児童たちの移動に用いるマイクロバスも購入、配備されました。

このようにBio-alfabetizaciónの実施環境が整いつつある一方、肝心の環境教育はどのように実施されていたのでしょうか?環境教育の対象となったのは現地の小学校の10歳から12歳までの子供たちです。当初はグアナカステ保全地域事務所の職員が地域の小学校を訪ね、その学年の子供たちを対象に生き物の生態などについて話をしたり、また野外実習に子供たちを連れていったり、動物の観察、昆虫採集、種の分類、標本作成などの活動を行っていました。とりわけ野外での実習はBio-alfabetizaciónの核となる活動で、時間をかけてじっくりと行われました。1990年に入ると、子供たちの保護者も対象にした環境教育も行われるようになり、また1994年からはグアナカステ保全地域内の高校生にも参加してもらうようになりました。これによって小学生時代にBio-alfabetizaciónに参加した子供たちの中で、とりわけ動植物学や生態学、自然史などの分野に興味を持った子供たちに対し、さらなる学びの場を提供することが可能になったのです。

【画像】

サンタ・ロサ国立公園でブルホン・アカシア(Vachellia cornigera)とアカシア・アリ(Pseudomyrmex ferruginea)の共生関係について学ぶ子供たち

1990年代のBio-alfabetizaciónの活動は、この当時コスタリカの他の地域で行われていた環境教育活動とさほど大きな差異はありませんでした。子供たちに国立公園などの現場を見てもらう。自然に触れあい、学びの場を提供する。大人がそれを支援するというものです。しかしグアナカステ保全地域はコスタリカに11ある保全地域の中で、唯一"Bio-desarrollo"(生物多様性の保全に基づいた経済開発)というフィロソフィーをもって活動計画を立てている地域です。1999年にグアナカステ保全地域が世界自然遺産に認定され、さらに充実した環境教育が目指されるようになりました。そして2000年代に入るとBio-alfabetizaciónにもこのBio-desarrolloのアイデアが取り込まれた動きが出てきます。

グアナカステ保全地域には広大な熱帯乾燥林があり、乾季には森林火災が頻発します。この森林火災は農牧地にも延焼し、しばしば大きな被害を出すこともあります。森林火災はグアナカステ保全地域のエコツーリズムや農牧畜業にとって大きな脅威となっています。そこで2001年からこの森林火災の防止、火災地域の植生の回復促進などを目指した"Proyecto Eco-Desarrollo Papagayo"(パパガジョ・エコ開発プロジェクト(グアナカステ保全地域にあるパパガジョ湾に因む名称))が計画され、2003年1月にプロジェクトが開始されました。このプロジェクトは森林火災防止や流域の管理・保全の他に、環境教育が活動計画に盛り込まれました。Bio-alfabetizaciónはこの環境教育によって一つの転換期を迎えます。従来は国立公園等で行われていた野外活動が、エコツーリズムや農牧畜産業を行っている地域においても行われるようになったのです。これによって従来の自然環境保全のみにフォーカスした環境教育から更に進展し、エコツーリズムや農牧畜産業などの地域社会経済の要素も含んだ、より多面的な環境教育が行われるようになりました。

こうした中でBio-alfabetizaciónはグアナカステ保全地域にある企業からもその有益性が認められ、支援を得るようになっていきました。グアナカステ保全地域にはグルーポ・デ・オロというオレンジやパイナップルジュースの会社があります。この会社はグアナカステ保全地域に広大な果樹園やジュースの生産工場を所有し、また現地の小規模農家とも契約し、現地の人々の雇用や地域経済を支えています。この会社の特筆すべき点は、豊かな自然がもたらす生態系サービスによって、果樹園から高品質な果実を収穫できているというビジョンを持ち、得られる収益の一部を自然環境保全に還元している点です。自然環境に配慮した高品質ジュースとしての付加価値を付けて市場に商品を提供し収益を上げています。またジュース工場から大量に出されるオレンジやパイナップルのパルプ等(搾りかす)はコンポスト処理し、肥料として農作物の生産に再利用しています。2003年からグルーポ・デ・オロはこうした事業で得られる収益でBio-alfabetizaciónに参加する子供たちの野外実習にかかる費用を支援したり、あるいは自社工場を環境教育の見学地として活用したりと、自然環境保全と経済活動の両立の実例を子供たちに紹介しています。

