地域住民とともにピューマやケツァールが暮らす森の保全に取り組む

2016年7月11日

2016年1月からホンジュラスで「ラ・ウニオン生物回廊プロジェクト」を開始しました。
エル・パライソ県のユスカラン市、グイノペ市、オロポリ市にまたがるラ・ウニオン生物回廊を対象に、生物多様性の保全と自然資源の持続的な利用のモデルの確立を目的とした5年間の技術協力プロジェクトです。
「生物回廊」という言葉にはあまり耳馴染みがないかもしれません。一般的に希少な生態系が残るエリアは国立公園や自然保護区等に指定し、法的に開発を制限することによって森林や野生動植物の保全が図られます。しかし、地理的に分断された保護区だけが保全されていても生物多様性を維持するには十分ではありません。閉じた保護区内では(主に陸生動物の)個体群同士の交流(繁殖活動)が限られてしまい、遺伝子の多様性を維持できないからです。このため、森や草原、河川等を回廊状に保全することで保護区と保護区との間の連続性を確保し、野生動物が隣の保護区まで行き来できるようにする、これが「生物回廊」の概念です。
一方で、生物回廊として指定される地域は保護区を含むその周辺地域であり、その多くは民有地のため、地域住民の生活や農業等が営まれています。強制的に住民を退去させたり、森林伐採や農業を禁止することは現実的でないため、「生物回廊」の機能を確立・維持するためには、そこに暮らす地域住民の理解と、経済活動との両立が不可欠なのです。この考え方は人々の営みによって地域の自然資源を適切に維持してきた日本の里山((注)SATOYAMA)に通じるものであり、日本の経験や技術を活かすことが可能です。
プロジェクトでは今後、環境省、3市、NGO、地域住民や関係機関とともに、自然資源の保全と持続的な利用のための活動を進めていきます。農業用水の安定供給のための水源林保全、環境保全型農業技術の導入、森林を維持した日陰コーヒー栽培、エコツーリズム等、地域の自然環境を最大限に維持・活用しつつ、人々の生計向上との両立が可能な活動に取り組む計画です。
また、このような活動は環境保全だけでなく、農業、水管理、観光等様々なセクターにまたがるため、関係機関の調整を図り、ルールや計画づくりを行うための生物回廊委員会を国レベル、および地域レベルの双方に設置し、支援していく予定です。
ラ・ウニオン生物回廊は、環境省がホンジュラス全土に計画した10の生物回廊の一部を成します。プロジェクトはまだ始まったばかりですが、将来的には他の生物回廊にも適用可能な「ラ・ウニオンモデル」を確立できるよう、地域住民、関係機関とともに歩んでいきます。

【画像】

カウンターパートである環境省(MiAmbiente)生物多様性局(DiBio)のメンバー。ホンジュラス国内における海域から湿地、森林にいたるまでの生物多様性保全政策を担っています。

【画像】

パイロットコミュニティ候補の一つ、オロポリ市のチャグイテ・グランデで、住民組織の代表と意見交換。