ホンジュラスFOCALプロジェクトへの視察研修を開催しました

2018年6月1日

2018年5月28日から6月1日

集落全体のニーズを踏まえた集落開発計画(PDC:Plan Desarrollo Comunitario)の作成及び集落開発計画を踏まえた市開発計画(PEP:Plan Estratégico Participativo)の作成に向け、ホンジュラスで2006年から実施されてきた、本プロジェクトの類似案件である、FOCAL(地方開発のための自治体能力強化)プロジェクトの視察に行ってきました。日本人専門家3名、カウンターパート機関のFISDL(社会開発投資基金)社会開発部地方開発課職員4名、ISDEM(市開発機構)代表者1名、6パイロット市から代表職員それぞれ1名ずつの合計14名が、2018年5月28日から6月1日の3泊4日の日程で、FOCALのプロジェクトサイトであるホンジュラス共和国ヤマランギラ市、MANCURISJ(市連合会)、テグシガルパ市AMHON(全国市長会)事務所、カウンターパート機関であるSGDJ(内務・司法及び地方分権化省)に視察に行ってきました。

この視察研修は、プロジェクトのベースとなる考え方、手法等がプロジェクト関係者間で広く正確に理解され、生活改善アプローチに基づき、住民ニーズを踏まえた開発計画/事業の策定/実施、住民・行政間の信頼関係の強化、オーナーシップの醸成、透明性の向上、効率的・効果的な事業実施等ができるようになるために開催されました。研修1日目はFOCALプロジェクトについて学習、2日目はFOCALプロジェクトが主として集落レベルで採用する生活改善事業を積極的に展開中の集落の見学、3日目はAMHON訪問及びSGDJにおけるFOCALプロジェクト関係者との懇談及び質疑応答という構成で開催されました。本視察研修は、FOCALIIIプロジェクトの協力のもと、無事に開催することができました。

以下に、視察研修会の模様をご紹介します。

1日目:市開発計画・集落開発計画におけるFOCALプロセスを学ぶ 2018年5月28日

FOCALIIIの上條専門家より、現行プロジェクト概要と成果目標、活動内容等を共有して頂きました。なお、FOCALの全国的な活動展開を通じ、生活改善アプローチを始めとした日本が得意とする開発手法(一村一品運動、道の駅、5S Kaizen(Seiri, Seiton, Seiso, Seiketsu, Shitsuke)等)を集落レベルで応用し、住民と地方行政の協働による地方開発に有用な教訓やナレッジを導出する計画があることも紹介されました。

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FOCALIIIのプロジェクト説明を行う上條専門家

本プロジェクトの桑垣専門家が、エルサルバドルにおけるプロジェクト概要と成果目標、活動内容等をFOCALIIIの関係者に共有しました。また、FISDLにおける生活改善アプローチの説明を行い、このプロジェクトの特徴であるFISDLが行っている個人レベルからの活動がなぜ重要なのか説明しました。

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Proyecto PASOの説明を行う桑垣専門家

Ramón Torres FOCALプロジェクト技術コーディネーターより、FOCALプロジェクトが開始された背景、現在の活動目標や成果等を説明して頂きました。FOCALプロセス手法の4ステップである1)住民センサス調査、2)コミュニティ開発計画(PDC)、3)市開発計画(PDM)、4)事業実施・運営管理を具体的に解説して頂きました。

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FOCALプロセスについて説明するRamón Torres FOCALプロジェクトコーディネーター

Yamaranguila市長より、現地の開発関連アクターの連携活動に関する取り組みを説明して頂きました。Yamaranguila市においては、活動テーマごとに5つの委員会が開催され、集落がプロジェクトに参加できる基準を定め、市の開発プロジェクトが地域・住民のニーズと合致しているのか等を検討している。Yamaranguila市においては、上記基準表に基づきプロジェクト実施集落や実施機関を選定しており、組織間連携における活動において非常に参考になる内容を聞くことができました。

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Yamaranguila市におけるプロジェクト実施のための連携委員会の活動について説明するLorenzo Bejarano Rodriguez市長

