地方分権下におけるカウンティ保健局のコア・ファンクションの明確化

2017年2月20日

本プロジェクトは、ケニアにおける地方分権化を受けて、地方政府の能力強化支援を目的として開始されました。ケニアの地方分権化は、2010年に制定された新憲法において、中央政府の下に位置付けられていた8州が47の新しい行政組織(カウンティ)に再編され、2013年に分権化が本格的にスタートしました。しかし、具体的にどのような権限がカウンティ政府に委譲されるかは、各セクターの事情によって様々です。保健セクターの場合、分権化以前からカウンティ政府主導による保健行政は存在しましたが、地方分権によって、それらの行政責任を一義的に担う必要があること、そして、国から委譲された権限も追加されるため、カウンティ保健局が果たすべき機能と責任を改めて明確にする必要がありました。しかし、憲法や保健セクターの戦略文書などに、権限移譲の概要は示されていますが、具体的な権限は明記されていませんでした。そのため、本プロジェクトでは、カウンティ保健局の責任範囲の定義策定を支援することとしました。

2016年1月に、カウンティ保健局の代表者と保健省からの代表者、そして開発パートナーの代表をメンバーとした「カウンティ保健局コア・ファンクション作業部会」が発足し、カウンティ保健局の責任範囲である「コア・ファンクション」の策定作業に取り掛かりました。

まずは、2010年の改訂憲法を初めとした、関連文書のレビューを行いました。そのレビューを経て、改訂憲法が規定している「単独機能(Exclusive Function、中央政府もしくはカウンティ政府のいずれか一方だけが有する機能・権限)」だけではなく、「共同機能(Concurrent Function、中央政府とカウンティ政府の双方が相補的に担う機能・権限)」についても詳細を定義する必要があることが確認されました。例えば、カウンティ政府の単独機能の一つとして挙げられている「プライマリ・ヘルスケアの促進」では、この機能を果たすために、共同機能である「保健人材管理」、「医薬品管理」や「保健財政管理」などを通じた投入財の適切な管理が必要となります。さらには、単独機能であっても、他方の側面的な協力が不可欠であり、単独機能に関連する相手側の協力項目についても明確する必要があることが確認されました。具体的には、カウンティにおけるプライマリ・ヘルスケアの一義的責任はカウンティ保健局が担うものの、その基盤となる国家政策や共通ガイドラインなどは中央政府にその策定の責任がある、といったように中央と地方の持つ役割の明示化を行いました。

このように、単独機能とそれを助ける相手側の協力項目、そして共同機能における責任分担の詳細などについて、現場での実情を踏まえた徹底的な話し合いを行い、カウンティ保健局のコア・ファンクション案を作成しました。

このコア・ファンクション策定作業では、カウンティ保健局の高い期待とコミットメントが見受けられました。その背景には、カウンティ保健局の責任や、責任を果たすために必要とされる予算を、コア・ファンクションという公的文書に基づいて整理し、カウンティ議会での承認を得ることで明確化し、その結果として、より質の高い保健医療サービスをカウンティの人々に届けたい、という彼らの思いがあります。

現在、カウンティ保健局のコア・ファンクションの作成は最終段階に至っています。作業部会で作成した案について、より広範な関係者から意見を聴取し、それを反映して最終化する予定です。そして、このコア・ファンクションによって定義された機能・責任に沿って、保健局のマネジメント能力強化を促進していきます。

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カウンティ保健局コア・ファンクション作業部会メンバー