第2回合同調整委員会会議(Joint Coordination Committee Meeting)開催

2019年5月3日

2019年5月3日、Ghana Health Service(GHS)の関係各部署、JICA関係者の他、看護師助産師協会、日本大使館などから27名の参加を得て、第2回合同調整委員会会議(JCC会議)をアクラで実施しました。2018年10月の第1回会議の記事にもあるように、合同調整委員会は、プロジェクトの意思決定機関で、JCC会議は、プロジェクトの全ての関係者が集まり、これまでの活動を報告し今後の活動の承認を得る大切な会議です(「第1回合同調整委員会会議開催」記事参照)。

今回の会議では、2018年4月にプロジェクトを開始してから約1年間の母子手帳全国展開の達成状況、全国10州のモニタリング・スーパービジョンから得た優良事例と課題を共有し、それを踏まえた2019年度の活動計画と、プロジェクト終了後を見据えた持続性の担保について話し合いました。

会議冒頭、プロジェクトディレクターであるGHS総裁アンソニー・ンシア・アサレ氏は、母子手帳の導入がガーナ国の母子保健政策の方向性に深く影響を及ぼしており、この政策的方向性の維持・強化のためには、日本からの継続的支援が欠かせないと述べました。さらに、今後の課題として母子手帳の持続性の確保を挙げ、健康保険や地方政府、民間企業等の国内財源を模索していくことを強調するとともに、将来の母子手帳のデジタル化に向けた期待を述べました。
それを受けて、JICAガーナ事務所星弘文所長は、母子手帳全国展開の円滑な実施へのGHSの尽力及び、国際会議やシエラレオーネとのスタディツアー等、母子手帳活用の知識・経験を他国と共有するための積極的な活動に謝意を述べた上で、今後は母子手帳の調達、配布、改訂にかかる管理運用規定の策定等、持続性の確保に向けた活動にも注力する必要性があることを強調しました。

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会議の様子

1年間の成果と課題・今後の活動に向けた提言

冒頭挨拶に続き、プロジェクトマネージャーである家族保健局局長パトリック・アボアジェ氏が、プロジェクト開始後約1年間の進捗と成果について説明しました。母子手帳プロジェクトには、1)母子手帳の全国普及、2)アシャンティ州の重点郡における母子手帳有効活用、3)母子手帳の制度化、と大きく3つの活動の柱があります。1)の母子手帳全国展開の活動について、プロジェクトは開始後1年間で総計869名の母子手帳研修講師を国・州・郡レベルに育成しました。また、JICAでは約44万冊の母子手帳を印刷し、ガーナ政府や国際機関の支援も含めると全体で113万冊の母子手帳を全国に配布するとともに、ユーザーガイドや研修指導者ガイドなど、研修補助教材も作成・配布しました。(ガーナの年間出生数は約100万人)それに続き、全国10州の州保健局、郡保健局及び95か所の保健施設に出向き、第1回モニタリング・スーパービジョンを実施しました。2)の活動については、アシャンティ州の関係者を集め、重点介入郡選出及び母子保健・栄養にかかる問題・原因を分析し、アクションプランを検討するワークショップを開催しました。また、活動効果を測定するためのベースライン・エンドライン調査及び現状調査の計画書を作成しました。3)母子手帳の制度化については、2年目以降の本格始動に向け、母子手帳の管理運用規程の策定についてGHSマネジメント層の頭作りを行ってきました。

