プロジェクト活動

1.事業概要

(1)事業目的(協力プログラムにおける位置づけを含む)

本事業は、西ジャワ州(4県2市)において、園芸作物(野菜・果樹)生産者と近代的流通市場を直接結び付ける生産流通モデル(注1)の開発・実証と園芸作物生産流通に関与する行政機関関係者の行政運営能力向上を支援することにより、対象地域における農家所得向上につながる高品質で安全な園芸作物の生産流通システムの近代化(注2)を図り、西ジャワ州における同システム近代化の進展に寄与するものである。

(注1)農家グループの参加により、近代的流通市場のニーズ調査と商談、生産技術改善、計画的生産、農家組織力強化、洗浄・パッキング施設と輸送手段の確保及び金融アクセスの改善までを網羅する生産地から近代的市場まで統合化されたサプライチェーン実証モデル。
(注2)生産流通モデルの普及促進とSTA機能改善や流通関係者を含めた協議会設置等の行政支援強化を組み合わせた近代的流通市場を対象とした園芸作物生産流通基盤の強化。

(2)プロジェクトサイト/対象地域名(注3)

ジャカルタ特別州(961万人)、西ジャワ州(チアンジュール県(217万人)、ガルット県(240万人)、ボゴール市(95万人)、スカブミ市(30万人)、バンドン県(318万人)、西バンドン県(151万人))

(注3)プロジェクトサイトは稼働状況が良好かつ地方政府のサポートが期待できるSTAの存在、市場へのアクセス、高品質園芸作物生産のポテンシャル(気温・雨量・高度等)を勘案し選定。

(3)本事業の受益者(ターゲットグループ)

直接受益者

プロジェクトサイトで園芸農業に携わる農家グループ 約500戸
農業省加工流通総局国内市場局行政官15名
州・県政府の農業局(DINAS)行政官25名、農業普及員24名

最終受益者

西ジャワ州で園芸農業に携わる生産者及び近代的流通市場関係者

(4)事業スケジュール(協力期間)

2016年2月29日から2020年2月10日

(5)総事業費(日本側)

5.0億円

(6)相手国側実施機関

農業省加工流通総局国内市場局、西ジャワ州農業局、チアンジュール県農業局、ガルット県農業局、ボゴール市農業局、スカブミ市農業局

インドネシアでは地方分権化により、州・県政府の行政権が独立しているため、農業省を実施機関の中核とし、農家への支援を直接行う県政府と県政府の調整を行う州政府農業局を共同実施機関としてPMU(Project Management Unit)を形成し、プロジェクトを実施する。

(7)投入(インプット)

1)日本側投入

・専門家派遣100M/M程度(チーフアドバイザー/農産物流通、農業技術/普及、農業金融、研修計画/業務調整等)
・研修員受入(農協システム、市場情報システム、市場運営、ブランド化等)
・機材供与(車両、研修機材、農産品質検査用機材)
・在外事業強化費

2)相手国側投入

・カウンターパート(Project Director, Project Coordinator, Project Manager, Operational Manager, District Level Contact Points)
・ローカルコスト負担

(8)環境社会配慮・貧困削減・社会開発

1)環境に対する影響/用地取得・住民移転

(1)カテゴリ分類(A,B,Cを記載):C
(2)カテゴリ分類の根拠
本事業は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず、環境への望ましくない影響は最小限であると判断されるためカテゴリCに該当する。

2)ジェンダー平等推進・平和構築・貧困削減

収穫後処理や加工、販売、さらに、流通プロセスにおける消費者としての女性の役割は大きい。本プロジェクトの実証事業は農民グループを窓口に実施するが、その対象はグループメンバーである世帯主に限定される傾向があるため、女性が、男性と同様に研修などを受けられるような配慮を行う必要がある。

3)その他

(9)関連する援助活動

1)我が国の援助活動

特になし。

2)他ドナー等の援助活動

2013年6月に終了したUSAIDのAGRIBUSINESS MARKET AND SUPPORT ACTIVITY(AMARTAII)で活用されたローカルコンサルタント及び大学人材は生産と流通技術改善の高いノウハウを有し、農家と近代的流通市場を結び付ける活動を独自に行っているため、本事業での再委託等による技術リソースとしての活用が期待される。

