プロジェクト概要

プロジェクト名

(日)ガーナにおける感染症サーベイランス体制強化とコレラ菌・HIV等の腸管粘膜感染防御に関する研究
(英)Surveillance and Laboratory Support for Emerging Pathogens of Public Health Importance in Ghana

対象国名

ガーナ共和国

署名日(実施合意)

2016年2月5日

プロジェクトサイト

ウエスタン州コフォルディア、グレーターアクラ州ガウエスト郡

協力期間

2016年8月7日から2021年8月6日

相手国機関名

野口記念医学研究所、ガーナ・ヘルス・サービス(GHS)

日本側研究機関名

東京大学医科学研究所、国立感染症研究所、三重大学・病院

背景

ガーナ国では2014年に西アフリカで蔓延したエボラ出血熱のような新興感染症のリスクに晒されている一方、コレラなどの感染症の流行やヒト免疫不全ウイルス(HIV)/後天性免疫不全症候群(AIDS)感染もいまだ大きな保健課題です。

現在、ガーナ国においては未知の感染症の封じ込めや、既に知られている感染症(コレラ、髄膜炎など)の流行の予防を目的とした疾病サーベイランス体制(注)の強化に取り組んでいます。当該プロジェクトでは腸内細菌叢の解析という基礎研究とリンクした疾病サーベイランスの強化体制を作出するという新たな試みを進めています。

腸内細菌叢は腸内に常在する細菌の集団のことで、数多くの種類の菌がバランスを保ちながら生息しています。このバランスは人の健康にとても重要であり、そのバランスが崩れると病気にかかりやすくなることや、逆に病気にかかることによってそのバランスが崩れることが知られています。そのため、ある病原体感染におけるこのバランスの変化の特徴を調べることで、体内への影響を明らかにできることや、未知の感染症と遭遇した際に、その病気の原因である新たな病原体を見つけることができます。

当該プロジェクトではガーナ国における疾病サーベイランス体制の強化を進めるとともに、そこで発生する感染症罹患患者から腸内細菌叢解析を並行して進め、感染症発生の原因病原体の判別や、現地での喫緊の課題であるコレラ感染症やHIV感染症の基礎的情報の収集を進め、感染症の制御を目指した以下のような課題に取り組みます。

1. 疾病サーベイランス体制の強化を進めるため、病院と疾病を管理するGHS、及び病原体を判別する野口記念医学研究所の連携の強化を図り、感染症の発生動向の把握とその制御と封じ込めのシステム作りを進めます。

2. 疾病サーベイランスによりコレラのような下痢性感染症に対し、腸内細菌叢-ゲノム(染色体)-病原体の三者相関解析に行うことでその病態の解明を進めます。また原因不明の感染症に対しては腸内細菌叢の詳細なゲノム解析を進め、その病原体の特定を試みます。

3. HIVキャリアと健常人の腸内細菌の集団を比較、解析をすることでHIV感染の病態進行とその原因を特定し、AIDS発症に至るプロセス理解とその予防につなげることが可能となります。

プロジェクトでは上記の3つの柱で次世代型感染症対策の構築を目指しています。

(注)感染症の発生状況を調査・集計することにより、感染症の蔓延と予防に役立てるシステムのことである。この集計により、広く感染症に関する研究を行っている(出典:ウィキペディア)。

目標

上位目標

ガーナ国において研究とリンクしたサーベイランスモデルが他州または公衆衛生の観点から重要な他の疾病に応用されることが期待される。

プロジェクト目標

日本側研究機関と野口記念医学研究所の共同研究及びGHSとの連携により、基礎研究連動型サーベイランスのモデルが構築される。

成果

1. 公衆衛生の観点から重要課題指定の事例サーベイランスと基礎研究が持続的に連動する仕組みが構築される。
2. 腸内細菌叢、ヒトゲノム(HLA等)、腸管感染症の病原体ゲノム解析を理解する能力が強化される。
3. ヒトゲノム、腸内細菌叢及び病原体ゲノムの三者相関関係の知識と技術が疾病サーベイランス強化に適用される。

活動

1-1 GHSのサーベイランス評価結果及び疫学会報をレビューする。
1-2 対象地域においてベースライン調査を実施する。
1-3 上記調査をもとに保健医療施設のためのサーベイランス強化研修を実施する。
1-4 疾病サーベイランス・対策ガイドラインにある優先指定疾病の検体採取及び搬送を含めたサーベイランスの支援をする。
1-5 モニタリング及びフィードバック体制の強化支援を行う。
1-6 野口研、GHS、国家リファレンス研究所間の連携体制を確立する。

2-1 ガーナ及び日本人研究者で協力して病原ゲノム解析を行う。
2-2 ガーナ及び日本人研究者で協力して次世代シークエンサーを用いた病原体解析行う。
2-3 ガーナ及び日本人研究者で協力して宿主と病原体の相互作用における生物情報を集める。

3-1 腸内病原菌に対し防御免疫反応を引き起こす病原菌及び宿主因子を解析する。
3-2 HIV感染しているガーナ人のHLA遺伝子多型を解析する。
3-3 基礎研究で得られた知識を応用してサーベイランスの支援をする。

投入

日本側投入

・専門家:チーフアドバイザー、サーベイランス、HIV、マイクロバイオーム、業務調整等
・研修員受入:本邦研修等
・機材供与:研究・活動に係る機材、車両等
・在外事業強化費(研究・研修実施経費、試薬・消耗品購入等)

相手国側投入

・カウンターパートの配置
・カウンターパート経費
・モニタリング活動経費
・プロジェクト事務所スペースの提供、事務所維持経費(水道代、電気代等)