プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)情報アクセシビリティの改善による障害者の社会参画促進プロジェクト
(英)Project for Improvement of Inclusion of Persons with Disabilities through Improvement of Information Accessibility

対象国名

エジプト・アラブ共和国

署名日(実施合意)

2018年12月3日

プロジェクトサイト

カイロおよびアレキサンドリア

協力期間

2019年3月7日から2021年3月6日

相手国機関名

(和)情報通信省 社会的責任・サービス部(SRSD)
(英)Ministry of Communications and Information Technology, Social Responsibility and Service Department

なお、DAISY図書製作については国立図書館(NL)およびアレキサンドリア図書館(BA)が中心的な役割を果たす。

背景

(1)当該国における「障害と開発」セクターの現状と課題

エジプト・アラブ共和国(以下、「エジプト」という)は、2017年に国連障害者統計に関するワシントングループの6つの質問を採用した初の国勢調査を実施した。その結果、障害者の数は約1011万人、全人口の10.67%となっている。
エジプトでは、障害者の教育や雇用へのアクセスは非常に限られている。障害者であることから学校への入学や企業への就職を断られるケースも少なくない。UNICEFによると、エジプトには障害児が約200万人いるが、その中で教育を受けている障害児はわずか1.8%に過ぎないとUNICEFは推定している。2009年に教育省の省令によりインクルーシブ教育が義務化されて以来、エジプトではインクルーシブ教育が推進されているものの、教師が障害児に不慣れでどう対応してよいかわからないなど障害児が受ける教育の質に関しては課題が多く、実践上の大きな課題が残っている。また、障害児がドロップアウトするケースは非障害児のケースの2倍という報告もある。このような背景から、障害者が教育を受ける機会は制限されており、その結果、雇用機会も制限されているという状況がある。
このような状況を改善する方法のひとつとして、教育や社会生活を送るうえで必要な図書・文書などの印刷された情報を、障害者にとってアクセスしやすいものにすることが考えられる。視覚障害者に加え、ディスレクシアや学習障害などのある人にとって、紙に印刷された図書・文書を読むことは困難である。これらの印刷物を読むことに対する困難を示すための「プリントディサビリティ」という概念があるが、プリントディサビリティのある人が理解しやすい形式で図書・文書を提供することで、これらの人々が学習する機会や仕事に就く機会、社会参加する機会を拡大することができると考えられる。そのためのツールのひとつに、DAISY(Digital Accessible Information System=アクセシブルな情報システム)があるが、このようなICTを活用したツールは、ローマン・アルファベットを使用する言語では開発が進んでいるものの、特殊言語であるアラビア語に対応するものはほとんど開発されていない。このため、アラビア語のアクセシブルな図書の数や分野は非常に限定的である。このような背景のもと、エジプト政府は日本に対し障害者のための情報アクセシビリティを改善するための技術協力プロジェクトを要請した。日本には、アラビア語と同様に特殊言語である日本語に、DAISYを適合化してきた経験と技術があるため、本邦技術には優位性があるといえる。本事業を通してアクセシブルな図書の作成・普及に係る基盤づくりを支援することで、教育、雇用、保健、観光、防災など様々な分野で障害者の情報アクセシビリティが改善され、障害者の社会参加促進に寄与することが期待されている。

(2)当該国における「障害と開発」セクターの開発政策と本事業の位置づけ

エジプト政府は障害者の貧困を削減し、社会参加を促進することは、エジプトが持続可能な開発目標(SDGs)を達成する上で重要な課題の一つであると認識し、エジプトの開発課題戦略“Vision 2030”では、障害者を包摂する開発が目標となっている。また、包括的な障害法案が2018年に採択される予定であり、それに基づく障害国家戦略の草案の策定が予定されている。さらに、首相のイニシアチブにより2018年をエジプト障害者年としており、エジプトにおける各種障害政策推進の機運が高まっている。これまでの障害者への情報保障の取り組みとしては、2012年に情報・通信省が障害者のエンパワメントと社会参画を促進するための戦略(The Strategy of Communication and Information Technology to empower Persons with Disabilities)を策定した。また、新たに社会的責任・サービス部を設立し、障害者に対する支援を加速化させている。

(3)「障害と開発」セクターに対する我が国及びJICAの援助方針と実績

障害者支援を含む「公的サービスの拡充・改善」は、国別援助計画の3つの柱の1つである「貧困削減と生活水準の向上」に位置づけられる。
JICAはこれまで、エジプトの障害と開発セクターにおいて、技術協力プロジェクトや本邦研修、ボランティア派遣を実施してきた。技術協力プロジェクトでは、リハビリテーション分野の専門家を派遣したり、社会連帯省を実施機関とする技術協力プロジェクト「地域開発活動としての障害者支援プロジェクト(2006年~2009年)」を実施した。また、2016年と2017年には、フォローアップ協力の枠組みなどを活用し、障害平等研修(DET)ファシリテーターの養成や、ジョブコーチ紹介セミナーをカイロで実施した。

(4)他援助機関の対応

エジプトの障害と開発セクターに対する支援は複数機関により実施されている。国際機関は、UNICEFがインクルーシブ教育、ILOとUNDPが職業訓練・就労支援、国際電気通信連合(ITU)が障害者のICTアクセシビリティに関する地域イノベーションセンターの設立、EUとUNDPが義足センターの設立、世界銀行が高齢者・障害者を対象者に含む社会セーフティネットの強化プロジェクトなどを実施している。二国間援助機関は、GIZとルクセンブルグ政府が、ハンディキャップ・インターナショナル(HI)の障害セクターの活動を支援している。またカナダ政府はILOのアクセシブル・ツーリズムを支援している。国際NGOは、HIが障害の早期発見、障害者団体の設立と能力強化、地域に根差したリハビリテーション(CBR)プロジェクトなどを実施している。

目標

上位目標

DAISY図書が、教育、雇用、保健、観光、災害などの様々な分野で利用されるようになる。

プロジェクト目標

アラビア語や他の言語のDAISY 図書を製作し普及するための人的、技術的資源が整備される。

成果

成果1:DAISY図書製作者のコアグループ及びDAISY図書製作者が育成される。
成果2:DAISYの利点が広く理解されるようになる。

投入

日本側投入

1)専門家派遣
・チーフアドバイザー
・業務調整員/アドボカシー計画
・DAISY図書製作
・アドボカシー(DAISY図書を活用するプリントディサビリティ当事者)
など

2)研修
・エジプトでの現地研修:マルチメディアDAISY図書製作
・本邦研修:アドボカシー計画策定
・第三国へのスタディツアー:DAISY図書製作と普及に関する能力強化

3)資機材
・アラビア語対応DAISY図書製作ソフトウェア
・ラップトップPC
・外付けハードディスク
・マイクロフォン・ヘッドセット

4)ローカルコスト
・その他プロジェクト運営に係る経費(在外事業強化費)

相手国側投入

1)カウンターパート人員の配置
・プロジェクト・ディレクター(SRSD大臣アドバイザー)
・プロジェクト・マネージャー(SRSD教育ユニット長)
・DAISY図書製作者の総括(国立図書館およびアレキサンドリア図書館)

2)資機材等
・専門家執務スペース及び研修施設(必要な資機材を含む)
・DAISY図書製作研修に活用する図書のテキストデータ

3)活動経費
・プロジェクトに係る一般業務費・公共料金等
・エジプト国内で実施される研修参加者の交通費および日当・宿泊費