これと同様の動きは他にも見られました。グアナカステ保全地域内で米、サトウキビ、スイカなどの農産物を大規模生産しているヒルトン・エンタープライズはグアナカステ保全地域で活動している環境NGOと長年友好関係にあり、Bio-alfabetizaciónの趣旨に賛同し協力を申し出てくれたのです。同社は2004年から自社所有農場において子供たちが農地生態系を学べる場所や機会を提供したり、またBio-alfabetizaciónの実施資金を10年間に渡り支援したりするなどの協力・支援を提供してくれました。

以上のように、自然環境保全だけでなく地域社会の経済活動との融和というユニークな活動によって、Bio-alfabetizaciónはコスタリカ国内だけでなく、周辺国からも注目されるようになりました。そして2009年頃からはホンジュラス、コロンビア、ニカラグア、パナマなどの大学や教育機関、環境省や教育省などの政府機関からも視察が来るようになり、Bio-alfabetizaciónの関係者は彼らと意見交換を行ったりし、他国の環境教育の教育者向け研修をグアナカステ保全地域で行うなどの活動も始まりました。

現在、Bio-alfabetizaciónにはグアナカステ保全地域の45の小学校と7の中学校が参加しています。小学生のグループは年に4回グアナカステ保全地域内の国立公園や農牧畜産業の現場など、様々な現場に触れることができる野外実習に参加します。また中学生グループは年に2回の野外実習に参加し、より高度な内容の環境教育を受けます。一回の野外実習で現場にいる時間は6時間で、子供たちは現場で自由に動植物を観察し、何か不思議に思ったことは自分で調べてみたりし、仮説を立てて検証してみるといった活動も行っています。

また学校の教員・保護者向けの講習会を年に2回行っており、Bio-alfabetizaciónの普及や効果の維持・拡大にも努めています。近年はBio-alfabetizaciónの効果について質的調査の他に量的調査も用いる動きが出始めています。こうした調査手法が確立されれば、結果をフィードバックしてより良い環境教育につなげることが出来るでしょう。

以上のようにグアナカステ保全地域のBio-alfabetizaciónは、コスタリカ国内外の環境教育をリードする先進的な活動を今日も展開しています。

2.アレナル・テンピスケ保全地域における参加型環境教育プログラム

アレナル・テンピスケ保全地域はコスタリカの北西部にあり、2000mを超える山々や河川・湖沼の多い地域として知られています。その豊富な水資源を活用し、コスタリカの水力発電の約40%を、また風力発電、地熱発電についてはその90%以上をこの地域で発電しています。

こうした再生可能エネルギーは、元となる自然資源が適切に管理されていれば、持続的に利用することが出来ます。そうしたことから、この地域において環境教育は非常に重要なテーマとなっています。アレナル・テンピスケ保全地域において最初の環境教育の動きが始まったのは1992年のことです。国家保全地域システム庁(Sistema Nacional de Áreas de Conservación:以後SINAC)のアレナル・テンピスケ保全地域事務所が環境教育プログラムを立ち上げ、多様なアクターを巻き込みながら今日までプログラムを継続してきました。その内容は主に土地利用や自然資源管理にフォーカスを置いたものとなっています。

土地利用や自然資源管理には多様な組織や現地の人々が関わってきます。開始当初からしばらくの間は様々な主体がバラバラに環境教育活動を行っていました。しかし所属の異なる人々を巻き込んでの環境教育プログラムをより効果的・効率的に進めるために1997年、環境教育地域コミッション(Comisión Regional de Educación Ambiental:以後CREA)が結成されました。この年以降このCREAを中心に様々な関係者を巻き込みながら環境教育戦略の策定や教材の作成が進められていきました。

2000年に入る頃になると、地域の人々にとって環境教育という言葉やその意義などがごく当たり前のものとして認識されるようになっていました。そしてこの頃からアレナル・テンピスケ保全地域における水資源管理、廃棄物処理、野生生物管理、生物多様性保全、森林火災対策などの活動や事業戦略において、環境教育の概念や活動が当たり前のように盛り込まれるようになったのです。

2005年には自然環境保全上の重要度が高いモンテベルデ地域においても環境教育コミッション(Comisión de Educación Ambiental de Monteverde:CEAM)が立ち上げられました。また2010年にはアレナル・テンピスケ保全地域域内にあるバガセスという街において、バガセス環境教育ネットワーク(Red de Educación Ambientales de Bagaces:以後REAB)が立ち上げられました。REABは環境教育に関係する多様な主体を結びつけるプラットフォームとして機能し、ネットワークの形成・強化のための様々な活動を展開しました。