このように、1年間の活動予定を大幅に上回ってプロジェクト活動が広がった一方、モニタリング・スーパービジョンを経て、課題も明確になりました。家族保健局局長の発表に続き、モニタリング・スーパービジョンを実施したメンバーを代表し家族保健局母子保健課のビビアン・オフォリ-ダンクワ氏が、施設への母子手帳配布数の絶対的不足(もしくは配布の遅れ)から、多くの施設が初回妊婦健診受診者にしか母子手帳を渡していない、州・郡・保健施設の各レベルにおいて母子手帳やその他の関係物品の在庫管理がずさんであり、配布数と受け取り数が合致しない、保健医療施設、特に州病院をはじめとする比較的規模の大きな病院において、妊産婦ケアにおいて重要な役割を担う助産師等が研修を受けられていない、栄養カウンセリングやCoCカードなどが多くの施設で適切に活用されていない等の課題を、モニタリングから得た具体的な数値に基づいて示しました。その上で、今後の活動に反映すべく、印刷財源の確保のための健康保険公社、地方政府、開発パートナー、民間企業等に向けたアドボカシー活動、母子手帳の管理運用規定の策定、母子手帳をはじめとする物品管理の強化支援、助産師などの主要職種のスタッフのさらなる能力強化の機会の提供等について提言を行いました。

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アシャンティ州重点郡での活動のベースライン・現状調査

アシャンティ州重点郡(もともと7郡を予定していたが、郡の分割により現在11郡)では、1)保健医療従事者向けの母子手帳基礎研修、2)母子手帳をさらに有効に活用するための栄養クリニックとリスペクトフル・ケア(注)研修、2)モニタリング・スーパービジョン、4)コミュニティの行動変容のための啓発活動が予定されています。活動の開始に先立ち、活動の効果を測るためのベースライン・エンドライン調査及び、現状調査を計画しています。家族保健局栄養課課長エシ・アモアフル氏が調査の計画及びデザインについて発表しました。2019年6~7月に、重点郡においてベースラインのデータ収集が行われる予定です。

(注)妊娠・出産・子育て期の女性と子ども及びその家族を尊重し、彼らを主体とした、安全で質の高いケア

2019年度のプロジェクト活動計画案

モニタリング・スーパービジョンの結果に基づく提言を反映する形で、栄養課課長アモアフル氏及び本プロジェクトの萩原チーフアドバイザーが、1)母子手帳の全国普及、2)アシャンティ州の重点郡における母子手帳有効活用、3)母子手帳の制度化と持続性の確保の3分野における2019年の活動計画案を発表しました。1)の活動としては、CoCカードの使い方や身長体重測定、栄養カウンセリングのやりかたなどを丁寧に解説した映像教材の作成と、これらの映像教材とユーザーガイドなどをしたEラーニングシステム(インターネットを使った学習システム)の開発の検討、州病院や教育病院をはじめとする主要な病院での研修や助産師・看護師育成学校での講師向け研修の実施、2)のアシャンティ重点郡での活動としては、重点郡すべての保健医療従事者研修、栄養クリニックとリスペクトフル・ケアの教材作成と研修実施、コミュニティ啓発活動、3)の母子手帳の制度化については、母子手帳の管理運用規程作成にかかる関係者を集めたワークショップの開催及びタスクチームにおける各規定の作成、地方自治体や民間企業への説明会の開催などが、今後1年間の主な活動として挙げられ、参加者の合意を得ることができました。

母子手帳の持続性の確保

3)の制度化と持続性の確保については、GHSアサレ総裁及びJICAガーナ事務所星所長からも会議冒頭で言及があり、モニタリング・スーパービジョンチームからも管理運用規程の策定が提言されるなど、今回のJCC会議全体においてその重要性が強調されました。会議終盤、母子保健課課長イザベラ・サゴエ・モーゼス氏が、管理運用規程作成の道筋と、母子手帳調達の諸基準・手順、物品管理規定、モニタリングシステム等、規定文書に想定される諸項目を発表しました。

プロジェクトは2019年度、全国10州での母子手帳全国展開活動を継続するとともに、アシャンティ重点郡での活動、持続性の確保のための管理運用規定の策定を進めていくこととなります。今回のJCCを通し、GHS家族保健局母子保健課、栄養課、アシャンティ州保健局、看護師助産師協会をはじめとする多くの関係者と理解をそろえることができ、今年度の活動の順調な滑り出しに向けて弾みをつけることができました。