全ての関係者を巻き込んだ標準研修実施体制の構築に向けた取り組み

2016年12月14日

ケニアの保健分野では、保健人材の能力強化のために、数多くの研修がケニア政府や開発パートナー、研修機関やNGOなどによって実施されています。しかし、研修内容や受講者の選定手順などについて、このような関係者の間での調整が十分でないため、研修内容や受講者が重複することが多くあり、研修費用の非効率につながっているとともに、不必要な研修への参加によって業務時間が奪われ、本来の保健サービスの提供にも影響しかねない状況となっています。

このような課題に対処すべく保健省は、保健分野の研修に関わる全ての関係者を巻き込んだ統一的な研修実施体制の構築に向けて、「コモン・ストラテジー」と呼ぶ共通研修戦略を策定しています。本プロジェクトはこれを全面的に支援してきました。コモン・ストラテジーは、1)標準研修実施手順、2)保健システムマネジメント研修カリキュラムの標準化、3)臨床分野における保健人材育成計画、4)研修モニタリング・評価、の4つの分野で構成されています。下記に各分野の内容をご紹介します。

1)標準研修実施手順
研修の計画策定から評価・レビューに至る研修手順のガイドラインが示されています。具体的には、研修ニーズの把握、研修計画の策定、研修受講者の選定、研修実施の承認、研修後の報告、評価とそれに基づく研修内容の改訂、研修修了者の再配置までの手順と各関係者の役割が明記されています。

2013年以降の地方分権化後も、研修を含む人材育成機能は中央政府(保健省)に残されています。これは、統一的な研修の実施と中央集中的な研修実施による実施の効率化を目指したものです。しかし、これを実現するためには、各カウンティでの研修ニーズに基づく合理的な研修計画がタイムリーに保健省に提出され、保健省がこれらを集約して国としての年間の研修計画を立てる必要があります。このコモン・ストラテジーによる標準研修実施手順の明確化により、カウンティと保健省の間の役割分担が明確になり、効果的・効率的な研修が実現されることが期待されています。

2)保健システムマネジメント研修カリキュラムの標準化
今までは様々な研修機関がばらばらに研修を行っていましたが、カウンティ保健人材の研修ニーズと既存カリキュラムに関する調査を実施し、その結果に基づいた研修カリキュラムの標準化を進めています。関係機関との協働の結果、カウンティ保健局の管理職を対象としたパッケージ研修と、経理、調達や人事などの個々の業務を担当する職員を対象とした専門分野別研修の2種類の研修のカリキュラムが作成されました。

今後は、各研修機関がこの標準研修カリキュラムを必須内容として各研修コースをデザインすることで、どの研修を受けても受講者が必要最低限の内容を学ぶことができるようになることを目指しています。

3)臨床分野における保健人材育成計画
研修ニーズ調査の結果、全てのカウンティにおいて、専門医や看護師、検査技師などの保健人材の数が圧倒的に不足していることが明らかになりました。この人材不足を補うための研修・専門教育を強化するための計画を取りまとめています。

4)研修モニタリング・評価
上記のマネジメント分野と臨床分野の研修の実施をモニタリング・評価するための仕組みを明らかにしています。研修実施におけるモニタリング・評価の目的、手法、収集するデータや情報などについて定義し、モニタリング評価のフレームワークを構築しました。

今後はコモン・ストラテジーを関係者に普及し、統一のとれた研修体制による効果的な実施管理をとおして、現場のニーズに基づいた研修が必要な人材に公平に提供されることを実現し、研修予算の有効活用とカウンティの保健人材の能力強化を図っていきます。

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研修カリキュラムの標準化に関する会議の様子