コミュニティをベースとした母子保健・栄養改善への取り組み:カニジャ市24時間診療センターの例

2018年8月15日

プロジェクトで栄養改善を担当している千原正子専門家が、カニジャ市の24時間診療センターを訪問し、同センターに勤務する准看護師らと懇談しました。今回は、訪問時に得られた情報をもとに、プロジェクトのパイロット活動が展開されている地域の保健の現状と保健医療従事者の取り組みをニュースとしてお知らせしたいと思います。

カニジャ市は、キチェ県内に位置し、グアテマラの首都から車で5時間のところにある人口約9千人が住む町です。同市において、2018年1月から7月までに登録された2歳未満の慢性栄養不良児の内訳をみると、軽度140児、重度64児でした。また、2歳以上5歳未満の場合は、軽度148児、重度71児でした。2018年8月には、1件の急性栄養不良ケースが発生しています。24時間診療センターでは、同年に起こった農産物収量の低下に伴う食糧不足が、乳児の栄養不良に影響しているのではないかと推測すると同時に、妊産婦の健康と栄養に関する知識の向上と行動変容を促進することが重要だと考えています。この過程では、コミュニティ組織やリーダーたちの協力も重要となってきます。
同市で慢性栄養不良児の件数が多い地区の1つとして、サフキム・アルト(Sajquim Alto)があります。市の保健センター(CAP)から車で35分に加えて、徒歩20分のところに無人の保健医療施設が設置されています。住民はキチェ語だけを話し、公用語を理解しない人も多く、保健情報の啓発には困難が伴います。しかし、同地区では、コミュニティ開発委員会(COCODE)の形成がなされ、伝統的産婆(Comadrona)や市長補佐(Alcalde Auxiliar)の協力もあります。
24時間診療センターのスタッフは、こうした地域組織や住民リーダーとの連携を通じて、母子における栄養課題への取り組みを強化したいと考えています。その取り組みの1つとして、このコミュニティを定期的に訪れ、住民リーダーらの協力を通じ地域の妊婦に集まってもらい、妊婦健診や栄養に関する講話会を実施したり、担当の伝統的産婆さんへの妊娠経過の引き継ぎを行っています。コミュニティを訪問しているスタッフからは「プロジェクトの栄養改善研修に参加をしました。それまで知らなかったことをたくさん学び、正しい身体測定方法や栄養摂取の方法などを再確認することができました。学んだことをコミュニティの住民にいち早く伝えていきたい」という声が聞かれ、士気が高まっています。
妊婦への啓発は時間のかかる取り組みです。リプロダクティブ・ヘルス/ライツの視点から、妊娠や出産に関する決定は、妊婦個人が有する大切な権利です。しかし、妊婦である女性が妊娠に関する正しい保健知識を有していなければ、命の危険にさらされる、あるいは、胎児や乳児の栄養不良を誘発しかねません。プロジェクトでは、医療従事者への技術指導に加え、カニジャ市での取り組み例のように、家族やコミュニティの協力を通じ、妊婦の保健医療サービスへのアクセス拡大と啓発活動を強化していきたいと思います。

【画像】

栄養強化補完食“チスピータ”の説明をする准看護師

【画像】

正看護師から伝統的産婆への申し送り