エジプト日本科学技術大学 ハムザ先生と筑波大学 渡部先生との共同による「日本文化」コースの実施

2022年2月10日

E-JUSTでは、2017年の学部開設以来、学部1年生の必修科目として「日本文化」のコースが提供されております。この「日本文化」のコースは、E-JUSTのイサム・ハムザ先生(リベラルアーツカルチャーセンター教授)と筑波大学 渡部 宏樹先生(人文科学系 国際日本研究 助教)との共同により運営されています。2021年秋学期には、E-JUSTに1000名以上の新入生が入学しましたが、急増する学生数に対応するために、様々な工夫を凝らして、「日本文化」のコースも実施されました。

コース前半においては、ハムザ先生主導のもと、複数のE-JUST教員により、日本の文化や社会を理解するための基本的な知識に関する講義が行われます。E-JUSTの「日本文化」コースでは、日本の技術・産業を支える思想、政治、経済、行政制度などが幅広く取り上げられ、学生に日本という国の総合的な理解を深めさせようとしています。特に、ハムザ先生が重視しているのは、日本人の精神性で、学生には講義で知識を一方的に吸収させるだけではなく、グループワーク課題などを通じて、講義で学んだ知識を自ら深め、また他者と一緒に学ぶことも体験させるようにしています。

コース後半は、渡部先生により、日本文化の実際的な側面に焦点を当てた講義が行われます。渡部先生の授業では、映画やニュース番組などの映像資料を豊富に利用することで、日本に行ったことがなく日本語学習を始めたばかりの学生が、全7回の講義を通して、興味を持って日本の近現代史を学ぶことが出来るように工夫されています。特に、学生が映画の鑑賞を通じて日本の文化や社会に対する理解を深めるとともに、現代の日本社会の現実と映画で表現される理想とのギャップをきちんと見極める批判的な思考を身に付けることを目指しています。

今期の授業でも、新海誠監督『君の名は。』、宮崎駿監督『風立ちぬ』、片渕須直監督『この世界の片隅で』、山田洋次監督『男はつらいよ』、高畑勲監督『平成狸合戦ぽんぽこ』、周防正行監督『Shall we ダンス?』など様々な作品の抜粋に加え、JICAと放送大学が協力して作成した『日本の近代化を知る第7章』(注1、注2)の映像教材も活用され、「3・11以降の日本」、「日本の近代化と帝国主義」、「第二次世界大戦の記憶」、「高度経済成長」、「郊外化と都市化」、「サラリーマンの生活」などのトピックのもと、時代とともに変遷する日本社会の様々な側面が議論されました。各講義では、日本の学生生活、伝統文化、日本社会の近代化・産業化、産業構造の変化、あるいは、技術者倫理などの話題がエジプト人学生の関心を引き出している様子が見られました。

このように本プロジェクトでは、「日本文化」などのコースの支援を通じて、エジプトの国立大学としては一般的でないリベラルアーツ教育の全学体制での導入を目標に掲げています。それにより、E-JUSTが創造性に富んだ教育・研究環境を提供し、エジプト国内のトップレベルの研究大学として発展するように支援しています。

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渡部先生の講義の様子1;メディアにおける表象について説明する渡部先生

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渡部先生の講義の様子2:『日本の近代化を知る第7章』の活用

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渡部先生の講義の様子3