プロジェクト幹部による日本視察とその成果

2019年5月15日

2019年4月15日から23日にかけて、エジプト国立図書館・公文書館、情報通信技術省、およびアレキサンドリア図書館内 視覚障害者図書館からの参加者を日本に迎えて、日本におけるDAISY(Digital Accessible Information System:アクセシブルな情報システム)の活用を紹介するプログラムを実施しました。

このプログラムの目的は、アクセシブルなマルチメディア出版技術であるDAISYをエジプトに技術移転するにあたって、DAISYが活用できる領域とそれぞれの活用事例を知ってもらい、エジプトでのマルチメディアDAISY図書活用計画と、啓発計画の策定の参考にしてもらうことにありました。

まず教育分野における活用事例として、文部科学省や大阪市教育委員会を訪問し、行政の取り組みを理解するとともに、マルチメディアDAISY教科書(以下DAISY教科書)ユーザーの方との意見交換を行いました。この意見交換会は、本プロジェクトの河村宏チーフアドバイザーがモデレータを務め、対話形式で行いました。最初に、ディスレクシア(読み書きに困難のある学習障害の一種)の当事者であり、小学校5年生からDAISY教科書を使い始め、現在大学院1年生である小澤彩果さんから、今日までのDAISY活用体験とこれからの関りについて話していただきました。併せて、小澤さんのDAISY教科書を製作し、学習障害の児童生徒にDAISY教科書の提供を続けているボランティアで構成する特定非営利活動法人NaDの濱田滋子代表と、DAISY教科書製作ボランティア団体のネットワークをコーディネートした野村美佐子 国際図書館連盟(IFLA)/特別なニーズのある人への図書館サービス委員会(LSN)議長から、日本におけるDAISY教科書の製作・提供についての解説がありました。また、このような活動において課題となった著作権法改正運動や、「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」の批准(日本は2018年10月に批准)に至る経過についても河村チーフアドバイザーが言及しました。

防災分野における活用事例としては、北海道浦河町を訪問し、国際的にも評価が高いDAISYを活用した重度精神障害者の防災訓練に取り組む浦河べてるの家や、地域の取り組み事例を学びました。浦河町滞在中には、教育委員会の主催で「エジプト政府関係者と学ぶ防災対策」と題する国際理解フォーラムが開催され、エジプトからの来訪者に浦河町内の防災の取組を紹介するプログラムが行われました。プログラムは、河村チーフアドバイザーによる「エジプトと浦河町-障害者と高齢者が参加する防災交流を絆に-」をテーマとする基調講演から始まり、浦河高校、浦河町、浦河べてるの家、東町第5自治会の発表と続きました。その後、「国際的に注目される浦河町の防災の取り組み」について国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の秋山愛子専門官が加わり、エジプトの参加者と共に活発なパネルディスカッションが行われました。さらにエジプトと日本の文化交流も行われ、参加者全員が交流を楽しむ機会となりました。

その他の分野では、公共図書館、点字図書館、国立国会図書館等の様々な図書館などを訪問し、健康情報サービスにおけるDAISYの活用や、図書館サービスにおけるDAISYの活用についての理解を深めました。

エジプトの参加者からは、「DAISYをアクセシブルな情報を提供する技術として、防災を含む様々な分野で活用したいと考えている」、「DAISY教科書に関する経験や活動が、政府ではなく個人や団体によって発展し、それを受け入れる日本の文化があったことが重要で、エジプトにおけるDAISYプロジェクトの推進において、この点にも焦点をあてたい」などのコメントがありました。今回のプログラムから得た知見を踏まえ、今後のプロジェクト活動を通して、プリントディスアビリティ(読書障害)に関する認知の向上や、DAISY技術の普及の取り組みを推進していきます。

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DAISY利用者との意見交換会の様子

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浦河町でのフォーラム

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浦河町での文化交流

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視覚障害のある人を対象とする情報文化センターなどを運営する日本ライトハウスの訪問