家畜衛生管理のお話し(3)

2018年6月22日

生乳中の細菌数や乳房炎にかかっている牛の割合は、気温や季節の変化や、牛乳を搾る人が変わることによっても変動するため、数回の検査結果に一喜一憂することなく継続的にモニタリングしベースラインとすることが重要と考えます。また、このような検査は現在モデル農場だけで実施していますが、将来的にはカウンターパートらが率先して各地の農家の牛乳について検査するようになれば良いと考えています。

潜在性乳房炎、細菌数、そして細菌の種類を特定する検査は、すべてモデル農場で働く20代の獣医師であるカウンターパートと実施していますが、カウンターパートはこれらの検査を学生時代に行ったことがないため、一連の検査に大いに興味を示して一生懸命取り組んでいます。これらの活動はベースライン調査の一環ではありますが、一緒に実施する過程でカウンターパートへの技術移転にもなっており、今後は彼らが主体になって継続することを期待しています。しかし、カウンターパートのモデル農場における雇用契約は出勤日が限られており給与も安いため、彼らがこのまま長期的に勤務できるのか不透明で、せっかくの技術が農場に定着するのかという不安を感じることがあります。

キルギスには、日本や他の国にいる農家に技術や経営などを指導する普及員がいません。そこで私たちのプロジェクトでは、酪農家へ出入りしている民間獣医師などにその役割の一翼を担ってもらいたいと考えています。しかし、これまでのところ民間獣医師などの勤務状況、技術レベル、課題となっている病気などの実態は必ずしも十分に把握されていませんでした。そこでベースライン調査としてチュイ州ソクルク郡内で働く17人の獣医師らにアンケート調査を実施しました。アンケートの内容は農業大学獣医学部長や現場の獣医師と相談して作成しました。今後集計を進めるとともに、実際に彼らの活動現場も見せてもらいながら、プロジェクトとして必要な適正技術を特定したいと考えています。しかし、17人中14人が50歳以上という年齢構成の人たちに、どのようなトレーニングを提供できるのか非常に悩ましいところではあります。(完)

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毎週金曜午後にカウンターパートミーティングを実施

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細菌検査をする専門家とカウンターパート

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民間獣医師の会議で乳房炎の検査器具を紹介するカウンターパート

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乳房炎検査のデモンストレーションを見学する大学生