「指標マニュアル」改訂業務に対する支援

2016年10月25日

プロジェクトや政策の目標の達成度を測るためには、なるべく定量的に計測できる具体的な指標を設定することが重要です。たとえば、成人病対策の施策であれば、「BMI25以上の肥満者の人口比を50%から30%に削減する」などがあげられます。余談ですが、ケニアの保健5ヵ年計画(2014-2018)では、肥満者の人口比を2012年の50%から2017年には35%に削減するという目標値が示されていますが、これはかなりチャレンジングな目標だと思われます。

ケニアの保健5ヵ年計画(2014-2018)は、今中間レビューの時期を迎えています。この5ヵ年計画の中でも、OCCADEPのプロジェクトの目標である「カウンティ保健局のマネジメント能力の向上」は重要課題の一つとなっていますが、残念ながら、それをどのように測るのか、明確な定義はなされていません。中央の保健省は現在、このような定義がはっきりしないものも含めて、様々な保健関連の指標の定義を示す「指標マニュアル」の第2版を策定中です。

指標マニュアルの改訂作業は全体的に遅れ気味ですが、OCCADEPでは、2015年11月からこの改訂作業を支援してきました。キックオフミーティングの開催、分野別に指標の定義の策定作業を行う5つの分科会の設置、各分科会の作業結果をまとめる全体ワークショップの開催などを、保健省のモニタリング・評価ユニット(M&Eユニット)とともに進めてきました。特に、5つの分科会の中でOCCADEPの目指す「カウンティ保健局のマネジメント能力の向上」に関連する指標を含む分科会にはメンバーとして参加し、OCCADEPのプロジェクト・モニタリングにも活用できる指標も含めて、改訂・定義策定の作業を支援してきました。

マネジメント能力といっても、その内容は多岐にわたります。その中でも特に難しかったのが、「機能しているカウンティ保健マネジメントチーム」の定義です。カウンティ保健マネジメントチーム(CHMT)は、カウンティ保健局の各分野の中堅マネージャー以上がチームを形成してカウンティ保健局のマネジメントの全体を司ることが期待されているものです。しかしその実態は、メンバー構成、人数、責任範囲、運営の仕方などがカウンティごとにまちまちで、必ずしも定型というものがありません。CHMTがないカウンティもあります。また、分権後はカウンティ保健局をどのように組織・運営するかはカウンティ政府に任されているため、中央政府としても標準的なCHMTの形というものを打ち出せないのが現状です。そのため、特定の指標でCHMTの機能を測ることは無理ではないかという議論にもなりました。最終的に、ワーキンググループの結論としては、「CHMTが最低1ヶ月に一度、会議を行い、記録を残している」という定義になりました。これは、ケニアの保健セクターでは委員会のような組織の機能については「必要な会議の開催(+議事録を取っている)」で測っていることが背景にあります。しかし、カウンティの保健セクターの行政のマネジメント能力の向上を図る本プロジェクトで、こうしたマネジメント能力を真に測る指標とは何かという議論と作業を並行して行っており、CHMTではなくカウンティ保健局(CDOH)のマネジメント能力を測るための指標の特定を行っています。

なお、指標マニュアルの改訂作業は、分科会での各指標の精査と全体会議での調整作業を経て、2016年末までをめどに終了し、2017年には新しいマニュアルが発行できる見込みです。

これからのOCCADEPの活動としては、指標マニュアルの最終化の支援と共に、指標マニュアルとの整合性を維持しつつ、上述したとおり、プロジェクトの活動によって向上した「カウンティ保健局の能力」を測るための指標を特定し、2つのパートナーカウンティとその他の45のカウンティの保健局を対象にモニタリングのためのデータ収集を始めます。またOCCADEPでは、「マネジメント能力が向上したカウンティは保健指標も改善する」という仮説が成り立つと期待しており、この仮説を検証するための分析も行っていく予定です。

2017年3月に予定されているプロジェクトの中間レビューに向けて、カウンターパートと連携してデータの収集と分析に力を入れ、OCCADEPの成果を具体的な数字で示したいと考えています。

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今ケニアは乾期の終わり近くで、ジャカランダやブーゲンビリアなど、たくさんの花が咲いています。