長い歴史をもつガーナ国でのLBT(労働集約型施工)

2016年5月31日

2016年2月にプロジェクトを開始してから、LBTおよび瀝青表面処理(アスファルト舗装の簡易版)の現状把握・分析を実施しています。そこでガーナ国とLBTの興味深い関係性が見えてきました。

そもそもLBTとは何でしょうか?LBTとはLabour-Based Technologyの略で、日本語では「労働集約型施工」や「人力施工」と呼ばれています。必ずしも「すべて人力で施工する!」という訳ではなく、通常の道路建設において機械で施工する手順を、無理のない範囲で人力に置き換えることにより、建設費全体に占める労務費比率を高めます。その効果として1)地域の雇用創出、2)複数の重機の購入が困難な小規模企業への参入機会創出、3)重機が少ない地方部での道路補修・修繕の実施が可能など、が挙げられます。他にも、地域住民の道路維持管理に対する理解促進や人件費・機械費単価によってはLBTが経済的になるなどの効果を挙げる研究者もいます。

ガーナではLBTの長い歴史があります。1987年に「National Feeder Roads Rehabilitation and Maintenance Project(NFRRMP)」が開始され、その10年間の中で約2,000キロメートルの道路がLBTにより整備されてきました。その後、徐々にLBT実施例は減衰していった時期もありましたが、2015年に道路省はLBTを再度推進することを決定し、セクター別中期開発計画である「Sector Medium-Term Development Plan(SMTDP)」等でもLBTの推進が明記されています。政府の強い後押しのもと、2015年には各州において合計約430キロメートルの道路がLBTにより整備されています。

LBTを実施するには、政府機関の政策的手法だけでなく、民間セクターの育成も欠かせません。ガーナではその体制も整っています。1996年にイースタン州の州都コフォリドゥアに、「コフォリドゥア研修センター」を設立し、民間建設会社に対してLBTのトレーニングを実施しています。現在は、60社以上の建設会社がLBT施工会社としての認定を受け、LBT事業を実施しています。よって、ガーナでは政府側・民間側共にLBTを実施する体制が構築されています。

このようにLBTに関してガーナではしっかりとした体制が整っていますが、課題があります。それはLBTでは未舗装道路(砕石道路)の整備しか実施できないことです。未舗装ですので、雨が降れば表面の土砂が流されてしまうと共に、道路下の地盤は水を含むと強度が大幅に低下してしまうため、雨が降っている中、車両が通過するとすぐにでこぼこになってしまいます。そうすると雨季のたびに補修が必要となりますが、42,000キロメートルという長い道路を管理している地方道路局(C/P)が毎年同じ道路に予算を配分することは現実的ではありません。なお、42,000キロメートルというのは、ガーナ道路公社(Ghana Highway Authority: GHA)が管理している幹線道路の約3倍の延長で、そのうち4%しか舗装道路はありません。

上記課題を解決すべく、LBTで瀝青表面処理を行える工法を開発するのが本プロジェクトの目的です。現地の知見と日本が昔実施していた瀝青表面処理の知見、そして諸外国のLBT瀝青表面処理の知見を融合して、ガーナ国にあったLBT瀝青表面処理工法の開発できるよう努めています。

(角岡正嗣/副総括・道路舗装)

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コフォリドゥア研修センター

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ガーナ国地方道路の例

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LBTによる整備(側部排水施工中)