主要協力機関の幹部向けラボ作業体験セミナー

2019年2月18日

私たちのプロジェクトは、キルギス共和国の農業食品産業土地改良省(以下農業省)、国家獣医衛生検査院(以下検査院)とキルギス国立農業大学(以下農業大学)が主要協力機関(以下Counterpart=C/P機関)になっています。私たちは、これらのC/P機関と協力しながら「EEUの基準に準じた生乳の質と量を向上させる」という共通の目標を目指します。そのために、これまで、酪農家レベルのさまざまな活動を各フィールドやサイトで実施して、プロジェクト関係者が一堂に会する合同調整会議(JCC)でその成果を報告してきました。その理解を一段と深めて、生乳の細菌レベルの現実を各C/P機関の幹部の方々がリアルに認識できる機会を、2019年1月30日に家畜衛生分野担当の専門家が設けました。

この日この体験セミナーに招待したのは、農業省(獣医薬・衛生・植物検疫基準開発部)部長代理1名、検査院食品検査部主任検査員1名、農業大学獣医学部長1名・講師1名の4人でした。彼らに対して、まず専門家が、セミナーの概要と、EEU基準の細菌に関する部分を具体的数値を上げて説明し、実際に約1年間実施してきた検査結果のデータをサンプルとして示しながら、搾乳から保管・輸送に至る各場面での細菌コントロールついて説明しました。簡単な質疑応答の後、検体となる生乳をモデル農場で採取した後ラボに戻り、これまでの検査を担当してきたモデル農場のC/Pが、細菌検査の手順とそれに用いる器具・機材を紹介しました。実際のラボ検査作業では、C/Pとプロジェクトアシスタントのサポートを受けながら、彼ら自身でオペレーションを体験しました。また、事前に用意しておいた検体シート上の生菌数の数え方や、その分析なども体験しました。

今回のセミナーでサンプルとして示された検査結果は、彼らに多少のショックを与え、現状の把握と対策の必要性が改めて認識されることとなりました。また、当日用いられた検査器具はどれも簡易で安価なもので比較的簡単に入手できるものばかりですが、これでも十分に有益な検査ができることも認識されました。そして一通りの体験をした受講者から、実際に使える検査技術として、これを検査技術者や学生等にも更に広く紹介したいという提案が出されました。

行政や教育機関の幹部の方々は、政策や方針の立案や運営などには深くかかわっていますが、日常的に多忙なこともあり、現場レベルの活動や作業に接する場が少なくなりがちです。しかし、そのような立場の方々にこそ現状をリアルに体験して頂き、それを踏まえて何をすればよいのか、現実的に何ができるのかを考えて頂く場として、この体験セミナーを実施しました。それぞれの方々が、プロジェクト目標達成のために非常に大切なポジションにいらっしゃるので、今後その具体的アクションを期待したいところです。

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保冷タンクから生乳検体を採種するにあたっては、清潔なツナギ、手袋、靴カバーを着用し、異物や雑菌の混入を防ぐ

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当日使用した検査キット(総生菌数のカウントは、ペトリフィルムを用いる)

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細菌検査の説明とデモをする専門家

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実際に入手できる検査器具(約5千円のふ卵器)

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(左から)農業大学の2名、C/P、農業省の1名、検査院の1名

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農業省からの幹部をサポートするアズマットC/P(右)