2日目:FOCALプロジェクトの参加集落見学 2018年5月29日

生活改善アプローチに基づき地域資源を活用した学校建設を実施しているモデル集落を訪問しました。地域の人々はこのプロジェクトを“PROYECTO kaizen”と呼んでいます。この学校は、必要となる建築資材(砂、石材)、労働作業(住民)、工法(伝統的土壁工法)等に極力地域資源を活用することにより、自然や環境にも配慮した建築となっており、集落の代表者は、「我々の計画にはコミュニティのスピリットが入っている」と熱心に話されていました。視察研修参加者は、“PROYECTO Kaizen”にとても刺激を受け、質問や意見が多く飛び交っていました。

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学校建設プロジェクトの説明を行うSr. Salvador Arriga 前Yamaranguila副市長

Los Mangos集落は、アグリツーリズムによる新しい収入源の創出モデルの集落となっており、その背景には地域に景観が美しい山や滝があることが挙げられます。また、住民は、豊かな土壌に恵まれたコーヒー農園を有しており、生活改善の研修会を通して、自分たちが自然資源に恵まれていることを発見し、観光パッケージを作り、観光業による収入源創出を達成しています。コミュニティリーダーの女性が「PDCは我々のコミュニティ全ての人々のためのもで、男女、老人、若者、子供全てのものであり、支援比率・活動比率が平等であり、計画を実施するために99家族のために99人が研修を受講し、知識や技能を身に着け、向上させている。生活改善アプローチの効果は、人々の内面、取組姿勢、そして、コミュニティの計画も変化させた」と自信に満ち溢れた表情で話しをされていました。なお、この女性リーダーは現在市職員として採用されており、今後コミュニティと行政の理想的な協働関係の構築へ貢献することが期待されています。

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Los Mangos集落にてパティ女史による集落開発計画の経験を聞く

3日目:AMHON 訪問とSGDJにおけるFOCALプロジェクト関係者との懇談及び質疑応答 2018年5月30日

全国市長会(AMHON)の役割や活動内容の説明を聞き、市役所に対する計画策定に関する技術指導や運営管理指導に関して情報共有をして頂きました。

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AMHONにて事業概要の説明を聞く

内務・司法・地方分権化省での意見交換会では、市の代表として今回の視察研修に参加している参加者から、「FOCALプロセスが開始する以前と以後では市役所の職員の意識がどのように変化したのか」、「開発プロジェクト実施における市役所の役割は何か」、「以前は参加意識が低かった住民たちが現在のように参加意識が向上した要因は何か」などに関する質問がなされ、活発な意見交換が行われました。また、参加者一人一人から今回視察の全般を通じた所感が表示され、その意義は大変高く評価されました。

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内務・司法・地方分権化省でのDr.Ricardo Montes副大臣を交えての意見交換会

FOCALプロジェクトでは、住民センサス調査、集落計画策定、集落開発事業実施、事業モニタリング、事業評価という集落開発事業実施に必要な流れを住民と行政が協働で行うことで、互いの信頼関係が構築されるとともに、住民のやる気や自主性が引き出されました。そして、住民は、住民センサス調査によって身の回りにある地域資源を発見し、地域資源を活用した集落開発計画を策定して、自分たちでできることは自分たちの責任で活動を実施するようになりました。その上で、住民は、自分たちだけではないできないことに関しては優先順位をつけて行政に支援を要請し、行政は、集落からの要請を市開発計画に反映させて事業を実施しております。以上のプロセスを経て、ホンジェラスでは、住民と行政がそれぞれ責任を持って地域開発を進められるようになりました。

私たちのプロジェクトにおいては、生活改良普及員と生活改善グループ参加者との対話や生活改善グループの活動進捗の見守りなどを日々の活動として行っておりますが、住民と行政の協働や互いの信頼関係を築いていけるような息の長い集落開発計画策定のプロセスは今までどこの援助機関でも実施されてこなかったため、そのための手法や研修方法が確立されておりません。今回FOCALで学んだプロセスを参考に、エルサルバドル仕様の集落開発計画システムを構築するための手引書を作成し、同手引書を使って集落レベルの研修会等を今後実施していく予定です。これにより、東部地域での集落及び市レベルでのパイロット社会開発事業に本格的に取り組んでいくことになります。

【画像】内務・地方分権化省にてDr.Ricardo Montes副大臣を囲みFOCALプロジェクトのメンバーと本プロジェクトからの参加者全員での記念撮影