半乾燥地における林木育種の新たな展開

2018年2月28日

林木育種コンポーネントの新たな活動がスタート

ケニアの森林率7%を増やしていくためには、乾燥地・半乾燥地における植林をどう進めていくかが一つの鍵となります。そのためには先ず半乾燥地に適する有用な郷土樹種の優良種子を提供していく必要があります。そこで、JICAはケニア森林研究所(KEFRI)と協力して乾燥地・半乾燥地における郷土樹種の植林促進のための研究能力及び普及システムの強化を図る「気候変動への適応のための乾燥地耐性育種プロジェクト」を2012年から開始し、有用な郷土樹種であるMelia volkensii(メリア)とAcacia tortilis(アカシア)を対象に乾燥地耐性育種を進めてきました(2012~2017年)。5年間の活動の中で、メリアとアカシアの優良候補木(プラス木)を選抜して、メリアについてはつぎ木によるクローン増殖によりKituiとKibweziの2か所に採種園を造成し、優良種子の供給を開始したところです。またアカシアについては、プラス木の種子から実生採種林を造成してきました。メリアについてはプラス木の検定を行うために、8ヶ所に12の次代検定林を設定して、樹高と直径を継続調査しているところです。CADEPとしては、2017年7月からこの半乾燥地における林木育種の取組を一つのコンポーネントとして取り込み、これまでの成果をもとに新たな展開を図っていくことにしています。

新たな展開の一つとしては、メリアの第2世代(優良と特定された第1世代プラス木同士の子供の中から選ばれた次の世代)の創出に向けた人工交配技術の開発です。メリアは虫を媒介とした交配をする虫媒花のため、どのように人工交配をさせるかは新たな課題となります。

2017年12月に林木育種センターから2名の短期専門家が派遣され、メリアの人工交配を進めていくための準備調査を開始しました。今回は、虫媒花であるメリアが虫を媒介としなくても自家花粉で交配が起こる(自殖する)のかどうかなど基本的なデータを収集するための準備調査として、花が着いているメリアの枝に他個体からの花粉を防ぐための袋掛けなどを行いました。

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メリアの花

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メリアの花に袋掛けを行う

もう一つの課題は、メリアのさし木技術の開発です。

これまでの林木育種プロジェクトにおいて、メリアのつぎ木増殖技術はほぼ確立しましたが、クローン増殖をより効率的に行えるさし木技術については、まだ確立されていません。選抜されたプラス木のクローン増殖を効率的に行うためには、さし木技術の開発が必要です。メリアは日本のセンダンと同じ属であるため、日本のセンダンでのさし木技術を応用してメリアのさし木が可能かどうか試験を開始したところです。今回、2018年1月下旬から2月上旬にかけて、林木育種センターの短期専門家2名が派遣され、C/Pたちにメリアのさし木技術を指導するとともに、これまでの方法ではうまくいかなかった点を改良して、現地でさし木試験を行いました。今後、さし木の発根状況をC/Pたちに確認してもらいながら、5月に再度現地入りし、継続的に指導していく予定です。

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メリアのさし木試験の状況

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C/Pたちへの穂木採取の指導