このようにアレナル・テンピスケ保全地域における環境教育の実施体制は年々充実していき、環境教育が普及していきました。

CREAには2010年の時点で34もの主体(省庁、地方行政機関、NGO、教育・研究機関、生物回廊協議会、住民組織など)が参加するようになっていました。

アレナル・テンピスケ保全地域の環境教育は現在でもCREAを中心に自然環境保全や自然資源の持続可能な利用を目指して活発に推し進められています。

【画像】アレナル・テンピスケ保全地域におけるCREAを中心とした環境教育ネットワーク

3.テラバ・シエルペ湿地(ラムサール条約登録湿地)における水資源に関する環境教育

テラバ・シエルペ湿地のマングローブ林はコスタリカの太平洋沿岸南西部、オサ半島の付け根に位置し、コスタリカ国内のマングローブ林の中では最大の面積(32,325ha)を誇ります。ここは昔から地域住民にとって非常に重要な自然資源として利用されてきました。地域住民はマングローブ林からは建築材や薪炭材、皮を鞣すタンニンなどを得ることが出来、また多様な生物種の生息地でもあり、採集によって魚介類等の糧を得ることが出来ました。

この地域で環境教育の動きがみられるようになったのは、1989年に遡ります。この年、テラバ・シエルペ湿地のマングローブ林管理計画を当時の環境エネルギー鉱物省の森林局が策定した際、その中にはじめて環境教育プログラムの項目が盛り込まれたのです。

それまでテラバ・シエルペ湿地のマングローブ林では、森林局からコンセッションを得たCOOPEMANGLEという住民組織が、決められたエリアで決められた量の木材をマングローブ林から調達し、販売していました。先述の管理計画が策定されてからは、COOPEMANGLEは環境エネルギー省の他に教育省とも協働して、環境教育にも参加するようになったのです。その内容は主に現地の子供たちをマングローブ林に連れてゆき、湿地生態系について現場で学んでもらうというものでした。このプログラムは開始以降すこしずつ内容を充実させて広まっていきました。例えば1990年には現地で初めてマングローブ祭りが行われ、歌や踊りなどの催しの他に、マングローブ植樹活動などが行われました。また環境教育やツーリズム用に、マングローブ林内に1Kmの散策道が整備され、その散策道完成式典なども行われました。

【画像】

1989年、地域の子供たちを連れてテラバ・シエルペ湿地で初の環境教育を行う

テラバ・シエルペ湿地のマングローブ林で環境教育が始まってから少し経った1992年、熱帯農業研究教育センター(CATIE)と国際自然保護連合(IUCN)が協働して、地球環境ファシリティ—(GEF)の資金を用いてDANIDA-Manglaresという湿地保全プロジェクトを開始しました。これは4年間にわたり中米すべての国を対象として実施されたマングローブ保全プロジェクトですが、コスタリカではテラバ・シエルペ湿地のマングローブ林がプロジェクトサイトとなりました。そしてそのプロジェクトには環境教育強化のプログラムが組み込まれており、現地で行われていた環境教育活動がDANIDA-Manglaresの実施を通じてさらに強化されていきました。

1994年になると、それまで森林保護区というカテゴリーに分類されていたテラバ・シエルペのマングローブ林は、国立湿地のカテゴリーに変更されました。そして翌1995年にはラムサール条約登録湿地となったのです。これによってテラバ・シエルペ湿地のマングローブ林は国際的にも知られるようになり、現地で行われている環境教育プログラムなどは国際的な環境教育の学会などでも紹介される機会が増えていきました。

DANIDA-Manglaresプロジェクトが終了した1996年、テラバ・シエルペ湿地から北に10kmほどのPalmar Norteという街にあったDANIDA-Manglaresプロジェクト事務所は、その後環境エネルギー省が所管するようになりました。そして、テラバ・シエルペ湿地のマングローブ林やバジェーナ海洋国立公園など、ラ・フィラ・コステーニャと呼ばれるコスタリカの太平洋南沿岸部の保護区や湿地、国立公園などを管轄する事務所として利用されるようになりました。

DANIDA-Manglaresプロジェクト終了後も、テラバ・シエルペ湿地での環境教育は継続して行われていました。しかし2000年から2005年ころは深刻な人手不足と財政難によってこのPalmar Norteの事務所があまり機能せず、環境教育に関連した活動が大々的に行われることはほとんどありませんでした。

