ケニアの保健セクターにおける相互学習の促進

2017年1月24日

本プロジェクトニュースの2016年9月9日の記事で紹介しましたように、本プロジェクトでは、優良事例を共有するための「ベスト・プラクティス」制度の確立を支援し、相互学習の促進に取り組んでいます。そして、新しく確立された制度における初めてのベスト・プラクティスの選定行い、8つのベスト・プラクティスが選定され、2016年9月に開催された保健セクター政府間調整フォーラム(Health Sector Intergovernmental Consultative Forum、IGF)の中で表彰されました(写真参照)。

表彰に至るまでのベスト・プラクティスの選定における支援では、選定基準や表彰カテゴリーの設定、ベスト・プラクティスの候補事例の報告様式の改善、選定のためのスコアリング・シートの作成、選定手順の標準化などを行いました。そして、この新しい制度に基づく1回目のベスト・プラクティスの選定後、全体をレビューし、ベスト・プラクティス制度のガイドラインを作成しました。これからの2015-16年度のベスト・プラクティスの選考は、このガイドラインに則って進められると期待されます。

これで、ベスト・プラクティスという制度による、全国レベルの相互学習の一つの形はおおよそ完成したかと思います。次のステップとして、本プロジェクトでは、より現場に根差したカウンティ間の相互学習を強化していく予定です。その一つとして、カウンティ間の相互訪問を通した経験の共有が可能ではないかと考えています。そのパイロットとして、パートナー・カウンティであるキリニャガ・カウンティによる隣接するエンブ・カウンティへの訪問を2016年12月に実施しました。エンブ・カウンティは、2014-15年度のベスト・プラクティスにおいて、ワッツアップ(WhatsApp)という携帯電話のコミュニケーションアプリを利用した医薬品在庫管理の導入で、全体の第2位を受賞しました。具体的には、ワッツアップでカウンティ保健局の薬剤師、医療施設所属の薬剤師などで構成するグループを立ち上げ、ある施設で医薬品が欠品した際に、その責任者がワッツアップを通してグループメンバーに連絡を入れ、在庫に余裕のある他の施設から医薬品を回してもらい、施設単位ではなく、カウンティ全体で医薬品の在庫を最適化することを目的としています。キリニャガ・カウンティからは、カウンティ薬剤師が視察に参加し、相互に情報を共有するための仕組みを学び、学習訪問に参加したキリニャガ・カウンティのカウンティ薬剤師は、エンブ関係者の話に熱心に耳を傾けていました(写真参照)。

この学習訪問は、近隣のカウンティ間であれば比較的容易に実現できる可能性はあるものの、遠方のカウンティの間での訪問・受け入れは、準備や費用の点からも、必ずしも容易ではないでしょう。今後プロジェクトでは、パートナー・カウンティにおける、ベスト・プラクティス制度のカウンティレベルでの実施体制の強化を後押しするとともに、遠方のカウンティとも、プロジェクトで重点としている、「年間活動計画(Annual Work Plan、AWP)」や「中期支出枠組み(Mid-Term Expenditure Framework、MTEF)」などの計画やモニタリング・評価などを中心に、より簡易で効果的にお互いの知見を共有するための仕組みを構築できるよう取り組みを続けていく予定です。また、ベスト・プラクティスの制度についても、選定・表彰のプロセスはおおむね完成したので、次は、選定されたベスト・プラクティスの共有やカウンティでの導入の促進を後押しする仕組みを支援していきたいと考えています。

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表彰式の様子(2016年9月)

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エンブ、キリニャガ両カウンティによる学習訪問の様子(2016年12月)