ケニアの保健セクターにおける相互学習の促進

2016年9月9日

「相互学習」担当団員:髙木加代子

私たちのプロジェクトには4つのコンポーネントがありますが、そのうちの1つは「相互学習」の強化です。これは、カウンティの保健局が自らの経験から教訓や優良事例を見出し、また、カウンティ同士でそれらを共有することを通して、保健省やドナーなどの外部からの支援を待たずとも、自らよりよい保健行政運営を目指すことができるようになることを目指しています。様々な環境の違うカウンティに分権化された保健行政の向上において、現場の経験に裏付けられた実務的教訓を蓄積し共有することは非常に重要だと考えています。今回は、プロジェクトが支援してその第一歩を踏み出した、「ベスト・プラクティス」の最新状況をご紹介します。

まずは現場での実際の現状を知るべく、プロジェクトの2つのパートナーカウンティの保健局で聴き取りを行いました。そこから、優良事例が共有されることは時々あるが、必ずしも仕組みとして意識的に行われているわけではなく、また、せっかくの優良事例も活用されているとは言えないことがわかりました。一方で、保健省は様々な優良事例を全国レベルで毎年収集していることを知りました。これらのことから、この保健省の既存のシステムを強化することを手始めとして、相互学習の強化を進めていくこととしました。また、中央での優良事例の収集と報告書の作成・配布を強化していけば、カウンティの枠を越えた学びにも将来的に貢献するとの期待もありました。

保健省は毎年、保健セクターの年間実績報告書(Annual Performance Review Report: APR)を作成し、期初に設定した指標を用いて1年間の成果を振り返ります。このAPRの中に、ベスト・プラクティスと呼ぶ優良事例を紹介する項目があります。しかし、優良事例を集めてはいても、どんな事例を優良とするのかの基準が曖昧で、紹介されている事例は玉石混交の状態でした。

この状態を改善するためにプロジェクトは、ベスト・プラクティスを選ぶプロセスの標準化を支援しました。保健省のカウンターパートとともにベスト・プラクティス選定委員会を立ち上げ、選定基準の整理と明文化、事例収集のための報告様式の改善、採点表の作成、そして、カテゴリー別の賞の設定などを支援しました。このような仕組みづくりの作業にはカウンティ保健局の代表者にも加わってもらい、保健省とカウンティの共同作業となるように配慮しました。

この新しいベスト・プラクティスの収集・選定の仕組み基づいて、実際の選定プロセスを支援し、先日、無事に受賞ベスト・プラクティスの選定が終了しました。優秀賞は、ケニアの強みである携帯電話ネットワークと技術を活かしたモバイル医薬品管理や、レファラル病院における外傷救急病床の確保とそのための人材ローテーションの改善に関わるものでした。

この支援を通して、現場レベルでは、共有に値する様々な取り組みが行われていることが確認され、改めて相互学習の重要性を知る機会となりました。プロジェクトは、次のステップとして、優良事例の効果的共有方法の確立と、現場での優良事例の活用促進に取り組んでいく計画です。

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カウンティでの優良事例(携帯電話を使った医薬品管理)について、エンブカウンティ保健次官たちから説明を聞いているプロジェクトのカウンターパート