地方分権下でカウンティが直面している能力ギャップ及び課題

2016年7月19日

現在、本プロジェクトでは、ケニアの地方分権下でカウンティ(分権後の行政単位)が直面している能力ギャップと課題について調査を実施し、その結果に基づいて、今までは様々な研修機関がばらばらに提供していた研修のカリキュラムの改訂と標準化を進めています。今回は、カウンティ保健局での調査で明らかになった保健システムマネジメントにおける課題をいくつかご紹介します。

リーダーシップ、行政マネジメント

カウンティ保健局が保健サービスを提供するには、カウンティの他の政府機関、中央政府やドナーとも関わりながら行う必要があります。そのため、それら関係機関との調整機構とそのための能力は必須ですが、これまで中央集権的な仕組みでやってきたカウンティにはそのような経験もなく、能力はまだ十分ではありません。また、各カウンティが策定する保健戦略に沿って保健指標の向上を達成するためには、しっかりしたリーダーシップや管理能力、汚職や縁故主義への対策も求められていますが、これらも今後改善すべき課題となっています。

財務管理

カウンティで実施している保健サービスの強化や施設整備の中には、政治的な背景より実施されるものもあり、実際の現場のニーズに即していないものも見受けられます。カウンティ保健局は、本来のニーズに基づいた年間活動計画とそのための資金確保・予算配分ができるよう、予算計画書やプロポーザルの作成等の実務的な能力に基づく、カウンティ議会や知事との折衝能力などを強化する必要があります。さらに、年度単位の資金管理能力の向上も急務となっています。

人的資源管理

まず、看護師や専門医などの人員不足が大きな問題となっています。この不足を解消するため、人事管理ガイドラインの整備などを通した戦略的な人事管理の必要性や、カウンティ間での専門医の共有制度の構築などが望まれています。また、職員の業績評価や昇給・昇進と連携した能力開発ニーズの把握、サポーティブスーパービジョンと呼ばれる巡回指導などによる職員の知識と技術の継続的な向上への取り組みと、それによる職員の定着率の向上も必要とされています。

物品の調達・供給・管理

カウンティ保健局は、分権後、カウンティ自らによる医薬品、医療機器、車両などの適切な調達・供給・管理を目指していますが、需供予測、在庫管理や維持管理などの能力の不足により、医薬品の不足、医療機器や救急車の頻繁な故障などが問題としてあり、この分野での能力向上も喫緊の課題として挙げられています。

このような調査結果を踏まえ、中央政府の保健省では、カウンティ保健局、研修実施機関、その他の関連機関や他ドナーと協働し、カウンティ保健局のマネジメント層の職員を対象とした一般研修と、経理や調達、人事などの担当者を対象とした専門分野研修の2種類の研修のカリキュラムの改訂と標準化を進めており、本プロジェクトはこれを全面的に支援してきました。今後は、これらの標準カリキュラムに基づいて、統一のとれた研修体系をくみ上げていく予定です。

【画像】

保健省、カウンティ保健局、研修実施機関が出席した会議の様子