アシャンティ州11郡の保健医療従事者研修開始

2019年11月30日

2019年10月9日、アシャンティ州南西部の、アマンシエウエスト郡マンソンクワンタにおいて、アシャンティ州11郡を対象とした保健医療従事者研修を開始しました。本研修では、9月末に実施した郡講師育成研修で育成された郡講師が、州講師やJICA専門家の支援を得ながら、郡内の保健医療施設で働いている保健医療従事者に向けて、母子手帳、栄養カウンセリングサービス、リスペクトフルケアの研修を実施しています。(プロジェクトニュース「栄養カウンセリングサービス・リスペクトフルケア(NCSRC)教材確認ワークショップと郡講師育成研修実施」参照) 今後、アシャンティ州11郡では1000名程度の保健医療従事者に研修を実施する予定です。

研修の様子

本研修は、半日の病院実習を含む3日間の日程で、母子手帳の正確な記録および活用方法、身長・体重計測方法、成長曲線への記録と解釈の仕方、カウンセリング方法、栄養カウンセリングサービスおよびリスペクトフルケア(NCSRC)の実践方法等について学びます。NCSRCは、Ghana Health Service(GHS)が全国に導入したいと考えているサービスで、全国に先立ちアシャンティ州11郡で試行する計画です。NCSRCを通し、母親、子ども一人ひとりの健康状態や食生活や家計、衛生状況、入手できる食材など、個別の事情を丁寧に聞き出して、実現可能な解決策を保健医療従事者と母親が一緒に探します。その際、母親が心を開いて相談ができるように、個として尊重する態度で話し合いを行うことが重要です。

この研修では、保健医療従事者が栄養カウンセリングサービスを提供できるようになるよう、母子保健にかかる基礎栄養、カウンセリング手法、栄養カウンセリングサービスの概要と手法を段階的に学んでいきます。基礎栄養に関する講義では、母乳栄養に関するグループディスカッション、食品郡を確認し離乳食の食材を選ぶフードデモンストレーション、離乳食の月齢別の与え方を確認するカードゲーム等、様々なアクティビティを通して、基本事項を確認していきます。カウンセリング手法については、講師たちが行うロールプレイを通し、非言語コミュニケーション手法、質問の投げかけ方、傾聴、共感といった聞き取り手法や、妊婦さん、お母さんが実践していることを認めたうえで、ともに実施可能な方法を探していく助言方法等の支援手法を学びます。さらに、栄養カウンセリングサービスの手法として、3A(1.Assessment(評価)→2.Analysis(分析)→3.Action(実行))ステップと症例別手順表を一つずつ確認します。母子手帳に含まれている栄養カウンセリング記録は、この3Aステップをもとに記載することとなるため、教室や病院実習において、何度も記録練習を行います。

リスペクトフルケアは、基本的な理論を復習したのちに、1)妊婦健診に来た妊婦と助産師、2)子どもの発達を心配しているお母さんと地域看護師といったシナリオを使用し、リスペクトフルケアを踏まえてどのように関わることが望ましいか、研修参加者がロールプレイを行います。そして、このロールプレイを観た他の研修参加者が、良かった点、改善点を挙げます。ロールプレイを客観的に観るからこそ気が付ける点も多く、「子どもがしっかり成長していることをお母さんにうまく伝えられていた。」 「一方的に情報を提供するのではなく、もっと、妊婦さんの声に耳を傾けたほうが良い。」等、毎回多くのコメントが挙がります。

このように本研修は、講義だけではなく、実習や参加型アクティビティに多くの時間を割いています。既存の母子手帳研修に含まれる、Body Mass Index(BMI)計算や月齢計算、成長曲線への記入を含む、母子手帳の記録にかかる練習問題や、身長および体重の測定練習、そして半日の病院実習と合わせ、多様な参加型のアクティビティを取り入れることで、研修参加者が限られた研修期間中に技術を習得するための実践的なプログラムになっています。

【画像】食品群について説明する郡講師

【画像】月齢別の離乳食の進め方を確認するカードゲーム

【画像】リスペクトフルケアのロールプレイ

母子保健サービスを担うチームの一員として

ガーナでは様々な職種が、母子保健サービスに携わっています。コミュニティレベルの地域保健を担うCommunity-based Health Planning and Service(CHPS)では、地域看護師が母子保健サービス全般を担う一方、病院や保健センターにおいては、助産師が、妊婦健診、分娩介助、産後ケアにかかわり、地域看護師が乳幼児健診を担っています。また、栄養士は、助産師や地域看護師が適切な栄養関連サービスを提供できるよう支援しています。

本研修では、保健医療施設で働く、助産師、栄養士、地域看護師、准看護師等、異なる職種の保健医療従事者が、一緒に参加しています。その中で、研修講師からだけでなく、研修員同士が互いに学びあうことも期待しています。例えば、研修3日目の病院実習では、助産師、地域看護師、栄養士等、敢えて異なる職種の参加者を一つのグループにして、母子手帳の記録、計測、栄養カウンセリングの実習を行っています。こうすることで、助産師が地域看護師に、妊婦健診結果の記録方法を教え、栄養士が助産師に栄養カウンセリング過程を説明するといった姿を確認することができます。

研修を通じて研修参加者は、妊娠期・分娩期・産褥期・乳幼児期においてどのようなサービスが提供され、母子手帳に記録されているかを再認識し、母子保健サービス全体を見渡すことができます。さらに、母子保健に携わる他職種と時間を共有するなかで、チームとして母子継続ケアを担っているという意識を高めていきます。

【画像】グループで母子手帳の記録練習を行う研修参加者

【画像】病院実習で、妊婦に母子手帳を説明する研修員と見守る研修講師

これから

現在、毎週3郡で研修を同時開催しており、年明けまでに、計30研修を1000名程度の保健医療従事者が研修を修了する予定です。研修終了後には、モニタリング・スーパービジョンが始まります。研修で得た知識や技術が、実際のサービスの中で有効に活用されているか、丁寧に現場指導を励まし、助言を行う予定です。実践的な能力の強化に向け、更に、活動を進めていきます。