キューバの食事

2017年10月16日

2017年8月

キューバの食事は、米(中〜長粒種)にフリホール豆と豚あぶらを入れて炊いたコングリ(見た目は赤飯)と焼いた豚肉または鳥肉、それに野菜が少々の組み合わせが一般的。どこにいってもあまり変わりません。栄養の観点からはタンパク質、脂質及びでんぷんがうまくミックスされており、食べ過ぎなければ良質なバランス食といえるでしょう。

キューバに近いメキシコ・中米ではトウモロコシで作ったトルティージャとフリホール豆の組み合わせですが、キューバでは米がトルティージャに替わります。キューバではトウモロコシはどちらかというと家畜の餌との位置づけ。同じスペイン人が入ってきた地域で、どうしてキューバでは米が主食になったのか。降水量が多く稲作に適していた、カストロ首相が米増産を指示した等、諸説あるのですが、残念ながら歴史的なところはよくわかりません。国民一人当たりの米の消費量は62kg/年と日本を10kg程度上回っています。

キューバの土壌は粘土質の赤土土壌が多く、雨期にはぬかるみ、乾期にはカチカチになるという厄介な土性です。また、海外からの資材の入手が困難で施設園芸もあまり発達しておらず、主要な野菜も旬の時期を外すとなかなか良質なものを入手するのが困難です。カレーを作ろうと思っても、タマネギ、人参、ジャガイモが一度に入手できるのは3〜4月の一時期だけです。ジャガイモは統制品となっており、特に入手が困難です。1年中カレーを作れるかどうかが農業発展の目安になるのではというキューバ・ウォッチャーもいらっしゃいます。

魚介類になるともうお手上げです。観光客が行くようなレストランに行いくとマグロから伊勢エビまで食べられますが、市場ではわずかな冷凍魚しか売っていません。外貨を獲得できる観光セクターが優先されており、魚介類のほとんどはホテル、レストランの厨房に廻っているようです。ということで、エビカレーは夢のまた夢(?)。回りが海に囲まれているにもかかわらず、キューバ人は魚そのものをあまり食べません。レストランのメニューにも魚はあるのでが、魚とだけ書いてあり、どういう種類の魚かは出てくるまでわかりません。

社会主義国であるキューバでは食材も限られており、マーケットの棚も同じ缶詰が並んでいる光景をよく見ますが、それでも庶民は自宅の庭で果樹を育てたり、ハーブ類を植えたりして食事を工夫しているようです。こういう日常環境の影響なのか、食べ物の話はみんな大好きです。こんな美味い物を食った、こんな珍しいものを見た、とか、一度始まるとなかなか止りません。世界中、どこへ行っても胃袋は正直です。

しかし、辛いものと香辛料の強い料理が苦手な人が多いようで、カウンターパートで中国、ベトナムに研修に行った方々の多くが、食事が合わなかったと言います。特にパクチー等の香菜がダメのようです。この8月中旬から47日間、日本研修にいくカウンターパート15名の帰国後の日本食の感想をぜひ聞いてみたいと思います。これまで日本に行った方々にはカレーの人気が高いのですが、辛さとの相性はどうなっているのか、日本でカレー味に目覚めたのか等、興味深いところです。キューバの暑い夏にはやはりソーメンだという日本通まで輩出した日本研修、果たして今年の成果は…。(チーフアドバイザー:北中 真人)

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キューバの代表料理である、フリホールとお米を炊きこんだコングリ
出典:キューバ国基礎穀物のための農業普及システム強化プロジェクト・チーム