ケニア国政選挙後騒動のその後とSMASSE

2008年6月10日

チーフアドバイザー 杉山隆彦
SMASSEプロジェクトフェーズ2は、終了時評価も終え、ケニア国内における理数科教育強化活動と、アフリカ域内における理数科教育強化活動の2分野ともプロジェクト終了に向け計画通り進捗していたが、昨年12月の総選挙後の混乱により、ケニア国内に関しては、これまでに構築してきた教員研修基盤がかなり損傷を受けた。

特に、中等教育無償化政策の実施に混乱が生じていること、部族紛争による教員や地方教育行政官の安全が確保出来ないこと、その結果として生じている大量の転勤願い、さらには、選挙戦略として行われたディストリクトの新設(全国72のディストリクトが149ディストリクトに増加した)など、現状では教員研修の持続的発展の基盤が損なわれたという評価をしている。しかも、国内の治安の悪化から、地方への実態調査活動を行うことも困難であり、本年1月から3月末までの3ヶ月間は、CEMASTEAの職員も動揺しており、開店休業状態が続いた。

そのため、当初計画していた、英語圏を対象とする第3国研修(第8グループ)は中止した。しかし、タンザニア、ナイジェリア、ウガンダ、マラウィ、スーダン、セネガル、ブルキナ・ファソ、ニジェール、スワジランド、レソト、アンゴラへ、スタッフ(日本人、ケニア人)を派遣するWECSA活動は問題なく実施することが出来た。また、広島でのINSET運営管理研修(12名)、フィリピンの理数科教育研修(40名)及びマレーシアのRECSAMでのWECSAメンバー国に対する研修(7ヶ国から20名)、札幌でのINSET運営管理研修(2名)には、予定通り参加者を派遣することができた。

その後、コフィ・アナン前国連事務総長等の斡旋・仲介により、与野党連立政権が発足した。それに伴い、省庁数がほぼ倍増となり、旧教育省も教育省と高等教育・科学・技術省の2省に分割された。その結果、懸念された教育省人事は、大臣及び事務次官が残留し、高等教育局は移転されたが、基礎教育部門(ケニアでは就学前、初等及び中等の計14年間を基礎教育と定義している)が、教育省の所管となり、本プロジェクト及びCEMASTEAは教育省の所管となった。

事態が沈静化した3月末から、まず初等教育教員養成カレッジのスタッフを対象とする、第2サイクルの研修を3回(約300名参加)実施した。4月下旬には、地方の現状把握、今後の研修体制再構築等を目的として、地方教育事務所長(DEO)を集めたワークショップを開催した。149ディストリクトのうち127名のDEOがこのワークショップに参加した。本ワークショップの成果品である、INSET運営管理マニュアルは現在校正中であるが、本ワークショップには教育省事務次官が開会するなど成功裡に終了した。

CEMASTEAのレレイ所長代行は、TSC(ケニアの教員雇用組織)から正式の所長として任命された。したがって、今後は、TSCのルールに基づき副所長、学科長等の任命が行われるようになり、取り敢えずは組織としての体を成すことになる。一方、CEMASTEAの経常予算の確保やTSC以外の職員の確保は財務及び人事院の回答待ちであり、現在も具体的な協議を継続している。

以上のような状況に鑑み、今年6月末に終了予定であったフェーズ2の進捗が逆戻りし、かつ、後継案件のデザイン具体化のプロセスが遅れたため、フェーズ2から後継案件形成への円滑な移行が困難となったため、フェーズ2を6ヶ月間延長することとし、選挙後の混乱で生じた負の部分の修複・回復を図ることとした。(4月、日本・ケニア両政府が合意)

なお、2007/8年度のケニア側の予算は、第3四半期分まで3000万シリングが執行されたが、第4四半期の1000万シリングは未執行である。今般の連立政権樹立によって誕生した「大きな政府」を維持するための追加的な管理コストと、国内避難民の帰還等に必要な緊急事業コストとを、ケニア政府・財務省が優先的に確保している余波であろう。

表面的には平静を取り戻したケニアの社会情勢であるが、連立政権を維持するための利害関係調整のために、時間的にも金銭的にも国民に大きな負担を強いる構造となっており、いつ連立政権の枠組みが崩壊してもおかしくない不安定な状況と見ている。今後、フェーズ2後継案件のデザインを協議していくにあたっては、ケニア国内事業の部分を現実的かつ柔軟に設計し、WECSA事業への支障を来たさぬよう留意する必要があるだろう。