第一回地方踏査の実施

2017年8月3日

2017年3月

本プロジェクトはキューバの全16県・特別区の内の9県・特別区、国の約半分を対象としています。2017年3月に第一回目の地方踏査を行い、広い対象地域の各地を訪問し、カウンターパート機関である穀物研究所(IIGranos)の地方研究所や国営企業、農業組合、個別農家の現状を確認しました。

今回の訪問で特に印象に残るのは機械化農業と、これら機械の不足、老朽化の実態です。キューバの農業は機械化が主流で、国営企業の農場に限らず個別農家の多くも国営企業などが提供する農業機械サービスを利用しています。サービスは農地の均平(農地を平らにする作業)、耕起、肥料・農薬散布から収穫まで殆どの農作業に対応しており、機械の種類もポンプからトラクター、飛行機まで様々で、穀物研究所テルセ所長によると、肥料・農薬散布を行う飛行機の翼の幅に合わせ設計された農地も多いとのことです。

しかしながら、肝心の農業機械は老朽化が激しいのが現状です。キューバでは米国の経済制裁の影響により外国企業がキューバとの貿易をしにくいという状況があり、加えて計画経済下の統制により物流が遅く、機械そのもの、そして維持管理に不可欠なスペア・パーツの入手が極めて難しいです。このため、国営企業の一部の新型農業機械を除くと、他国では考えられないほど老朽化した機械が利用されています。中には外装がほぼ朽ち果てて、エンジンむき出しの機械もあります。機械の量的不足と老朽化は生産の非効率化を招いており、事実、農業機械サービスの遅れから収穫適期を逃すという問題を複数の関係者が指摘しています。老朽化は今後も進む、待ったなしの状況で、キューバ政府がどのような対策を講じていくかが注目されます。(農業普及システム(普及実施促進):吉野倫典)

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トラクターでの国営企業農地の均平作業

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国営企業の農業機械整備場に並ぶドイツ製大型収穫機

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老朽化の激しいトラクター
出典:キューバ国基礎穀物のための農業普及システム強化プロジェクト・チーム