プロジェクト概要

案件名

(和)ガラパゴス諸島海洋環境保全計画プロジェクト
(英)Project on Conservation of the Galapgos Marine Reserve

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プロジェクトサイト

ガラパゴス諸島

ガラパゴス海洋保護区について

協力期間

2004年1月20日から2009年1月19日

相手国機関名

ガラパゴス国立公園局(Parque Narional Galapagos: PNG)

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背景

ガラパゴス諸島は、エクアドル沖約1,000kmの大平洋上に位置する火山群島であり、大陸から隔離された環境が特異な生態系を形成し、その貴重な生態系はユネスコが定める世界遺産の第1号に指定されている他、ダーウィンが進化論を産みだした場所としても知られている。ガラパゴスでは陸域に比べ沿岸域で生態系保全の取り組みが遅れている。また、ガラパゴス国立公園を管理する公園局と漁民をはじめとする住民の間の軋轢が海洋保護区の生態系保全の障害になっている。ガラパゴスの海洋保全のためには、住民の理解と協力を得つつ、海洋環境の保全と海洋資源の利用との調和を図り、持続的な環境保全を担保することが重要である。このような観点からエクアドル政府は日本政府に、関係者の参加を促進しつつガラパゴス海洋保護区の保全と持続的管理を推進するための技術協力を要請した。

目標

上位目標:

ガラパゴス海洋保護区の保全と持続的管理がキー・アクターの参加により推進される。

プロジェクト目標:

ガラパゴス海洋保護区の参加型管理システム(JMP)が強化される。

プロジェクト全体イメージ

成果

  1. 海洋保護区管理情報が漁業コミュニティに伝達される。

    ガラパゴス諸島には4つの漁業協同組合が存在し、組合員による伝統漁法(ごく小規模の延縄漁業、一本釣り、ダイビングによる漁業)のみが許可されています。イセエビ、ナマコ、キハダマグロ、サワラ、ハタを中心とする漁業活動は参加型管理委員会(JMP)に諮り、漁区、漁期、漁獲量等が決定されますが、せっかく委員会で決められた事項が各々組合員にまで伝わっていないという根本的な問題がありました。そこで、プロジェクトでは情報伝達の強化を重要課題として取り上げ、テレビやラジオなど様々なメディアを活用して漁民をはじめとするガラパゴスの住民に海洋保護区の情報を提供しています。

    このようなラジオ、テレビ番組の制作、放送、放映は漁民から好評を得ています。また、漁業協同組合のweb page の作成指導を行い、漁協からの情報発信の強化にも貢献しています。

  2. 地元住民の環境理解が促進される。

    地元住民に対する環境教育は海洋生態系を保全するための必要不可欠なツールであると認識されています。島民、観光客の誰もが訪れることができる展示棟の建設を終え、島民に自分達が生活するガラパゴスの海洋がいかに神秘的で素晴しいかを認識してもらい、いかにこの生態系を保全すべきかを伝えるため、現在、色々な展示方法や展示棟を活用した環境教育を検討しています。展示棟と合わせ、その隣に建設された訓練棟を環境教育コミュニティーセンターと位置づけ、活用していきます。

    ガラパゴス州サンタ・クルス島の高校と協力し、高校生を対象に海洋環境保全をテーマとする授業を2005年から企画、運営しています。生徒達の人気の高い授業として先生方や地域の住民から高い評価を得ています。また、地元教育機関と協力し、海岸クリーンアップ活動等にも積極的に参加しています。

  3. 海洋生物と海洋環境の情報が増加する。

    ガラパゴス海洋保護区では海洋環境・生物についての基礎データが不足しており、保全活動に支障をきたしています。公園局の海洋保全部、ダーウィン財団と協力してプエルト・アヨラ沿岸域の海洋環境モニタリングとイセエビ幼生の動態調査を実施しています。

    公園局技術者(カウンターパート)にモニタリング手法の技術移転を図り、将来、彼ら独自で調査項目の拡大と継続的調査が可能となるよう人材養成にも力を入れ取り組んでいます。

  4. サンタクルス島における水質モニタリングシステムが構築される。

    ガラパゴス諸島で一番人口高密度が高いプエルト・アヨラ市にプロジェクト・サイトが置かれています。ここでは住民、観光客が年々増加しており水の供給不足、生活廃水、廃棄物等の問題が出てきました。水道水は地盤の割れ目にある地下水を汲み上げ供給されていますが、我々の調査の結果、大腸菌がエクアドルの基準値を超えて存在することが明らかになりました。

    プロジェクトでは市の主要水源の定期的水質モニタリングを実施し、その現状と動向を把握し、地域住民にも結果を公表しています。住民一人一人ができる水質汚染対策を促すため、住民を対象に参加型水質モニタリングも実施しています。

  5. 伝統漁民のための持続的資源管理活動が支援される。

    ガラパゴス諸島では約1,000人の漁民が漁を糧として生活しています。公園局は海洋保護区の生態系を守りつつ漁業を継続させる方法を模索しており、プロジェクトでは漁民の主な収入源であるナマコの資源回復のための調査、参加型の漁獲調査、体験漁業ツーリズムの開発、漁協婦人グループの活動支援等を行い、ガラパゴスの海域で持続的資源管理ができるよう協力しています。

    プロジェクトの活動範囲は広く、ステークホルダーの利害関係も交差しています。そのため、環境保全分野で活動するエクアドル政府機関、国際援助機関、他国援助機関、NGO とガラパゴスで生活する地域住民、漁民、観光業者、ガイドと協力して事業を進めています。

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活動

    1. 漁業コミュニティの社会・経済データを収集する。
    2. GMRの情報をラジオ・テレビ・ニュースレターで発信する。
    3. 漁協メンバー間および漁協の対外コミュニケーションを改善する。
    4. JMPとAIMのコミュニケーション戦略を強化する。
    1. 情報交換を目的としたワークショップを住民と開催する。
    2. 主要ターゲットグループとテーマを対象とした環境教育戦略を策定する。
    3. 環境教育のためのコミュニティセンターを建設し、活動を開始する。
    4. 環境教育教材を制作する。
    5. GMRに関する環境教育を実施する。
    6. 生態系保全を目的とするクラブを設立する。
    1. 海洋保護区保全に関する調査優先項目を特定する。
    2. 海洋生物と海洋環境調査を実施する。
    3. データを蓄積し、生物学的・海洋学的データベースを構築する。
    4. 調査結果をGMRの主要関係機関に報告する。
    1. サンタクルス島の水質モニタリング方法を決定する。
    2. 水質モニタリング調査を行い、データを分析する。
    3. 水質モニタリングのためのデータベースを構築する。
    4. サンタクスル島の住民と一緒に参加型水質モニタリング調査を実施する。
    5. 地元住民のためのワークショップやセミナーを開催する。
    6. 水質モニタリングの結果を普及する。
    1. 枯渇資源回復の研究調査を行う。
    2. 参加型水産資源モニタリングを実施する。
    3. 体験型漁業を研究し、実施する。
    4. イザベラ島の女性グループの代替収入源開発活動を支援する。