プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ジャカルタ地盤沈下対策プロジェクト
(英)Project for Promoting Countermeasures against Land Subsidence in Jakarta

対象国名

インドネシア共和国

署名日(実施合意)

2017年7月24日

プロジェクトサイト

ジャカルタ特別州

協力期間

2018年5月10日から2022年11月30日

相手国機関名

公共事業・国民住宅省 水資源総局
(1)実施機関:公共事業・国民住宅省(PU)水資源総局
(2)主要関係機関:PU調査開発庁、エネルギー鉱物資源省 地質調査庁、ジャカルタ特別州政府(DKI Jakarta)
(3)その他関係機関:国家開発企画庁(BAPPENAS)、PU人間居住総局、PU地域インフラ開発局、環境・森林省 流域管理・森林保護局、DKI Jakarta開発計画局、DKI Jakarta水資源局、DKI Jakarta工業・エネルギー局、DKI Jakarta水道公社等

背景

ジャカルタはインドネシア共和国の首都として人口約1,017万人(インドネシア政府統計2015年)を抱え、政治・経済の中心地として急速な発展を遂げている。一方、地下水の過剰揚水を一因として、ジャカルタ北部では2000年以降最大2m以上の地盤沈下が発生している。その結果、都市面積の6割以上が海抜ゼロメートル以下の低地に位置することとなり、都市機能の脆弱性を高めている。既に、満潮時には一部の地域で海水が侵入する等の被害が表面化しており、降雨時の浸水被害や洪水時の湛水被害も拡大するなど、住民への影響が出始めている。また、不等沈下等による地上インフラ(建物、橋梁など)および地下インフラ(水道管、下水道管、ガス管など)に与えうる影響も懸念されており、ジャカルタが首都として将来にわたり持続的に発展していく上で、地盤沈下は喫緊に対応すべき課題である。また、気候変動の影響により降雨の極端化や海面上昇が予測されており、地盤沈下によって引き起こされる災害のリスクを増大させることが懸念されている。「仙台防災枠組」で強調されている「事前の防災投資」の観点からも、地盤沈下を緩和するための対策を急ぐ必要がある。

ジャカルタでは水需要が高まっているが、水道水の原水として利用されている表流水(チリウン川、チサダネ川等)の水源量が不足している。表流水も含めた水源開発計画は多数存在するものの、それら計画の実施は遅滞しており、水道普及率は約62%(出典:PAM JAYA 2015年)に留まっている。そのため地下水を水源として利用する事業者が多く、地下水の過剰揚水が地盤沈下を引き起こす要因となっている。ジャカルタでは1998年より井戸の登録制度や地下水税課税などの対策が取られているものの、地下水に代わる水源が存在しない地域では井戸建設を許可せざるを得ず、設置井戸数や揚水量の上限が規定されていない。加えて、許可量を超えて揚水した事業者に対しては追徴課税が行われているものの、地下水揚水量削減には至っておらず、地盤沈下の抑止効果は見られていない。

沈下を止めるためには規制強化する必要があるが、そのためには地下水に代わる水源確保が必要である。しかし、短期間に多量の代替水源を確保することは難しく、効率的な揚水規制と代替水源の確保に向けて、地盤沈下に最も影響を与えている粘土層や、地下水揚水規制の対象とする帯水層、対象エリア、井戸など地盤沈下対策として必要な情報を取り纏める必要がある。さらに、関係機関が多岐に亘っており、相互の情報共有や、整合性の取れた包括的対策を推進する体制ができていない。地盤沈下対策は、モニタリングのみならず、地下水揚水規制、代替水源の確保、適応策の推進など多くの施策を必要とする。これらを1つのアクションプランの下で、関係機関が協調して施策推進する体制を構築するためには、地盤沈下のリスクと対策に要するコスト(適応策・緩和策含む)を導き出し、ステークホルダーが地盤沈下対策を進めるための意識改革を行う必要がある。

インドネシア国家長期開発計画(RPJPN2005-2025では、「表流水及び地下水の統合的なシステムの構築と実施の促進と地下水の持続可能な利用」を水資源インフラ整備の方向性として定めており、かつ、国家中期開発計画(RP2015-2019)において、安全な水へのアクセス率100%達成を政府目標として掲げている。本案件で取り扱う地盤沈下対策の推進は、適切な地下水利用と表流水の水源確保を含め上水道の普及率向上につながり、安全な水へのアクセス確保に寄与し、国家長期開発計画で掲げた目標達成に向けて重要である。また、インドネシア政府は、高潮対策の海岸防潮堤の強化、内水対策の為の排水機場整備、湾岸の再開発等を目的とした国家首都統合沿岸開発(National Capital Integrated Coastal Development, 以下、NCICD)を計画し、既存防潮堤の嵩上げについては既に第1期工事(フェーズA)が実施されている。しかし、第2期工事(フェーズB)(沖合巨大堤防)の実施は地盤沈下抑止状況により判断するとされ、2030年まで見送られる予定である。地盤沈下対策の効果程度が第2期工事(フェーズB)の実施条件とされたことで、本件の政策上の重要性は極めて高い。

目標

上位目標

地盤沈下対策委員会によりアクションプランの実施を通して、ジャカルタの地盤沈下対策が進み、地盤沈下が抑制される。

プロジェクト目標

ジャカルタ特別州において、地盤沈下対策を推進するための体制が整備され、地盤沈下対策のためのアクションプランを策定することにより、インドネシア側実施機関の人材育成に寄与する。

成果

1.地盤沈下および地下水に関するデータ収集、分析及びデータ管理体制の確立と地盤沈下と地下水揚水の現況把握とそれらの関係性、将来状況の分析がなされる。
2.地盤沈下を抑止するための緩和策の検討と有効性が高い対策が試行される。
3.地盤沈下の被害およびリスクの調査及び適応策の検討がなされる。
4.ステークホルダー間において地盤沈下の原因、リスク、緩和策および適応策に対する理解が促進され、地盤沈下対策に対する意識改革が行われる。
5.地盤沈下対策を検討する委員会が設置され、ジャカルタにおける地盤沈下対策のアクションプランが策定される。

調査項目

地盤沈下および地下水の現状把握
地盤沈下および地下水のモニタリング体制及びデータ管理体制
観測井戸施設の建設とモニタリングの実施及びデータ管理
地下水揚水量削減対策・地下水涵養量増加対策の検討
地下水の代替水源の開発と上水道サービスの普及(ジャカルタ水道公社の組織強化含む)に関する検討
地下水揚水規制策の検討
地盤沈下が関連する水害等リスクの把握
地盤沈下に対する適応策の検討
地盤沈下による社会的費用(市場経済において内部化されていない社会全体あるいは第三者が被る損失)の算出
地盤沈下対策を実施した場合としない場合のジャカルタへの影響評価
地盤沈下対策を推進するためのアクションプラン作成
アクションプラン内の優先事業の抽出、試行
啓発活動の実施
地盤沈下対策推進体制の検討、確立

投入

日本側投入

コンサルタント派遣
研修員受入れ(本邦研修、第三国研修)
機材調達・再委託調査等(地下水位および地盤沈下観測井の設置、ボアホールカメラ調達、地盤沈下影響調査、井戸登録調査、衛星データ解析等)

相手国側投入

カウンターパートの配置
プロジェクト事務所スペースと設備の提供
プロジェクト活動に必要な情報やデータの提供
インドネシア側投入人材の活動費・事務・運用経費
観測井設置用地の提供