地方行政と住民の協働促進による社会開発モデル構築に向けて

2021年7月11日

プロジェクト対象地域である第1グループ6市に焦点を当てて、プロジェクト目標である地域社会開発モデルを構築するための試行的な取り組みを開始しました。

エルサルバドルでは、地方行政支援分野、いわゆる市役所や住民組織などのローカルアクターの能力強化を目的とした開発援助の主眼は、国際援助機関や中央省庁・地方出先機関などを通じて供与される資金による社会インフラ整備等が中心であり、付随する課題に対処する研修、OJT等を通じた技術移転や移転がその主流となっています。それらは、援助側の観点からの手法に則った支援であり、結果的には、受け入れ側であるローカルアクターの主体的取り組みを生む協力ではなく、行政や住民の能力向上には余り貢献していない点が指摘されてきました。
プロジェクトPASOでは、地方自治体の支援の下で、住民が主体的に自身の集落の開発プランづくりに参画し、作成された計画を実施しながら、モニタリング・評価を通して振り返りを行い、次の計画に反映させる一連のプロセスの手法開発に取り組んでいます。そのプロセスには、生活改善アプローチを踏まえた計画・実行・評価・改善というPDCAサイクルを運用していくわけですが、集落レベルから市レベルでのプラニング・プロセスにスケールアップさせて、そのサイクルを持続的に循環させていくための組織的、制度的な枠組みづくりや地方行政と住民の人材育成、関係機関の能力強化を実現していくことが必要となります。まさに、これが、参加型地域社会開発モデルに収斂することになります。今まで、このモデルはエルサルバドルでは実践されておりません。下図がその概念図になります。

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プロジェクトPASOでは、新型コロナウイルス感染が蔓延する前まで、集落レベルにおける開発計画(PACO)の作成に重点を置いて取り組んできました。今回、日本人専門家の現地での活動再開を契機に、PACO集落を包括して、広く市レベルで実現できる社会開発モデルを本格的に試行することにしました。
2021年5月に、第1グループの6市に対して、本活動の開始を打診したところ、チランガとトロラの2市が、興味を示し、まずは両市で試行していくことが決まりました。各市は、まずは市民会議や組織間連携会議の機能と役割について、住民らと話し合いを進めて、住民との合意と協働の下で、取り組んでいかなくてはなりません。プロジェクトでは、両市や今後興味を示すことが期待される残りの第1グループ対象市(1から2市)に対して助言や技術支援を行いながら、上記のプロセスを試行的に実践、検証して、プロジェクト期間終了までに、持続的に機能する地域社会開発モデルを構築することを目指していきます。

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チランガ市で、市長をはじめ市役所の技術チームに社会開発モデルを構築について意見交換。

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トロラ市の市長をはじめ、市役所の技術チーム、集落組織委員会メンバー、他組織の前で、プロジェクトが目指す社会開発モデルを紹介する中村専門家。