中部スラウェシ地震被災地で復興セミナーを開催-東松島市・釜石市の職員から復興経験を共有-

2019年3月15日

2019年2月11日及び2月12日

JICAは、インドネシア国国家開発企画庁(BAPPENAS)を中心としたインドネシア政府(中央及び地方)とともに、2018年9月にインドネシア国中部スラウェシ州で発生した地震及び津波の復興支援を行っています。インドネシアの復興に取り組む行政官らを対象に、2月11日(於:インドネシア中部スラウェシ州パル市)及び12日(於:ジャカルタ)の2日間、東日本大震災からの復興に取り組む東北の自治体より、岩手県釜石市総務企画部オープンシティ推進室石井室長、同市復興推進本部事務局(兼)総合政策課金野係長、宮城県東松島市復興政策課復興政策班兼SDGs未来都市推進室川口主任を招いて復興経験共有セミナーを開催しました。

金野係長、川口主任からは災害に強いまちづくりや被災者の暮らしの回復には、復興まちづくり計画や生業のグループ形成が必要であり、特に計画づくりにおいては自治体と住民の方々との間での数次に渡る話し合いの機会を設け、合意形成していくことが重要である点が強調されました。これはいわば「急がば回れ」の発想で、住民の方々の理解が得られるよう粘り強く尽力することで、後戻りのない、実行可能な計画づくりと円滑な復興事業の実施につながるとのことです。
釜石市では集団移転計画を含めた地域の土地利用計画等の合意形成を目的に、復興まちづくり協議会を開催し、地域住民と延べ168回もの話し合いを持ったことが共有されると、参加者からは驚きの声が上がりました。
加えて、安全・安心なまちづくりのためには、防潮堤などのハード面での施設のみならず、住民の避難計画などソフト面を含めた、総合的な対策が重要である点が共有されました。

石井室長からは、多様な人々の主体的な参画による復興、自治体だからこそできる復興の総合的なコーディネーション、若者の発想を活かした復興の取り組みなど、中長期的な復興の視点から、釜石市の具体的な取り組みを紹介し、参加者は時にうなずきながら、熱心に説明を伺っていました。
パル市でのセミナー途中では停電が発生し、プレゼンテーション資料が投影できなくなり、暗い会場の中でお話いただくハプニングもありました。
しかし、震災復興に継続的に取り組まれている日本の自治体の皆様は慌てることもなく、プレゼンテーション資料なしでも丁寧な説明を継続し、インドネシアの参加者は、熱心に耳を傾け続けました。

参加者からは、多くの質問やコメント(より良い復興のために必要な、若者の知恵を活用した復興、移転計画に関する合意形成の方法、収入源を失ったことに加え避難生活でストレスがたまっている被災者への迅速な生業回復活動の必要性、NPOの活用、等)が寄せられ、日本の自治体の皆様との間で、活発な意見交換が行われました。
州の公共事業局長からの閉会挨拶では、日本からのセミナー参加への謝辞に続き、「インドネシアと日本の間で考え方や文化などの違いはあるが、釜石市と東松島市からの経験共有にもあった通り、復興の着実な前進には、自治体と住民が協議を重ね、合意形成することが非常に重要であると考える」と強調され、パル市でのセミナーは終了しました。

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住民による共助の重要性を話す東松島市川口主任

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移転計画の説明会では述べ186回の説明会を実施したと説明する岩手県釜石市金野係長

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多様な人々の主体的な参画が復興に欠かせないと説明する釜石市石井室長

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液状化による土砂災害現場に掲げられていた「(わたしたちは)立ち上がる!」と書かれた看板

【画像】セミナー後、インドネシア語で「(復興のため)立ち上がろう」とこぶしをあげる参加者たち