2018年6月のプロジェクトニュース

2018年7月13日

1. 郡病院での「病院の質基準」評価のトライアルを実施しました

ラオス保健省は病院の質の改善に取り組むにあたり、「5 Goods 1 Satisfaction(5G1S):病院の5つの強みと患者満足」を掲げて病院の質を評価する指標の開発に取り組んでいます。現在、その質指標(案)を用いた評価トライアルが全国17つの県病院と各県から1郡病院を選抜して実施されています。6月にはプロジェクトが対象とするサラワン県(6月12~14日)、セコン県(6月20~22日)、アタプー県(6月24~26日)でも、評価トライアルが行われました。郡病院では当プロジェクトが保健省とともに県病院向けに開発してきた正常分娩のケア、緊急産科症例のケア、外来受付、トイレの質基準(案)を用いた評価トライアルも実施しました。評価後は、関係者間でそれぞれの質基準(案)の内容と評価方法について討議と検討を行いました。プロジェクトでは今回の結果を踏まえて、郡病院向けの質基準(案)を作成する予定です。

評価トライアルの様子

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外来受付(セコン県タテン郡病院)

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薬局(セコン県タテン郡病院)

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評価結果検討(セコン県タテン郡病院)

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評価結果検討(サラワン県コンセドン郡病院)

2. 母体死亡症例検討会に参加しました

母体死亡症例検討会は、それを起点に、病院が質基準(案)では想定していない改善課題を見出し、原因分析から解決策に合意し、解決策の導入計画の立案、解決策の効果の確認とその効果を維持する取り組みまでを行い、次の改善課題を見出し、取り組むという「継続的質改善活動(CQI)」のプラクティスを病院に根付かせる契機とすべく、プロジェクトでは対象県保健局とともに積極的に取り組んでいます。
コミュニティから病院まで様々な要因の結果、医療施設で死亡症例が発生しており、2018年の1月1日から6月31日の間に医療施設で発生した母体死亡症例は、サラワン県で4件(全6件中)、アタプー県で1件(全3件中)、チャンパサック県では4件(全4件中)、セコン県では0件でした。6月27日にアタプー県、6月28日にサラワン県で母体死亡症例検討会が行われ、原因分析と改善課題とその実施計画が議論されました。プロジェクトでは、残るチャンパサック県での検討会にも参加するとともに、アタプー県、サラワン県が策定したアクションプランの実施支援や実施状況の確認を行う予定です。

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症例サマリーの提示

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県保健局のチーム

3. 改善課題への取り組み

外来受付・トイレ

3月~5月に実施した自己評価及び他者評価の結果を元に引き続き改善活動を実施しています。セコン県病院では、患者待ち時間調査を続けるために、調査票の更新準備を始めています。また、外来に新たなトイレが設置されました。アタプー県病院では、接遇向上に向けての研修を計画しているところです。

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アタプー県病院プボン郡病院での外来質基準評価トライアルの様子

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セコン県病院の外来に新たに設置されたトイレ

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セコン県病院の外来に新たに設置されたトイレ

外来病棟・入院病棟

4県合同のワークショップにて作成した外来病棟の質基準(案)と入院患者管理の質基準(案)の実用化に向けて、各県を訪れて協議しました。各病棟のスタッフや県保健局の担当者と実際の病棟の流れをイメージしながら、具体的な質基準項目や評価方法について協議できました。今後は南部4県の合意を得て、両質基準(案)を最終化した後、試験運用を開始する計画です。

産科ケア

各県で3月から5月にかけて実施された病院の質基準(案)による自己評価の結果を元に、各県がそれぞれ改善課題に取り組んでいます。セコン県、サラワン県、アタプー県の県病院では、チャンパサック県病院が改善活動として始めた「分娩時出血測定バック」を5月に導入し、現在は分娩室に勤務する職員全員が使用できるよう、指導や練習を続けています。またチャンパサック県病院は、帝王切開術患者へのskin-to-skinケアの導入を開始し、既に10症例でトライアルを行いました。今後は同ケアを標準化すべく、手順書と患者アンケート等の作成を予定しています。

4. プロジェクト計画の見直しに取り組んでいます

5年間の予定で2016年の2月に始まった当プロジェクトは、8月に迎える中間地点に向けてプロジェクト活動の精査と、事業計画(PDM)の見直しを進めています。8月の中旬には節目の合同調整委員会(JCC)会合を持ち、これまでの成果と課題を整理するとともに、プロジェクト後半の活動計画と到達目標について関係者の合意を形成することを目指しています。中でもラオス国保健セクターの質の向上に関わる政府、開発援助機関の取組みを踏まえ、南部4県でプロジェクトが取り組んでいる活動とその知見を「QHC(注)モデル」としてまとめ、将来の政策へ反映させていくための集中的な討議を行う予定です。
((注)Quality of Health Care Service)