プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)食糧自給のための小麦生産性改善プロジェクト
(英)Wheat Productivity Improvement Project for Food Self-Sufficiency

対象国名

イラク

分野課題

農業開発・農村開発−農業開発

プロジェクトサイト

クルド自治政府農業水資源省(所在地:Erbil-Kirukuk Road, Erbil, Republic of Iraq)

協力期間

2011年8月25日から2015年2月25日

相手国機関名

(和)クルド自治政府農業・水資源省
(英)Ministry of Agriculture and Water Resources, Kurdistan Regional Government

背景

イラクは、国土の大部分が年間降水量250ミリメートル以下の砂漠気候に属するが、近隣諸国と比べると水資源に恵まれており、農業セクターはGDPの約10%(2010年推定)を生産し、労働人口の約22%が従事するなど、石油・ガス部門につぐ重要産業である。しかし、農業生産基盤の老朽化、灌漑農地での塩類集積、農業技術・知識の不足などにより、農業の生産性は低位に留まっており、食料輸入への依存、国家経済の石油への依存を高めている。
こうしたことから、2010年に公表された「イラク国家開発計画(2010〜2014年)」では、農業セクターのビジョンとして、食料安全保障のための国内生産の振興、農業生産額の増加による農村部の貧困削減と石油依存からの経済多様化を掲げている。特に、2007年〜2009年にかけて旱魃の影響により平年の50%にまで収量が落ち込んだ小麦については、優先作物として、2014年を目標とする生産計画を示し、生産性向上や投資の促進等を図っていくとしている。
イラク北部に位置するクルド自治区(エルビル県、ドホーク県、スレイマニア県)は、イラク国内でも400ミリメートル〜1200ミリメートルと年間降水量が多いことから潜在的な農業生産性は高く、イラク全体の食料自給のためには、クルド地域の生産性向上は重要である。しかし前政権による弾圧と農村破壊、近年の旱魃などの影響でクルド地域の農業生産は減退し、クルド地域においても食料自給に向けた農業の復興が命題となっている。現状、クルド地域の小麦栽培面積の大半を占める天水農業に関しては、播種時と収穫時の作業以外は殆ど手をかけない粗放的生産が行われている。また、天水小麦は天候により生産性が大きく左右されるので、農家は栽培への投資を控える傾向にある。このような状況下で最大の課題である水資源の利用・供給のほか、優良品種の導入や栽培管理技術の向上により、クルド地域の小麦の生産性を改善していくことが求められている。
JICAは、円借款「灌漑セクターローン」(2008年1月L/A調印)で、ポンプ、建設機材等の調達の支援を行うが、これらを活用するための広範な知識や技術が伴っている必要がある。これまでも、農業分野だけで約1000人に及ぶ研修員受入を通じて、イラクの農業セクターの開発に実績を残していることから、イラク国政府は、標記プロジェクトをJICAに対して要請した。

目標

上位目標

イラクの食糧供給安定に向けてクルド地域の小麦の生産性が向上する。

プロジェクト目標

農業普及員がクルド地域の栽培条件に適した小麦の品種選定、栽培技術、水管理技術を習得する。

成果

1.クルド地域の小麦栽培に係る基礎データが収集され、小麦の栽培適地図が作成される。
2.クルド地域に適した小麦の適正品種が選定され、その種子生産技術が取り入れられる。
3.病害虫管理や施肥など小麦栽培管理の新技術が提示され、そのクルド地域への適合性が圃場試験により検証される。
4.小麦栽培の水管理に関する新技術が提示され、そのクルド地域への適合性が圃場試験により検証される。
5.農家への普及を目指し、クルド地域において改良技術に関する農業普及員への研修が実施される。

活動

1-1
クルド地域の小麦栽培に係る基礎データ収集と流通実態把握を含むベースライン調査を実施し、ベースライン調査報告書を作成する。
1-2
土地の適正区分を行い、小麦の栽培適地図(補助灌漑、天水)を作成する。
1-3
エンドライン調査を実施し、エンドライン調査報告書を作成する。
2-1
改良品種(高収量、耐乾性、耐病性など)の選定・増殖のため、品種選定、種子生産技術の研修を実施する。
2-2
農業試験場において改良品種のクルド地域への適応化試験を実施する。
2-3
農業普及員による圃場での実証と農家への展示活動を支援する。
2-4
品種選定と種子生産技術に関するガイドラインを作成する。
3-1
病害虫管理、施肥、輪作、不耕起栽培、収穫/収穫後処理を含む小麦栽培技術にかかる研修を実施する。
3-2
農業試験場において新たな小麦栽培技術のクルド地域への適応化試験を実施する。
3-3
クルド地域における小麦栽培管理技術ガイドラインを作成する。
4-1
新たな水管理技術として、補助灌漑およびウォーター・ハーベスティングにかかる研修を実施する。
4-2
農業試験場においてクルド地域に適した小麦補助灌漑技術を導入するための適応化試験を実施する。
4-3
クルド地域における小麦の補助灌漑技術ガイドラインを作成する。
5-1
既存の普及活動・教材のレビューを行う。
5-2
試験圃場に改良技術の展示圃を設置する。
5-3
成果2から4の進捗を踏まえて、普及員向けの技術教材を作成する。
5-4
クルド地域において普及員と農業水資源省の職員を対象とした現地研修を実施する。
5-5
イラクの他地域にも適応可能な技術については、移転を図る。

投入

日本側投入

1.専門家派遣
(注)本件は、乾燥地途上国の小麦栽培技術の研究と普及の支援に高い知見と実績がある国際乾燥地農業研究センター(ICARDA)に研修員受入と専門家派遣の多くを委託して行うことを想定。
・長期専門家: 1名 業務調整/研修監理(1名41M/M)(他案件の調整員が兼務)
・短期専門家: 本邦 土地適正区分(1名4M/M)
ICARDA 品種選定/種子技術(2名3M/M)、小麦栽培(病害虫管理1名1.5M/M、施肥1名0.75M/M、
生産技術1名1.5M/M)、水管理(1名1.5M/M)、社会経済分析(1名1M/M)
2.機材供与
・PC、プリンタ、コピー機等、執務に必要な基礎機材
・圃場試験、デモンストレーション圃場、実験に必要な機材
3.研修員受入
・第三国研修(ICARDA)
4.在外事業強化費
・技術ガイドライン作成、普及教材作成、研修実施に必要な経費等

相手国側投入

1.カウンターパート及びサポートスタッフ
・プロジェクト・ディレクター
・プロジェクト・マネジャー(エルビル農業研究局ディレクター)
・農業試験場の研究員
・サポートスタッフ
2.プロジェクト事務所
・机、椅子、インターネット接続などの基礎的な事務環境
3.プロジェクト業務のための活動費
・イラク国側関係者の国内旅費
・圃場での試験・展示やその他の試験など、プロジェクト活動に必要な基礎的な資機材