プロジェクト概要

プロジェクト名

(日)南太平洋大学 ICTキャパシティビルディングプロジェクト
(英)USP-JICA ICT for Human Development and Human Security Project

対象国名

フィジー

署名日(実施合意)

2009年10月30日

プロジェクトサイト

南太平洋大学 Japan-Pacific ICTセンター

協力期間

2010年2月1日から2013年1月31日

相手国機関名

(和)南太平洋大学

(英)The University of the South Pacific (USP)

日本側協力機関名

総務省 他

背景

南太平洋大学(The University of the South Pacific:USP)は、1969年に大洋州地域島嶼国12カ国(フィジー諸島共和国、バヌアツ共和国、ツバル、トンガ王国、トケラウ諸島、ソロモン諸島、サモア独立国、ニウエ、ナウル共和国、マーシャル諸島共和国、キリバス共和国、クック諸島)がそれぞれ資金を拠出し共同設立した域内最高水準の国際高等教育機関である。USPは、フィジー国の首都スバのキャンパスに域内各国から留学生を受け入れるとともに、加盟各国の学生に対し遠隔教育を実施している(2011年度在校生数22,592人のうち48%が遠隔教育学生)。1998年には加盟国のリモートキャンパス間を衛星通信経由で接続する遠隔教育ネットワーク(USPNet)を、オーストラリア及びニュージーランドと協調した我が国の無償資金協力によって構築され、今後も引き続きUSPがUSPNetを利用して効果的な遠隔教育を提供することが必要とされている。

大洋州地域は高等教育機関が少なく、USPのリモートキャンパスが唯一の高等教育機関である国も少なくない。域内の人々に高等教育の機会を提供し、またその質を向上させるための協力が必要とされている。USP加盟各国は、とりわけコンピュータ科学・情報システムに関する専門的技術・知識を自らの発展に不可欠なものと認識しており、また大洋州地域の社会経済開発に重要な役割を果たすICT分野の教育は必要不可欠なものとしている。

しかしながら、ICT分野の人材育成について、産業界のニーズが増加しており、よりプロフェッショナルな学士号プログラムを提供する必要性に迫られている。また、加盟各国のリモートキャンパスに対し、本校との格差を減少するために、情報通信技術(以下ICT)を利用した遠隔学生の学習支援の促進が必要とされている。一方、USPNetはネットワーク帯域が飽和状態で遠隔学生の学習に支障が生じており、パフォーマンスの向上が必要とされている。USPは、これら課題の解決を目的とした協力の実施が、フィジー国政府を通じ我が国政府に要請された。また、USPにおいて、我が国の無償資金協力により、大洋州地域における情報通信技術の中核施設となる「Japan-Pacific ICT Centre」が設立され、2010年7月にA棟およびB棟が、2012年2月に多目的講堂が正式オープンした。学生へのICT教育提供の場にとどまらず、ICTに関する付加サービスを提供するなど大洋州地域全体に裨益するICT中心施設として活用される。

こうした背景のもと、JICAは協力要請の背景、内容を確認し、先方関係機関との協議を通じて協力計画を策定するとともに、本プロジェクトの事前評価を行うために必要な情報を収集・分析することを目的に2008年10月、2009年5月、2009年10月の計3回にわたり詳細計画策定調査を実施した。その結果、新学士号コースのカリキュラム設計支援、衛星通信ネットワークを通じた加盟各国への遠隔教育提供能力向上支援、Japan-Pacific ICTセンター運用体制確立支援を目的とした支援を実施することでUSP及び先方政府機関と合意した。

目標(2011年10月28日 第4回合同調整委員会にて改訂承認)

