バコンゴ州での情報環境調査

2014年10月19日

2014年6月7日〜13日までの期間中、石嶋専門家(保健人材開発支援)は保健人材情報を管理しているIT環境を調べるため、バコンゴ州内のいくつかの保健ゾーン(Zone de Santé)を訪問しました。

この訪問を通じて、バコンゴ州では届出人材リスト(Liste Déclarative)を作成し、不定期ではあるものの、年に何回か程度はアップデートされているということがわかりました。また、情報の伝達手段としては、インターネット等を用いることはほとんどなく、手書きの表を携え、もしくはコンピュータで作成した表をUSBメモリーにいれ、直接郡保健局(District Sanitaire)または直接州都マタディの州保健局(Division Provincial Sanitaire)に送っているとのこと。「誰かが州都や郡都に行くときに持って行ってもらう」という、いかにもアフリカ的なのんびりしたところが嬉しいです。

また、ある保健ゾーンでは、人材情報のアップデート(人員の確認)のために現地訪問をしたいとは考えるものの、コンゴ川の中州や深いジャングルの中の集落へのアプローチは非常に難しいとのこと。とてもリアルな状況報告でした。

日本であればインターネットを用いたった数秒で情報をやりとりできますが、ここコンゴ民では徒歩、バイク、バス、誰かさん(?)、といった方法で数百キロ彼方の州都に情報を届けています。時間はかかってしまいますが、「ちゃんとやってない」ではなくて、「彼らなりにちゃんとやっている」ことがよくわかった調査でした。

併せてIT環境も視察しました。電線が見あたらないのに電気があるのがとても不思議ですが、きちんとパソコンは動いており、エクセルで人材情報管理されていました。ここでは皆さん、何年前のものかわからないパソコンをきちんと使っています。購入から10年以上も経過した古いパソコンは、これまでに3回もハードディスクが壊れたものの、その度に交換してきたという強者だそうです。

とは言え、保健人材情報は個人情報です。そして正確な情報の把握とその情報伝達の仕組みはやはり強化して行く必要があると考えています。私たちプロジェクトのスタンスは、現在の仕組みをなるべく変更せずに、より強化すること。そこで、この調査結果を受けて、プロジェクトでは保健ゾーン及び郡保健局レベルへの情報機材の供与を行う方向で調整を開始しました。

(補足情報1)「電線がないのに電気がある」のは、電線が埋設されていたそうです。なかなかのハイテクぶりに驚きました。また、バコンゴ州では沿岸の石油施設による火力発電、コンゴ川の豊富な水量による水力発電により、意外に多くの地域に電気が行き渡っています。ただし、送配電系統のメンテナンスが劣悪なため、安定的な電気の供給には至っていません。このため、一日の半分以上は電気がないということもあります。

(補足情報2)州レベルの保健行政の構成
バコンゴ州では、「州保健局(Division Provincial Sanitaire)」を頂点に6つの「郡保健局(District Sanitaire)」、31の保健ゾーン(Zone de Santé)、385の「保健エリア(Aire de Santé)」という保健行政の構成になっています。

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コンゴ西端の街ムアンダを目指して。ボマ〜ムアンダ間はものすごい悪路が続きます

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あまりの悪路のため、プロジェクトスタッフがダウン。車外から気遣うのはバコンゴ州保健局第1課長のMr. Victorさん。

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ZSムアンダ事務所にて保健人材情報についての聞き取りを行う石嶋専門家

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10年以上前に購入された「強者」。不安定な電気事情のため、何回も故障・修理を繰り返していたそうです。

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