全16州において、母子手帳活用状況に関する第2回全国モニタリング・スーパービジョンの完了

2021年10月23日

2021年2月~10月、ガーナ国内全16州、48郡、146医療施設において、母子手帳の活用に関する第2回全国モニタリング・スーパービジョン(M&S)を実施し、10月22日に完了しました。

プロジェクトでは2018年、母子手帳活用の指導者として州講師と郡講師を養成する研修を実施しました。(「全国10州に母子手帳州講師と郡講師を養成」参照)この州講師、郡講師は、さらに郡内の保健医療従事者に研修を実施し、母子手帳が効果的に使われるようになるよう支援していくことが期待されています。2019年に第1回M&Sを実施し、2020年に第2回M&Sを実施する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により延期し、2021年2月漸く再開することが出来ました。

今回も、JICA専門家、ナショナルファシリテーター、州講師、郡講師が1つのチームとなり、1チームが1週間に1州ずつのペースでM&Sを実施しました。今回は、新型コロナウイルス感染症拡大禍であったことから、感染状況を見極めながらの実施となりました。また、隣国ブルキナファソの治安悪化の影響を受け、北部5州の移動においては安全対策の強化も必要となり、安全状況を確認しながらM&Sを実施していきました。その為、最終的に8か月という時間をかけて、全16州の州保健局、48郡の郡保健局、そしてそれぞれの郡において郡病院、保健センター、CHPS(注)等、規模の異なる保健医療施設を各郡3カ所ずつ、計146施設を訪問しました。

(注)CHPS:Community-based Health Planning and Services。基本的保健医療サービス。ガーナ国においては、人口5、000人に対して1つCHPS提供施設が設置され、地域保健師が、妊婦健診・乳幼児健診・予防接種・健康教育・住民参加促進・上位施設への紹介/搬送などの基礎的保健サービスを提供しています。

州保健局、郡保健局では、質問票を用い、母子手帳や身長計等必要物品の配布状況及び研修実施状況、さらに新型コロナウイルス感染症拡大による母子保健サービス受診への影響などを確認しました。保健医療施設では、質問票による物品・研修実施状況確認のほか、実際の妊婦健診や乳幼児健診を観察し、母子手帳の記録状況、カウンセリング技術、小児身長計測等の知識・技術を確認し、不足している技術や知識については、その場で直接、技術指導も行いました。また、妊婦、母親からも聞き取り調査を行い、カウンセリング等のサービス受診状況を確認しました。

母子手帳の活用については、全国146カ所すべての訪問先医療施設で、母子手帳が活用されていました。そして8割以上の母子手帳に出生日、出生時の体重が記録されていました。GHSは、母子手帳の全国展開と共に、妊婦のボディマス指数(BMI)や妊娠期適正体重増加量の計算、子どもの身長計測、妊婦・子どもの栄養カウンセリング等新しいサービスを導入しました。2019年の第1回全国M&Sの際は、子ども用の身長計を設置している保健医療施設は半分程度しかありませんでしたが、第2回では、8割以上の保健医療施設が身長計を設置し、7割近くで子どもの身長計測が良好に行われていました。また、9割以上の妊婦、母親が、栄養カウンセリングで指導された内容を覚えており、7割以上の施設でプライバシーへの配慮がなされていたことことから、栄養カウンセリングやリスペクトフルケアが定着してきていることが伺えました。

一方、課題も見つかりました。栄養カウンセリングは実施しているものの、母子手帳内の栄養カウンセリング表への適切な記入は、1-2割ととても限られていました。集中的な研修や継続的なM&S、現場追加指導を実施してきたアシャンティ州の重点郡では記入率が9割近くまで向上していることから、保健医療従事者の技術の定着には、継続的なフォローアップが非常に重要であることが示唆されます。

こうした課題対し、ガーナ南東部のボルタ州では、保健医療従事者が、記入した栄養カウンセリング表をSNS経由で州・郡の利用しチームに提出すると、チームが内容を確認し改善点等をフィードバックすることで、保健医療従事者の記録技術の定着を目指しているという良例が見つかりました。このような自発的な取り組みは、M&Sメンバーの大きな励みになりました。

プロジェクト実施期間を通じて、全国M&Sは16州、73郡、241施設にて実施しました。M&Sを丁寧に全国で実施することにより、母子手帳が全国でどのように活用されているかを正確に把握することができました。得られたデータから、母子手帳を活用した質の高い母子保健・栄養サービスが全国で提供されるようになり、出生日や身体計測に基づいた母親の尊厳を重視したカウンセリングやリスペクトフルケアも提供されるようになったことを確認することができました。

今後は、このM&Sをガーナのカウンターパートが引き継いでいくこととなります。既に、モニタリング用のチェックリストは、母子手帳研修を支援する他のパートナーにも共有されています。プロジェクト終了後も継続的なM&Sが実施され、全国の保健医療従事者の技術が少しずつ向上していくことを期待しています。

【画像】

身長計測技術の確認

【画像】

カウンセリング技術の確認