上位目標

USPが改善されたICT環境を通じ、大洋州地域のICT人材育成に寄与する

プロジェクト目標

  • 魅力的なCS/ISプログラムが大洋州地域に提供される
  • USPのICTサービス提供キャパシティが向上する

成果

  1. 新しい国際認定レベルのBNC/BSE(注1)学士号プログラムが提供される
  2. USPNetが効率的に利用され、ITS(注2)のサービス提供が向上する
  3. 遠隔教育において新ICT技術が活用され、推進される
  4. Japan-Pacific ICTセンターの運営方針およびサービスが確立される

(注1)BNC/BSE:Bachelor of Net Centric Computing/Bachelor of Software Engineering (ネットセントリックコンピューティング学士号およびソフトウェアエンジニアリング学士号)

(注2)ITS:Information Technology Services(USPの情報システム部門)

活動

1-1.
すべての利害関係者に対し、CS/ISコースに関するベースライン調査を実施する
1-2.
BNC/BSE学士号プログラムのコースに関連したトピックにおける最新動向セミナーを開催する
1-3.
BNC/BSE学士号プログラムのカリキュラム設計にアドバイスを提供する
1-4.
BNC/BSE学士号プログラムを開講し、コースカリキュラムのレビューを実施する
1-5.
すべての利害関係者に対し、CS/ISコースに関するエンドライン調査を実施する
2-1.
リージョナルキャンパスの学生を含めた利害関係者に対し、USPNet配信に関するベースライン調査を実施する
2-2.
USPNetに関する調査を実施し、その結果に基づき必要なソリューションを実施する。また必要な機材の調達導入を実施する
2-3.
USP NOC(ネットワーク監視センター)の確立に技術的知見と包括的なアドバイスを提供する
2-4.
供与機材の活用と運用技術ノウハウの移転により、帯域利用効率を最適化する
2-5.
USPNetを活用するための中長期戦略の策定に技術的知見とアドバイスを提供する
2-6.
USPにおけるITサポートおよびITサービスを向上するためのITIL概念の導入に、技術的指導と専門的知見を提供する
2-7.
USPのIT関連スタッフに対し、ITIL認定資格につながる必要なトレーニングを実施する
2-8.
リージョナルキャンパスの学生を含めた利害関係者に対し、USPNet配信に関するエンドライン調査を実施する
3-1.
Moodle配信システムの信頼性とパフォーマンス向上に関する必要なアドバイスを提供する
3-2.
モバイル技術利用ワーキンググループに参画し、インタラクティブなモバイル学習プロジェクトに対し、技術的アドバイスを提供する
3-3.
遠隔教育教授法に関するセミナー及びトレーニングを開催する
4-1.
ICTセンター運営委員会に参加し、センターの運営と活用に関して必要なアドバイスとセンターを活用するための提案を行う
4-2.
どのようにICTを大洋州地域課題の解決に活用できるかに関して、特別なセミナーを開催する
4-3.
ICTセンターにビジネス/リサーチインキュベーション機能を付加する
4-4.
ICTセンターの大洋州地域における役割向上を支援するために、他ドナー組織および地域機関と連携する
4-5.
PacCERTの確立に必要な技術および運用にかかるアドイスを提供する

投入

日本側投入

  • 長期専門家(1名):チーフアドバイザー
  • 長期専門家(1名):業務調整員/ネットワーク
  • 短期専門家(複数名):
    1. 業務主任/ITIL/ソフトウェア工学
    2. 評価分析(教育)
    3. カリキュラムアドバイザー/モバイル技術
    4. カリキュラムアドバイザー/衛星通信システム
    5. ネットワーク工学
    6. 評価分析(IT)/ネットワーク監視
    7. インキュベーション
    8. 遠隔教育工学
    9. ICT利活用
    10. 情報セキュリティ(CERT設立)
  • 必要機材
  • 本邦長期研修/本邦短期研修/第三国研修

相手国側投入

  • カウンターパートとして、プロジェクトディレクター、プロジェクトマネージャー、プロジェクトリーダー、中核スタッフの配置、プロジェクトオフィス提供、プロジェクト運営経費、など