2019年教科書使用スタート

2019年2月14日

小学校1年生から高校2年生までの教科書および練習帳が全国配布されたエルサルバドルでは、授業初日の1月21日より同教材の使用が始まっています。

初日に教材を受け取ったカバーニャス県ドローレス市のサンカルロス学校では、既に使用を開始し、教員も導入研修で作成した年間指導計画に基づいて進捗を管理しながら授業実施しており、訪問した時点で1時間も遅れることなく計画通りに授業を実施していました。一方、1月24日と3日遅れで教材を受け取った同市のラウラ・ウルキヤ学校では、遅れを取り戻すまで算数の時間を増加させた特別時間割を適用するといった対応をとり、訪問時には遅れが解消され、計画通りに進捗していました。両校とも年間160時間を達成しようという心意気が伺えました。また、今年は教科書のみならず練習帳も配布され、各ページには保護者の署名も書かれるようになり、少しずつではありますが保護者の参加も含めた学習改善に向けた1歩を踏み出しました。

配付については年度初めに正確な生徒数を把握できる統計データが存在しないため、1月時点の配布数は昨年の統計データに基づいて決められています。一部学生分の供給不足や練習帳のみ未配付といった状況にある学校もあり、完全に教材配布が終了するのは3月までかかることが想定されています。そんな中、例えば昨年も教科書が配布された中学校では、昨年配布分を回収し、完全配布されまで使用したり、不足分の練習帳はコピーで補ったりなどの工夫がみられ、教員の意識の高さや適応力の高さに驚かされています。

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カバーニャス県ドローレス市サンカルロス学校の児童と教科書。1,2年生の教科書と練習帳は書き込み式で合冊となっており、3年生以上は教科書と練習帳が分かれている。

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カバーニャス県ドローレス市サンカルロス学校の児童と教科書。1,2年生の教科書と練習帳は書き込み式で合冊となっており、3年生以上は教科書と練習帳が分かれている。

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カバーニャス県ドローレス市ラウラ・ウルキヤ学校の2年生が教科書を使用する様子。

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高校2年生は新カリキュラムへの移行期間の教材という扱いであるが、変更のない内容については既に使用している様子が確認された。

各県ファシリテーターの成長と自発的活動の開始

プロジェクトでは2018年の中学校教材への全国普及をきっかけに各県教育事務所との連携を密にし、県の特長に合わせたそれぞれの計画策定の支援に加え彼らとともに研修ファシリテーターを養成し県の体制強化も行ってきました。これまでに実施された活動の多くはこちらが提案する活動の中に各県の特長を取り入れるといった程度でしたが、今年に入り、各県独自の活動の実施が目立つようになりました。

例えば、サンサルバドル県では今年新たに配布された練習帳の使用方法や基本的な教材の使い方、昨年度課題として残った丸付けの方法などに関する確認を目的として2月6日に中学校数学教員を対象とした研修会を実施しました。研修会中は「授業が45分で終わらない事が多いのだがどうすればよいか。」といった教員からの質問に対してファシリテーターは「まず学習規律をつけること、作業のスピードについても価値づけすること、ノートに書く必要がある箇所を精選すること。」と助言するなど、2018年の自らの使用経験に基づいて対応する姿が見られ、ファシリテーターの成長が垣間見られました。

また、2月9日にはアウアチャパン県において県の研修ファシリテーターを対象とした経験共有会合が開かれました。本来は休みである土曜日の実施であり、加えて交通費も自己負担という条件でしたが、県内各地から多くの参加者が集まってくれました。参加者からは「ファシリテーターの心構えとして、謙虚にこの教材の使用を新しい学びの機会ととらえ、教材をしっかり理解し納得すること。」、今年の課題として「練習帳のチェックの仕方やテスト結果の活用の仕方などを焦点化してゆきたい。」などといった謙虚な姿勢と向上心を見せつけてくれました。今後の継続・発展に期待です。

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教材を用いた際の中学校数学の評価の仕方について説明するファシリテーター兼県教育事務所指導主事。(サンサルバドル県)

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練習帳の使い方を確認する教員の様子。(サンサルバドル県)

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グループで難しい学習内容や学校運営上の問題点等を討論する様子。(アウアチャパン県)

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ファシリテーターとしての心構えと経験を共有する様子。(アウアチャパン県)