第2回本邦研修の実施:後編

2020年1月21日

2019年9月

約30日間に渡った第2回本邦研修は予定通り実施され、研修員たちは9月28日に無事帰路につきました。盛りだくさんの研修でしたが、今回は、特に研修員の関心を惹いたテーマについて紹介します。

今回の研修において、特に有益であった、との研修員のコメントがあったテーマに、一村一品運動、生活改善、グリーンツーリズムなどがありました。

研修員は日本の農家民泊の発祥の地である大分県安心院町において2日間の農家民泊を体験しました。安心院町では、各々の民泊先で、日本の農村生活を体験するとともに、もともと葡萄栽培とワインの加工に頼っていた町が、農家民泊を進めることで収入源を多様化した経験について講義も受けました。民泊先で言葉が通じないなかでもなんとか意思疎通を図りながら日本の農村を体感したことは、農家民泊やグリーンツーリズムの醍醐味の発見に繋がったようで、研修員は、観光が最も重要な産業であるキューバでの実現可能性に大いに期待できると考えたようです。

また大分県で発祥した一村一品運動については、講義に加え、地場産品としてかりんとうを生産・販売する生産者グループと、農家レストランを訪問しました。特に、かりんとう生産代表者との意見交換では、自分たちの資源を活用して少しずつ活動の規模を拡大し、今ではかりんとう生産が各家庭にとって無視できない収入源になっていることを伺い、地域の創意工夫と地域資源の活用により、一村一品はどんな所でも実施できることを学んだようで、キューバにおいても展開できるとの確信を得た様子でした。

最後に、日本の農業普及の歴史で欠かせない生活改善普及の取組みについては、長野県松川町において実習を含む研修を実施しました。松川町には、戦後の日本で農村生活の改善に大きく貢献された米山さんという元生活改良普及員がおり、今でも農家の女性グループと共に地域の活性化に尽力されています。研修員は、米山さんより、普及員が活動を行ううえでの重要な視点や姿勢について熱のこもったお話を伺ったことは、普及活動のやりがいや自らの姿勢を振り返る機会となりました。また、女性グループとともに郷土料理(おやき)作りを体験し、郷土料理という当たり前の地域資源が貴重な農村体験観光に繋がっていること、また、こうした活動が高齢者や女性の活躍の場となり、地域経済に貢献していることも目の当たりにしました。高齢化は、キューバにおいても課題となっているため、この体験は、高齢者や女性が農村活性化に果たせる役割を認識する良い機会となりました。
一村一品運動、生活改善、グリーンツーリズムはいずれもキューバにおいて実施例がなく、新鮮な発見があったようです。特に、これらの活動は地元の資源を活用し、少ない初期投資で着手できることもあり、中長期的な普及活動に取り入れてみたいとの意見が多く寄せられました。
研修員は、これら一連の研修の学びから各々のアクションプランを取りまとめ、最終日に成果発表を行いました。これらのアクションプランの実施については、今後、プロジェクトにてモニタリングしていくことになります。これらの研修が役に立ち、キューバにおける農業普及がますます促進されることを期待しています。
(総括/農業普及システム(普及企画・管理):大形 いずみ)

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かりんとう生産ワークショップ:女性グループによる手際よい製造工程を見せていただくとともに、試行錯誤による体験談や一村一品運動の魅力について話を伺った。
出典:キューバ国基礎穀物のための農業普及システム強化プロジェクト・チーム

【画像】研修員全員に無事修了書を授与された
出典:キューバ国基礎穀物のための農業普及システム強化プロジェクト・チーム