しかし2006年に入ると環境エネルギー省が主導して、2月2日の"世界湿地の日"を記念するキャンペーンを行うようになり、再び現地での環境教育活動が活発になり始めました。テラバ・シエルペ湿地でのイベントのロジスティックス業務は、同地での環境教育に大きくかかわっている地方評議会が主導して行いました。この地方評議会はテラバ・シエルペ国立湿地地方評議会といい、評議会のメンバーは行政組織や大学、NGO、住民組織など、テラバ・シエルペ湿地の管理や保全における直接的な利害関係者です。テラバ・シエルペ国立湿地地方評議会は世界湿地の日のイベントにおいて現地の学校や企業、赤十字、NGOなど多様なアクターを巻き込んで、非常に多種多様な活動を行いました。

2010年に入ると、シエルペ河口地域協会という住民組織が、教育省の支援を受けて地域の学校と連携し、学生の環境教育を目的としてテラバ・シエルペ国立湿地の保全や管理に積極的に関わるようになりました。学生たちは世界湿地の日のイベント活動、マングローブの植林、清掃活動やリサイクル活動などに積極的に参加しました。

またBio-Arteと呼ばれる生態系や生物多様性の豊かさをモチーフにした芸術・創作活動もこの頃から行われるようになりました。このBio-Arte活動によって廃棄物やリサイクル用品を用いた創作活動、マングローブ林や野生生物の写真展、絵画展、物語の創作、演劇なども学生の参加によって盛んに行われるようになりました。

以上のようにテラバ・シエルペ湿地をめぐる環境教育活動は、地域住民、特に学生を巻き込んで今日も活発に行われています。

コスタリカの環境教育活動から得られた知見

1.環境教育を実施・継続するための資金メカニズムの構築

環境教育実施にあたり必要な資金を得られる仕組みを構築したり、それが難しいならば資金提供を期待できそうな関係先を探したり、関係を構築しておくこと。

2.環境教育に関わる組織間・組織内の調整

それぞれの組織や部署が責任をもって事業に取り組み、環境教育を適切に行うには、事業の管理や調整のためのメカニズムをしっかりと構築すること。

3.法や協定、規範などに裏打ちされた環境教育であることを明確化

実施されている環境教育が、例えば生物多様性保全法といった法律や、国際的な取り組みなどで定められた活動に当てはまるということを関係者がよく理解し、実施の必要性や重要性を明確に認識すること。

4.環境教育の実施対象グループの選択と集中

限られたリソースを有効に活用し、環境教育で狙った成果を最大限引き出すには、対象グループをしっかりと定めて、そのグループに対して集中的に取り組んでいくこと。

5.環境教育の事業実施プロセスの持続可能性

環境教育事業のデザインをする上で、多様な関係者の巻き込みや調整のメカニズム構築、資金メカニズムの構築、成果と効率のバランスの意識など、事業の持続可能性を意識し、追求すること。

6.自然とのふれあい

環境教育の根源的な部分として、自然と直接触れ合える場を参加者に提供することが何よりも重要。

7.安全管理を徹底する事での信頼確保

野外実習中の急病、怪我、移動中の交通事故等、環境教育の実施には常に危険が潜んでいることを意識し、安全管理を徹底するとともに、万一の際は万全の対応が取れるように準備をしておく必要がある。それによって参加者や保護者の安心感や信頼を確保することが出来、環境教育の成果を高めることが出来る。

8.活動の振り返り

環境教育を行った後、その実施プロセスにおける反省点や改善点を常に意識し、次の環境教育に生かすこと。

9.研修実施

環境教育に関わる教師やコーディネーター、その他主要なアクターは、教育分野、自然科学分野、その他様々な現場の実務者と相互に学ぶ研修の機会を設け、環境教育の質や実施能力の向上に努めること。

10.現場で生じている問題や要求の背景についての正しい理解

現場が抱えている問題や課題、現場から上がってくる要求などについて、背景情報を適切に収集して理解し、環境教育実施のプロセスに組み込んでいくこと。それによって現場の人々との信頼関係も向上し、より効果的な環境教育が実施できる。

11.事業実施における創意工夫

時間や資金が限られた中で事業を実施するには創意工夫が求められる。そうして出てきた案を実行するには、他の関係者との意見交換やアイデアの共有が重要で、それを行う事によってさらに事業を円滑に進めることが出来る。

次回の参加型保全活動の経験取りまとめシリーズ(第5回)では土地管理をテーマにした事例をご紹介します。お楽しみに。