2.協力の枠組み

(1)協力概要

1)上位目標

西ジャワ州において、農家所得の向上につながる高品質で安全な園芸作物の生産流通システム近代化が進展する。

指標

(1)西ジャワ州において近代的流通市場へ園芸作物を販売する農家の数
(2)西ジャワ州の農家平均所得

2)プロジェクト目標

対象地域において、農家所得の向上につながる高品質で安全な園芸作物の生産流通システム近代化が進展する。

指標

(1)対象地域において近代的流通市場へ園芸作物を販売する農家の数
(2)対象農家の平均所得

3)成果

成果1:高品質で安全な園芸作物の市場と農家をつなげる生産流通モデルが開発され、実証される。
成果2:園芸作物の生産流通システム近代化に関与する行政機関関係者の行政運営能力が向上する。

4)活動

1-1 近代的流通市場(スーパーマーケット、CVS、外食産業、食品加工業)における高品質で安全な園芸作物のニーズ調査を行う。
1-2 高品質で安全な園芸作物を生産できる可能性のある農家グループの候補を特定し、ベースライン調査を行う。
1-3 近代的流通市場と1-2で特定された農家グループを直接かつ長期的に結び付ける生産流通モデル実証事業案を立案する。
1-4 農業資材調達(新品種の導入を含む)、生産・収穫方法、集荷・収穫後処理(STAの利用を含む)、金融アクセス、輸送、販売等の改善を含む実証事業を実施する。
1-5 事業の進捗のモニタリング及び評価を行う。
1-6 以上を継続的に実施する仕組みをつくる。

2-1 高品質で安全な農産物生産流通に係る国内外のグッドプラクティス情報を収集する。
2-2 カウンターパート及び農家グループのための高品質で安全な農産物生産流通に係る先進事例研修(農協システム、市場情報システム、市場運営、産品ブランド化、地産地消等を含む)を実施する。
2-3 研修参加者がSTAの運営改善案を含む生産流通システム近代化のアクションプランを策定する。
2-4 PMUが生産者、市場関係者、政府関係者の対話と情報交換を強化するための協議会を定期的に開催する。
2-5 プロジェクトの教訓を政策に反映させるための提言を行う。

3.前提条件・外部条件

(1)前提条件:特になし。

(2)外部条件(リスクコントロール)

・農業政策に大きな変化が起きない。
・大規模な気象災害(干ばつ・洪水等)が起きない。
・大規模な人事異動での、知識の流失が起こらない。

4.評価結果

本事業は、インドネシア国の開発政策、開発ニーズ、日本の援助政策と十分に合致しており、また計画の適切性が認められることから、実施の意義は高い。

5.過去の類似案件の教訓と本事業への活用

(1)類似案件の評価結果

「インドネシア国卸売市場整備を通じた流通システム改善」(2011年2月~2012年1月)では、STAの良好な運営管理のためには、責任機関である県政府の役割が重要であること、流通システムの改善のみならず、STAを通じて消費地での消費動向・嗜好性を捉えた、農民による生産品質向上を促すことの重要性が提言されている。

「ネパール国農産物市場開発計画」(2000年3月~2001年5月)では、農産物を円滑に流通させるためには、1)輸送機能、2)売買機能、3)保管機能、4)加工機能、5)情報発信機能の確立が不可欠であり、これらを確立させるために、行政、流通業者及び生産者がどのような機能を果たしているかを把握・検証し、問題点を明らかにすることが重要としている。

(2)本事業への教訓

プロジェクト設計に際しては、インドネシアの地方分権化を踏まえ、地方政府の主体的な参画に留意した上で、輸送、売買、保管、加工、情報発信の各機能を備えた流通システムの改善と生産品質の両面の向上を図る。

6.今後の評価計画

(1)今後の評価に用いる主な指標

2.(1)のとおり。

(2)今後の評価計画

事業開始後3か月 ベースライン調査
事業終了後3年目 事後評価

(3)実施中モニタリング計画

事業開始後 各年度に一度開催するJCCにおける相手国実施機関との合同レビュー
事業終了時 終了前JCCにおける相手国実施機関との合同レビュー

7.広報計画

(1)当該案件の広報上の特徴(アピールポイント)

1)相手国にとっての特徴

近年の経済発展に伴う安全で高品質な青果品ニーズの伸展に応えると同時に小規模な園芸農家への裨益向上につながる青果品供給体制の確立が期待される。

2)日本にとっての特徴

我が国が有する高い農業生産/流通技術を活用し、インドネシアに進出する我が国の食品関連企業にとって高品質で安全な青果品を安定的に供給できる流通網を構築する。

(2)広報計画

プロジェクト開始時に日本国内およびインドネシア国内の日系食品関連企業(スーパー、CVS、レストラン、食品加工)に対する青果品調達要望に係るプレスリリースの実施。

実施中の成果発表セミナーの開催。